Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ザ・フォール/落下の王国

2012-01-30 | 外国映画(さ行)
★★★ 2007年/アメリカ 監督/ターセム
(DVDにて鑑賞)


「美しすぎて腑に落ちない」


1915年、ハリウッド。撮影中の事故で重傷を負い病院のベッドに横たわるスタントマン、ロイ。身体が動かず自暴自棄となり、自殺願望にとらわれていた。一方、5歳の少女アレクサンドリアは腕を骨折して入院中。じっとしていられず敷地内を歩き回っていて、ロイの病室へと辿り着くが…。

石岡瑛子さんがお亡くなりになりました。
私は彼女の媚びないデザインが好きでした。
彼女にとって日本のデザイン業界は狭すぎて、居心地悪くて、飛び出して行った。その生き方もかっこいい。
とても挑発的で、研ぎ澄まされたデザイン。
でもそれは、己の主張を通すためのデザインでは決してなかった。
最高の表現にするために、徹底的に対象物と向き合い、製作者たちと議論を重ね、
とことん削ぎ落とした産物があのとてつもなくスタイリッシュなデザインだったと思う。

ターセム監督の「ザ・セル」を初めて見た時は、圧倒的な映像美に驚きました。
石岡さんの衣裳が連続殺人犯の心の中をありのままに具現化するだけではなく、
人の精神の不可解さ、異様さをまざまざと感じさせてくれた。
石岡さんのデザインした衣裳たちが「ザ・セル」という作品自体をさらに高めていた。

ところが、この作品は「ザ・セル」を見た時の感動とはほど遠かった。
私は美しさ最優先、という方向で作られた作品も肯定しますが、
この作品は「この映像でないといけない」という理由を見つけられなかったんです。

果たして、この映像は誰の頭の中で展開されたものなんだろう。
語り手のスタントマンの男の頭の中か、果たして聞き手の少女アレクサンドリアの中か。

自殺願望の男という設定ではあるけど、
彼の創り出す妄想そのものは実に整合的で、狂気が感じられない。
聞き手の少女が創り出した脳内映像だとすると、今度は完成度が高すぎる。
何だか現実のストーリーにもおとぎ話にものめりこめない。
石岡さんのデザインした衣裳はどれも奇抜で本当に美しいのだけど、
あの架空の物語の人物たちがあのような出で立ちであらねばならない理由がわからなくて
とってもとっても残念だった。
でも、石岡瑛子の創り出した衣裳は一見の価値はあると思います。
「ザ・セル」や「ドラキュラ」を見直したくなりました。