Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ブタがいた教室

2012-01-15 | 日本映画(は行)
★★★★ 2008年/日本 監督/前田哲
(DVDにて鑑賞)


「論議を呼ぶことが目的の映画」


公開当時はいろいろ議論を呼んでいました。
子どもに生き物の生死を選択をさせること自体、酷であり、教育者としてあるまじき行為。
最後まで面倒を見ることなどできないことを承知のはずで無茶苦茶な提案である。
など、担当先生への厳しい意見をたくさん読んだ。

ん、まあね。

こういう議論が起きること自体がこの映画の目的なんじゃないでしょうか。
だから、映画化した価値は十分にあったと思います。

最終的な結論を出すクラス会議のシーンは、台本は白紙だったってことで、
子どもたちは迫真の演技です。
こちらに関しても、製作者が誘導すべきで子どもたちに丸投げってどうなの?という意見があり。
まあ、人の見方はいろいろだなあ、とそんなことを考えるのにもなかなか良い映画(=題材)だと思う。

つまり、これは徹底的に問題定義の映画なんじゃないか。
そういう意味で私はとても評価している。
教頭を演じる大杉漣が常に観客目線で突っ込んでますやん。
「名前なんてつけちゃっていいの?」とかさ。
事あるごとに星先生にチクリと言ってます。
これって、そうそう教頭先生の言うとおり、と感じる常識派の人たちをフォローしてくれてるんだと思う。

映画は事実を割と忠実になぞっている。
だから、星先生の行為の是非を論じることは、
本来的にはこの映画そのものの評価することとは次元の違う話。

だけども、どうしてもそれを飛び込えてしまう。
製作者はしてやったり、だろう。

私は映画以前にテレビのドキュメンタリーを見たけど、何と勇気のある先生だろうと思った。
「命」の授業に正しい教え方なんて存在しない。
結局、子どもたちは傷ついたのだろうか。ブタを飼ったことがトラウマになったのだろうか。
私はそうは思えない。
子どもは傷つきやすいと同時に逞しい生き物だから。

自分の手を汚し、自分の頭でとことん考える。
そんな経験をしている子どもは、ほんのごく僅かだろう。
子どもや父兄の反応が怖くて、一歩も踏み出せない教師たちの中で
この人はとにもかくにも、前に動いた。とても勇気のある先生だと思う。