Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

プレステージ

2008-07-10 | 外国映画(は行)
★★★★☆ 2006年/アメリカ 監督/クリストファー・ノーラン
「作品そのものがイリュージョン」


ラストのどんでん返しにあっさりやられた。時間軸が前後することに加え、数々の伏線が張られているが、見ているのがしんどい作品かと言えば全くそんなことはない。今から随分昔の時代とは言え、目の前で繰り広げられるイリュージョンに目を奪われるし、アンジャーとボーデン、希代の奇術師2人のとことん裏をかく駆け引きから目が離せない。実に見応えがあり、映画館で見れば良かったなあ、と後悔。

アンジャーとボーデン、ふたりのキャラクターをもっと明確に描いてくれたら、導入部からもっとノリきって見れたのに、とその点がやや残念。アンジャーが「陽」なら、ボーデンは「陰」。この陰と陽をくっきりと浮かびあがらせて欲しかった。というのも、脇を固める役者がとてもいいから。特にマイケル・ケインとデヴィッド・ボウイ。「確認」と「展開」、そして「偉業」へ。マジック理論のシーンを始め、マイケル・ケインのおかげで作品に知的なムードが漂う。それに、その存在感からどこかで寝返るんじゃないか、何かヒミツを握っているのではないか、と常に探りながら見てしまった。そして、テスラ博士を演じるボウイがすごくいい!凡人を寄せ付けない風格があって、何だか宇宙人みたい。

人を騙す快感と言うのは、一度味わうとやめられないんだろう。大勢の観衆を驚かせて、スポットライトの中で拍手喝采を浴びたら、全てを犠牲にしてもいい。それほどの悦びがあるのだろう。しかし、一番騙したかったのは、互いのライバル。日記を手に入れたり、恋人を送り込んだり、こりゃまるでストーカーだな。原作はページ数が膨大だと言うことですが、よくぞまとめたという感じ。クリストファー・ノーランお得意の時間軸をいじる見せ方も、もしかしたらラストのオチを気づかせない手段の一つかも。これ、時間通りに進めば、オチに気づく人もっと増えるんじゃない?(たぶん、私は、それでもコロッと騙されると思うけど)

物語で示されるマジックも、そしてこの作品のどんでん返しも、共に「なんだ、そんなことだったのか!」というシンプルなタネであるところが、実に小気味いい。あまりにも単純な仕掛けだからこそ、騙された方も快感。こんなに気持ちよく騙されたのは本当に久しぶり。終盤にかけてのSF的な展開も、全く違和感なし。幻想と現実がないまぜとなって、観る者を圧倒し続ける展開の中で、この驚愕的な科学理論がちゃんと物語に収まっている。おまけにアンジャー殺しの犯人は誰かというミステリーまで加わり、ボリューム満点のフルコースを頂いたような満足感。