うざね博士のブログ

緑の仕事を営むかたわら、赤裸々、かつ言いたい放題のうざね博士の日記。ユニークなH・Pも開設。

最近読んだ本ですが・・・・・

2011年05月13日 03時54分53秒 | 活字中毒の日々、そして読書三昧
 わたしの読書は、今回数えてみたら東日本大震災の直前から一ヶ月で8冊になる。なんだか、学生でもあるまいのに、いかにもこのペースは多い。最近のわたしの心境に馴染んでいたのか、日常から逃避したようで少し複雑な気分だ。その姿勢にはあまりいい動機がしていない、なんだか、大震災をはじめ有象無象の私事のいやなことから逃げている気配がする。趣味に耽っているかのようにである。
 しかし、今回読んだ本は、結構、内容にはずれがなく大当たりの読書をしてきたようである。
 読みたい本は新聞とかの読書欄に書かれたものはあまり買って読まない。選定した作家などの批評を信用しない訳ではないが、新着図書に、まず目がいかない。まして、一時的なものと捉えているので、ベストセラー本は敬遠している。
 すでに5,6年前から、実は、自分独自の欲しい本の入手日誌をノートに付けていて、それに基づいて購入したりしている。ピックアップは重要だ。図書館で借りるのは、いかにも暇つぶしのきらいがあり、生理的にもいやなので、わたしは必ず書店でもとめる。その記入の仕方は一般のものに、自腹で買った専門書である植物や土木工事関連図書、大好きなヒッチコック監督、寅さんシリーズの映画DVDも加える。
 それから、同じ題材や作者のものを見るのに本の後部にある情報を重点的に集めることになる。それだから、知らないうちにその分野の系統だった読書をすることになる。
 ちょっと、ここであまり好きではないが読書感想文めいたことを書いてみようと思うが、なかなか思うようにまとまらず時間がない。ともあれ、以下にその本を挙げて皆さんにおすすめしたい。

◎「わたしの渡世日記」高峯秀子
 人の生き方なんて、解釈はいらない。わたしは、女優としてはまず生活と行動ありきで、今まで生身で生きてきたらこうなったのよ、ということで振り返り、率直で独白的な感慨が記されている。そこには様々な、人、世間の奇想天外さが縷々綴られる。学校という教育の場、学歴的なもので得られる教養や社会常識など、どのくらい役に立つのかという読後感につまされる。

◎「流れる」幸田文
 一見、無手勝流に見えて、造語や金釘的文字の使い方の文章表現の中に、見事な時代や生活感覚が描写されていて、いいのだ。きらびやかな文章、公式的な文体と無縁なのがいい。さすがに世評高いこの小説は、文学作品として今後も長く読み続けられよう。

◎「徳川家康」山本七平
 山本さんの著書の中でもこの本は縦横無尽な研究内容で、特に論旨が独自でいい。歴史家もこのようであってほしいものだ。

◎「言葉を育てる」米原万理
 もっと、長生きしてほしかった。自由奔放、闊達、しかも先鋭的な視点と可憐なキャラクターがかもしだすエッセィが好ましい。この本は、彼女の面目躍如たる対談集である。 

◎「私家版・ユダヤ文化論」内田樹
 内田さんの本のなかでは、この本だけは評価したい。小林秀雄賞受賞というのにはクエスチョンマークがつく。だが、ユダヤ文化について論述している割には、なんだか、序論めいていて喰い足りない。
 今、多作傾向にあるこの人の著書や文章が若い人に読まれているようだが、バーチャル、安直に受けいられている気がする。帰納法による、‘物事’の抽出や分析に偏重しすぎているのだ。文の技巧や表現の手法や論の進め方の程度に比べて、説得力がなく面白くない。僭越にもわたしと同世代だが、現代の学生や若者にはすすめられない。 

◎「木」幸田文
 薄い本であるが、樹木に対する愛好談、現地踏査の数々でなりたつ、アンソロジーだ。わたしの専門領域(植物)から、幸田さんという文筆家が見たらということで読んだのだが、日本国内の樹木を見に地元へ行き、眼を皿のように、また五感を総動員して、感傷や情緒を無縁に対象に迫っていく。なかなかの行動力だ。植物に対する的確な観察による著述で編まれているのだ。植物学的知識にもとづく科学エッセィとも異なる。日本人には少ない話題だろう。

 現在は、「現人神の創始者たち」山本七平 に取り組んでいる。山本さんの絶筆のようで、渾身の思いがこもっている。この本のことは、また、いつか触れたい。
           
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