遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

歴史決議採択、習近平はついに「現代の毛沢東」となるのか

2021-11-12 01:33:55 | 中国 全般
 中国共産党の秋の重要会議、中央委員会総会(第6回中央委員会全体会議=6中全会)が11月8日から11日まで北京の西京賓館で開催されました。
 11日現在では開催結果の記事は見つかりませんでしたが、事前の情報は多く流されていて、概ねその内容は一致していますので、共産党史上3度目となる「歴史決議」が採択され、習近平が毛沢東、鄧小平と比肩する指導者として権威付けされる様で、福島香織さんが論評されています。
 
歴史決議採択、習近平はついに「現代の毛沢東」となるのか 専制君主時代に突入する中国、日本に問われる覚悟とは | JBpress (ジェイビープレス) 2021.11.11 (木) 福島 香織:ジャーナリスト

 中国共産党の秋の重要会議、中央委員会総会(第6回中央委員会全体会議=6中全会)が11月8日から11日まで北京の西京賓館で開催された。この原稿を書いている時点ではコミュニケは出ておらず、その中身はまだ不明だが、共産党史上3度目となる「歴史決議」が採択され、それをもって、習近平が毛沢東、鄧小平と比肩する指導者として権威付けされることはほぼ間違いない。歴史決議は、来年(2022年)秋の党大会で政権トップの座を維持するための最後の地ならしの意味を持つのだろう。

 では
習近平が総書記、国家主席の座を維持したとしてその先にはどんな展開がありうるのだろうか

 歴史決議は「中国共産党の100年奮闘の重大な成果と歴史的経験に関する中共中央の決議」と題され、その草案はすでに中央委員の討議を経ている。11月11日には採択され公開されるだろう。

 以前、本コラム欄(「来たる6中全会で『歴史決議』、懸念される習近平の歴史観」)でも解説したように、
歴史決議は3度目である。1度目が1945年の毛沢東の「若干の歴史問題に関する決議」、2度目が1981年の鄧小平の「建党以来の若干の歴史問題に関する決議」だ。いずれの歴史決議も、権力闘争(路線闘争)に決着をつける決議だった。すなわち1度目は共産主義中国本土派の毛沢東とソ連派の王明らの対立、2度目は毛沢東路線継続の華国鋒と改革開放の鄧小平の対立があり、それぞれ勝利者側(毛沢東、鄧小平)の勝利宣言のようなものだった。

 この
歴史決議によって毛沢東、鄧小平の独裁的権力が確立し、毛沢東は「中国人民共和国の建国」、鄧小平は「改革開放による中国の国際社会における地位確立」という偉業を果たした、というわけだ。

 このように歴史決議とは、路線闘争という名の権力闘争に決着をつけて、勝者側がその絶対的権力を確立する目的で行われてきた。よって3度目の歴史決議も習近平側の勝利宣言的意味合いがあろう、というのがチャイナウォッチャーの一般的な見立てである。

 
では、習近平はどのような権力闘争に決着をつけるというのだろうか。何人かの識者の見方をみてみよう。

「人民の同意を得られない」
 元中央党校教授で米国に亡命している
蔡霞がBBCで、共産党史家としてこんな分析を披露していた。「新決議は民国時代初期の臨時大統領の袁世凱が創刊させた『順天時報』のようなもの。だから、この決議は採択前から人心を失っており、その同意を得るどころではない」。

「順天時報」は民国初期、日本の東亜同文会や浪人中島昌雄が主管、創刊した中国語新聞である。専門の研究者の評価や意義は分かれるところだろうが、一般の中国人からすれば袁世凱が皇帝を僭称しようかと考えていたころ、帝政復活擁護の記事を日々掲載していた新聞、という認識だ。袁世凱がそれを読んで、年号を洪憲として洪憲皇帝を名乗る決心をした。そして袁世凱の帝位はわずか80日、中国史上最も短命な皇帝の一人となった。

 
つまり、今回の歴史決議は習近平が「皇帝」になるためのものだが、中身は捏造、ウソにまみれた独りよがりの歴史決議であり、人民はほとんど信じていない、という見方だ。そうして仮に独裁的権力の継続を来年秋に手に入れたとしても、袁世凱のように短命ではないか、ということだ。

「習近平は正しい共産党史観の確立を提言してきた」
 一方、
台湾大学政治大学東アジア研究所所長の王信堅は、もう少しこの決議を重視している。ドイチェ・ベレ(ドイツ国際放送)のインタビューで彼は、「(歴史決議は)非常に中国的だ。中国の歴史は、例えば元の歴史を明朝が修正し、明朝の歴史を清朝が修正するように、後の権力者が自分以前の歴史を修正することで、権力者は自分中心の歴史を作ろうとしている。だから歴史解釈というのは非常に重要だ」と指摘する。

習近平はこの点を非常によくわかっていて、『党史』と『イデオロギー』を重視し、この数年ずっと『正しい共産党史観』の確立を提言してきた。・・・党内の歴史的重大議論について、習近平の方向性は非常にはっきりしており、『改革開放後の歴史で、開放以前の歴史を否定することはできない』『改革開放以前の歴史で、改革開放後の歴史を否定することはできない』という2つの『互不否定』というスタンスだ

 
これは鄧小平の歴史決議の中で、毛沢東の過ちを3、功績を7とした部分、特に大躍進と文革に関して毛沢東の過ちとした部分を修正するということでもあろう

 今回の歴史決議では、
『立ち上がった(毛沢東)、豊かにした(鄧小平)、強くした(習近平)』という定義が打ち出されるであろう、と王信堅は言う。そしてこの歴史決議によって来年秋の党大会で習近平が長期的独裁政権を確立することについて、「きっとそうなると思う」と語っている。

「今回の歴史決議は西側世界との闘い」
 日本の
静岡大学の楊海英教授は米メディア「ラジオ・フリー・アジア」の取材に対し、習近平の3度目の歴史決議について、これまでの2つの歴史決議とは違う、と指摘する。

 
毛沢東、鄧小平の歴史決議はともに、党内の路線闘争、権力闘争に関する決議だった。だが今回の歴史決議は「党内ではなく国際的な路線闘争だ」という。強大な中国、中国モデル、中国の特色ある社会主義、それと西側の腐敗した資本主義、西側世界の路線との闘争の定義を決めるものだ、という。

 
楊教授のこの指摘は腑に落ちる点がある

 6中全会が開幕する直前の
11月6日に新華社が配信した習近平の9年の執政を評価した1万2000字におよぶ論評記事「習近平が率いる百年大党が奮迅する新たな旅路」では、「疑いなく歴史の潮流を御す核心人物」「父母のように庶民を愛する党の総書記」「国家を強くする戦略家であり実務家」「新たな地平を切り開く時代の変革者」「懐の広い天下の大国のリーダー」「前に進み続けるナビゲーター」などなど恥ずかしいほどの習近平礼賛フレーズが満載で、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想は21世紀のマルクス主義だ」とぶち上げている

 
特徴的なのは、海外メディアや外国人専門家の発言をこれまでになく多く引用している点だった。たとえば、次のような具合だ。

スイスの日刊紙ダーゲスアンツァイガーが「習近平が2012年に総書記になった時、彼が望んだのは中華民族の偉大なる復興の実現であり、それを歴史的使命とみなしてきた」と報じた。

シンガポールアジアニュース局が「習近平の指導の下、中国はまさに1つの強国となり、まさに1つの全盛期に入った」と報じた。

フランス国際放送(RFI)が「ここぞというとき、習近平は猛烈に努力をした」と報じた。

ハーバード大学ケネディ行政大学院卒業の政治学者ニール・トーマスが「習近平は党内の広汎な支持を勝ち取った」と語った。

オ―ストリアの法律学者であり漢学者のゲルト・カミンスキーが「第18回党大会後、習近平の指導のもと、執政理念上だけでなく、中国の発展に伴うすべての重大な問題について、中国はさらに鮮明な指導原則を形成した」と語った。

フランスの法学者、ピエール・ピカールが「人類運命共同体を推進することは、人類歴史上、最も重要な哲学思想のひとつだ」と語った──。

 ちなみに
RFIは新華社の記事に引用された部分について、香港の親中紙の文言を紹介しただけなのに、と新華社の強引な引用のやり方を揶揄していた。

 
私は、外国メディアや専門家の引用による、この異様な習近平礼賛論評について、実は習近平の国内評価が非常に低くて、それを払拭するために「外国メディアや外国人の専門家からは評判が高いのだよ」と読者を説得したいのだろう、という程度にとらえていた

 だが、
改めて読んでみると、この論評は海外に向けて本気で「開明的専制君主・習近平」のポジティブなイメージを発信しようという目的で書かれたものかもしれない、という気もしてきた

 
今、世界の一部では、コロナ禍を経験して民主主義の限界を感じる空気が流れ始めている習近平はそんな国際社会に、西側資本主義に対抗する新時代の社会主義モデルを提示し、納得させようとしている。今回の歴史決議は、習近平による海外に対する勝利メッセージなのかもしれない。

 だが、100年の中国共産党の波瀾の歴史を、わずか9年の執政経験しかない習近平が総括し、しかも自分を毛沢東、鄧小平に比肩する指導者として位置付け、国際社会に新たな統治モデルを作ってみせよう、というのは、
おこがましいにもほどがあるそもそも歴史を評価するのは後世の歴史家の仕事であり、執政9年やそこらの習近平が自分の評価を今決めて、誰が納得できるものか

 
さらに言えば、習近平の政策は、経済政策も脱貧困政策も、「中国製造2025」も「一帯一路」も、新型コロナワクチン外交も気候温暖化政策も、事実上失敗続きではないか。西側の民主主義に限界論があったとして、習近平の打ち出す新時代の中国の特色ある社会主義モデルに取って代わられるとは誰も思わないだろう。

戦争で絶対的権力を固める中国共産党の独裁者
 
ただ、習近平の歴史決議が馬鹿馬鹿しいと思っても、日本人としてはやはり無関心でいるわけにはいかない。毛沢東も鄧小平も、歴史決議だけで絶対的独裁権力を手にしたわけではない。毛沢東はその後、朝鮮戦争、中印国境紛争と周辺国家との戦争を経てその絶対的権力と神話を確立させていった。鄧小平も歴史決議に前後してベトナムとの戦争を2度行い、その戦争によって党内と軍の掌握を進めた。共産党の独裁者がその長期の絶対的権力を固めるプロセスで必須なのは、歴史決議とともに戦争なのだ

 
習近平の路線闘争が実は党内にとどまるものではなく、米国など西側社会に向けられているというなら、なおさら戦争の可能性を完全に否定することはできない。しかもその矛先が向かいやすいのは台湾や日本のような周辺の小国だろう。

 そういう意味で、過去2度の歴史決議以上に、
今回の歴史決議は私たちの未来にも関わるものとして注目する必要がある。この決議によっていよいよ習近平の専制君主時代が始まれば、私たちは相応の覚悟と準備が問われることになる。来年は日中国交正常化50周年だと浮かれている場合ではないかもしれない。

 歴史決議は、来年(2022年)秋の党大会で、習近平の政権トップの座を維持するための最後の地ならしの意味を持つのだろうと福島さん。
 歴史決議は3度目である。1度目が1945年の毛沢東の「若干の歴史問題に関する決議」、2度目が1981年の鄧小平の「建党以来の若干の歴史問題に関する決議」だ。いずれの歴史決議も、権力闘争(路線闘争)に決着をつける決議だったと。
 1度目は共産主義中国本土派の毛沢東とソ連派の王明らの対立、2度目は毛沢東路線継続の華国鋒と改革開放の鄧小平の対立があり、それぞれ勝利者側(毛沢東、鄧小平)の勝利宣言のようなものだったと福島さん。

 歴史決議によって、毛沢東は「中国人民共和国の建国」、鄧小平は「改革開放による中国の国際社会における地位確立」と、それぞれが偉業を果たし、独裁的権力を確立させた。
 
 では、習近平はどのような権力闘争に決着をつけるというのだろうか。
 元中央党校教授で米国に亡命している蔡霞がBBCで、共産党史家としてこんな分析を披露していたと福島さん。
 今回の歴史決議は習近平が「皇帝」になるためのものだが、中身は捏造、ウソにまみれた独りよがりの歴史決議であり、人民はほとんど信じていない、という見方だと。
 仮に独裁的権力の継続を来年秋に手に入れたとしても、袁世凱のように短命ではないかと。

 また、台湾大学政治大学東アジア研究所所長の王信堅は、もう少しこの決議を重視しているとも。
 彼は、「(歴史決議は)非常に中国的だ。中国の歴史は、例えば元の歴史を明朝が修正し、明朝の歴史を清朝が修正するように、後の権力者が自分以前の歴史を修正することで、権力者は自分中心の歴史を作ろうとしている。だから歴史解釈というのは非常に重要だ」と指摘していると。
 今回の歴史決議では、『立ち上がった(毛沢東)、豊かにした(鄧小平)、強くした(習近平)』という定義が打ち出されるであろう、と王信堅。

 静岡大学の楊海英教授は、習近平の3度目の歴史決議について、これまでの2つの歴史決議とは違う、と指摘しておられると。
 毛沢東、鄧小平の歴史決議はともに、党内の路線闘争、権力闘争に関する決議だった。だが今回の歴史決議は「党内ではなく国際的な路線闘争だ」と楊海英教授。

 楊教授のこの指摘は腑に落ちる点があると福島さん。
 6中全会が開幕する直前の11月6日に新華社が配信した習近平の9年の執政を評価した1万2000字におよぶ論評記事「習近平が率いる百年大党が奮迅する新たな旅路」では、恥ずかしいほどの習近平礼賛フレーズが満載。
 福島さんは、この異様な習近平礼賛論評について、実は習近平の国内評価が非常に低くて、それを払拭するために「外国メディアや外国人の専門家からは評判が高いのだよ」と読者を説得したいのだろう、という程度にとらえていたと。
 だが、改めて読んでみると、この論評は海外に向けて本気で「開明的専制君主・習近平」のポジティブなイメージを発信しようという目的で書かれたものかもしれない、という気もしてきたと。

 今、世界の一部では、コロナ禍を経験して民主主義の限界を感じる空気が流れ始めている。習近平はそんな国際社会に、西側資本主義に対抗する新時代の社会主義モデルを提示し、納得させようとしている。今回の歴史決議は、習近平による海外に対する勝利メッセージなのかもしれないと福島さん。

 おこがましいにもほどがある。そもそも歴史を評価するのは後世の歴史家の仕事であり、執政9年やそこらの習近平が自分の評価を今決めて、誰が納得できるものかと!
 さらに言えば、習近平の政策は、経済政策も脱貧困政策も、「中国製造2025」も「一帯一路」も、新型コロナワクチン外交も気候温暖化政策も、事実上失敗続きではないかとも。

 ただ、習近平の歴史決議が馬鹿馬鹿しいと思っても、無関心でいるわけにはいかない。
 毛沢東も鄧小平も、歴史決議だけで絶対的独裁権力を手にしたわけではない。毛沢東はその後、朝鮮戦争、中印国境紛争と周辺国家との戦争を経てその絶対的権力と神話を確立させていった。鄧小平も歴史決議に前後してベトナムとの戦争を2度行い、その戦争によって党内と軍の掌握を進めた。共産党の独裁者がその長期の絶対的権力を固めるプロセスで必須なのは、歴史決議とともに戦争なのだと。

 習近平の路線闘争が実は党内にとどまるものではなく、米国など西側社会に向けられているというなら、なおさら戦争の可能性を完全に否定することはできない。しかもその矛先が向かいやすいのは台湾や日本のような周辺の小国だろうと福島さん。
 今回の歴史決議は私たちの未来にも関わるものとして注目する必要がある。
 習近平の専制君主時代が始まれば、私たちは相応の覚悟と準備が問われることになる。来年は日中国交正常化50周年だと浮かれている場合ではないかもしれないと。

 元々親中と言われる宏池会の岸田総理。外務大臣時代は、内弁慶で中韓にいいように翻弄されていました。茂木氏の後任に登用した林氏も親中。ご本人は世評を認識して折れる様子で。知中と親中とは異なると発言されていますね。
 今回の歴史決議の情報は、これから流れてきますが、福島さんがご指摘いただいている点を踏まえて、情報を注視したいと考えます。



 # 冒頭の画像は、6中全会




  この花の名前は、マルフジバカマ


↓よろしかったら、お願いします。



写真素材のピクスタ


Fotolia




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 選挙議席予測は結果と大きく... | トップ | 6中総会 習近平国家主席(... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

中国 全般」カテゴリの最新記事