Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ヒミズ

2012-01-31 | 日本映画(は行)
★★★★★ 2011年/日本 監督/園子温
<Tジョイ京都にて観賞>


「クズみたいな大人たちの中で」


一つ一つの描写はいつもの園子温節で、残酷で陰惨なんだけれども、
東日本大震災を受けて書きかえられた人物設定や物語はより多くの人に受け入れられやすいものになっている。
園子温の映画は見た後どっと疲れる、と形容されることも多いけど、
本作では私は胸のつかえが取れたようなとてもスッキリとした快感を感じた。
例えは悪いかもしんないけど、長い便秘が終わったような。
はたまた、ゴミ屋敷をピカピカに掃除したような。
なんていうんだろ。自分の中に蓄積していた気持ち悪いものをごっそりと掻き出してもらったような感じ。

それは冒頭、教師の「世界に一つだけの花」の引用に対して「普通バンザイ!」と叫ぶ住田くんに始まり、
何か変だよな、ってみんながモヤモヤしている世の中のあれやこれやに対して
グッサグッサと刃を突きつけてくれるからだろう。
だから、わかりやすいと言えば、ものすごくわかりやすい映画だ。
「J-POP歌っているやつなんかクソだ」という描写は、園監督にしかできないよ。

上っ面だけの優しさ。
欺瞞に満ちた人間関係。
てめえのことしか考えない大人たち。

そんな日本社会の中で親に恵まれない子どもたちは、本当になす術もないのだろうか。
住田の父親も母親も人間失格で、殺されても文句の言えないようなクズだけど、
住田が心の底から殺したいのはこんな大人を黙認している日本そのもののような気がする。


主演を務めた染谷将太も二階堂ふみもとてもいい。
二階堂ふみって、宮崎あおいに似てるなあ。
回りを固めるキャストがこれまた園子温組一同に勢揃いという感じで、とっても豪華。
窪塚洋介は園作品は初参加かも知れないけど、思った通りバッチリハマってますね。

住田くんと茶沢さんが土手を走るラストシーンは、泣けて泣けてしょうがないのだった。