Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

悪人

2012-01-12 | 日本映画(あ行)
★★★★ 2010年/日本 監督/李相日

「少々タイトル負け」

決して悪くはない作品ですけれども、この年の邦画のNo.1かと言われると
そうでもないというのが正直なところでしょうか。
「悪人」というタイトルが示しているもの。
それは多くの方がご指摘されているように、
人間誰しも抱えている闇の部分がふとしたきっかけで己を悪人にしてしまうということなのでしょう。
善人と悪人の境目は曖昧で、私から見れば善人の人でも、別の人から見ればそいつは悪人になってしまう。
そうした、人生の矛盾は十分に伝わるものです。

妻夫木聡、深津絵里、柄本明、樹木希林、満島ひかり、岡田将生。
この主要6人のキャストがそれぞれの役柄を見事に演じていて、
映画ファンの目から見れば「手堅い人選」。
人気小説の映画化ということを鑑みて、ある程度の集客を狙うという意味でも完璧なキャスティングでしょうね。

ただ、この6人の中で誰が役柄に一番ハマっていないかという厳しい見方をすれば、
哀しいかな、それは妻夫木くんだったりもします。
悪役でも果敢に挑戦して殻を破りたい、という熱い気持ちが、
何度挑戦してもオスカーが取れないディカプリオにも重なったりして。

やっぱり、諸々の事情を考えると、悲劇ではあるのですが
エンターテイメント作品としての側面を大事にせざるを得なかったのかな。
「悪人」という、まるでドストエフスキーの小説みたいなタイトルなもんで、
もっと突き抜けた結末が欲しかったです。