Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

風花

2012-01-07 | 日本映画(か行)
★★★★ 2000年/日本 監督/相米慎二

「寂しさに寄り添う者たち」

子どもを故郷に残し東京で働く風俗嬢の女と落ちぶれたキャリア官僚のロードムービー。
そのプロットから何となく作品全体のイメージが想像されてしまって。
まあ、ドライブして寂しい景色でも見ているうちに、
孤独なふたりの心が結びつきあうんだろうなと、ふんふん、そういう話だよな、
と何だかわかったような気がして、ずいぶん見るのを先延ばしにしていたんだよね。
これはある程度映画を見ている人間の悪い癖かも知れない。

でも、やっぱり映画は見てみないとわからないわけで、とても良かったです。
小泉今日子はドラマに出るとさっぱりだけど、映画だとすごくいい。
これは、なんでだろう。
彼女の佇まいって、ある程度時間をかけてカメラが追いかけると醸し出されてくるものがあるんだよね。
ドラマのようにカット割りが多いと、彼女の魅力は出てこない。そんな感じがする。

「寂しい」その切なさが静かに見ている人の心に侵入してくる。
しかし、人は誰かと一緒にいると、そのひと時だけ寂しさから解放される。
それが例え見知らぬ人であったとしても。

小泉今日子と淺野忠信、ふたりのぶっきらぼうな関係。
それは中途半端な優しさなど、相手を少しも癒さないということを知っているから。
ふたりがたどり着くさびれたペンションの描写も秀逸。
季節労働者のようなしがないおっさんばかりが宿客で、
オーナーは毎年恒例のひとり時代劇を披露する。
このダサイ感がたまらない。
酔客に「プロなんだろ?」と接客を迫られるゆり子。
どこへ逃げても自分がみじめな人間だということを思い知ったのだろうか、
死を決意したゆり子が風花舞う冷たい雪の上で静かに踊るシーンがとても幻想的。