うざね博士のブログ

緑の仕事を営むかたわら、赤裸々、かつ言いたい放題のうざね博士の日記。ユニークなH・Pも開設。

宗像神社の御神木

2013年02月03日 07時45分25秒 | 樹木医の日々片々
ここでは御神木スダジイ伐採に関する昨年の11/19付けブログの続報をする(下段に再録)。
 昨年末に伐採された古木の樹木計測データを上げる。これは業務の一端ではなく、ある機関からの要請もありボランティア活動のようなものであるが、現況の調査と解析をおこない記録を残す必要があって、合い間の時間にまとめてみた。興味のある方はお読みください。

宗像神社の御神木     130202
スダジイ(2本立ち) A:道路側 B:社殿側
現況調査
     ○ 写真①伐採前
白井市教育委員会提供、直近のデータ

     ○ 写真②調書・伐採後
樹木医による基本調査票(平成12年11月4日)
  白井市教育委員会提供、直近のデータ

     ○ 写真③樹幹部、伐採  写真④樹幹部、伐採、B年輪計測
平成24年11月16日 10:30 ~ 11:30 16:00 ~ 16:45
伐採作業3日間  B:年輪計測

     ○ 写真⑤A年輪計測
平成24年11月22日 10:00 ~ 11:00
A:年輪計測

     ○ PDF 写真⑤A年輪計測略図

     ○ 写真⑥抜根後、根系量
平成24年12月21日 11:00 ~ 12:00
抜根作業直後


樹木データ
スダジイA  樹高;13.5m 目通り周;5.45m(平均直径:1.4m)葉張り;10.5m
    年輪;210年

切断面 健全部 10yrs×9span= 90yrs ( ÷幅30cm→ 3yrs/1cm)
       腐敗部 幅40cm×3yrs/1cm= 120yrs
    ・ 健全部 90yrs +腐敗部120yrs= 210yrs
 

 樹木は道路側に傾斜し、根元から幾重にも幹が捻じれて上にのぼっている。全体の印象は荒々しくて醜怪な枝ぶりと幹肌だが、途中の太い幹には球状のコブ(癌腫)が頻々と見かける。立ち上がりの主幹と根元全体を見ると盤根錯節という表現が適切である。根際にひこばえと他の樹木が寄り添うように育つ。切り株を見ると、中央部から北側に腐敗が進み空洞になっている。多分、樹幹上方にもウロが広がっているに違いない。着葉量はスダジイBより多い。活力減退中ながらも小さい果実が見込まれたのはこちらの方だろう。腐敗は根株腐朽菌によるもの。
   
   
スダジイB  樹高; 15.5m目通り周;4.3m(平均直径:0.9m)葉張り;12.0m
    年輪;150年

切断面 健全部 10yrs×15span=150yrs  
   
 
 一本のみの主幹は直立しており、樹形は広楕円形でスダジイとしては標準的であるがよわよわしい印象だ。主幹はスダジイAより平滑な幹肌である。スダジイAから絞殺されないように、根元には、逃げ場を失ったように根がとぐろを巻いて根上りしている。特徴はスダジイBだけが板根状になっていることだが、これは樹種的にも生育する気候区分上地域的にも特異な現象である。ほかに巨根の間に実生で発芽したヒサカキなどの樹木とひこばえが育つ。この樹木は、かつて樹木医の調査で サルノコシカケ が確認されたとある。

 ※ 計測について、目通り周はGLからほぼ1.5mの高さで、年輪計測はGLからほぼ1.8mの切断面であり、樹皮を除く木質部分を数えた。
 

      *** ***** *** ***** *** ***** ***
 

 ここの生育環境は昔から台地上の畑作耕地の合い間にあり、土質はいわゆる関東ローム層にあたり団粒構造が発達して植物にとって適した土壌である。そこへ、おもに野鳥がついばんだ種子を糞とともにばら蒔き、モミやカヤやアカマツの針葉樹、ヤブニッケイやツバキやカシ類などの常緑広葉樹、それにイロハモミジ、イヌシデ(ソロ)、コナラ、クヌギなどの落葉樹が発芽し成立する樹林帯に当てはまる。 
 二本のスダジイはともに健全な成長とは言えない。樹高がちぢこまり寸詰まりの形状を呈している。上長成長がおもわしくないので、根の張る範囲もせまいだろう、深さは1.5m程度と推量される。この伸根の生育不順の原因には、昔の村道時代からの前面道路や参拝人の踏圧などの人的影響が考えられる。一本の木を自然の気候下の構造体で見ると、重心や偏心に対しはたらく応力は根元周辺になる。そこに強度補強の力を集める、生き物たる樹木は負けないように頑張るというわけだ。
 この二本のスダジイは縁起木として相生(アイオイ・株立ちの一パターン)状で植えられている。この樹木の間に真鶴産の安山岩でできた石彫地蔵が安置されていた。
 時系列的に具体的には不明であるが道路側のスダジイAが先に植えられて、数十年後にスダジイBが神社の祝願祈念に石彫地蔵とともに植えられたものらしい。その前後関係が判明するのは、両方のスダジイの癒着の方向や一断面に、地際部の根株のうねる形状や地中に向かう伸根の動きが上下に重なったりする現象を、目視で確認した故である。根の残骸とも言うべき集積画像に、抜いた太根の中に一部グレイ化した表皮が見えるがそれが癒着していた跡である。
 これは、生育形態上は癒着(ユチャク)といえる。ちなみに、癒合(ユゴウ)とは屋久島の夫婦杉のように相互の木質部の組織細胞が圧倒的な年数と外圧によってできる。

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時代背景(年輪にもとづく210年前の植栽時点のことである)
浅間山の噴火
生麦事件

縁起
所在地:白井市清戸553。県道千葉ニュータウン北環状線に面している。
総本山は福岡県宗像市にある。漁業の神様とされている。


参考資料
スダジイ
ブナ科(FAGACEAE)シイノキ属
Castanopsis cuspidata var.sieboldii
別名イタジイ・ナガジイ
常緑高木 雌雄同株  異花同株
暖地の山地に生え、大きいものは高さ約30㍍、直径3㍍になり、樹冠は円形。庭や公園などにもよく植えられている。樹皮は黒褐色で、大木になると縦に深く裂け目ができる。葉は互生し、長さ6~15㌢の広楕円形で、上半部に波上の鋸歯がある。厚い革質で、裏面には灰褐色で鱗片状の毛が密生する。5~6月、淡黄色で長さ8~12㌢の雄花序が本年枝の下部から上向きにでる。雌花序は長さ6~10㌢で本年枝の葉脈から上向きにでる。堅果は翌年の秋に成熟し、長さ1.5~1.8㌢の円錐状卵形で食べられる。穀斗が堅果全体を包んでいるが、成熟す ると3裂する。ツブラジイとよく似ているが、樹皮の様子や葉や実の大きさが違うので区別できる。
□用途 庭木、防火・防風樹、建築・器具・船舶材、シイタケの原木
○分布 本州(福島・新潟県以西)、四国、九州、朝鮮(済州島)

『日本の樹木』 編者:林 弥栄 山と渓谷社

 なお、写真で左クリックすると画像を拡大して見ることができます(タイトルバーの横の⇦ボタンで元に戻る)。
 撮影日時:平成24年12月21日11:00頃

           

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もうすぐ、22日が暦の上では小雪だ。やっと東京地方に昨日の午後、木枯らし1号が吹いたらしい。 
 ここでは、急拠、ある市の古木のデータを挙げたい。それはスダジイであるが、その年輪を数えた画像をアップする。教育委員会の文化財担当の吏員に現地でたまたま知り合い、業務の合間を縫っておこなったもの。道路拡張にあたり伐採中の巨木である。
 切り株の年輪の輪に、赤マジックインキで記し半径部分をカウントすると、150年と出た。歴史年表であたると、1862年の文久年間、当時の世の中は幕末で、英国人を薩摩藩の人間が襲撃した「生麦事件」が起きたころのようである。
 [書き込み中]

 なお、写真で左クリックすると画像を拡大して見ることができます(タイトルバーの横の⇦ボタンで元に戻る)。
 撮影日時:平成24年11月16日(金曜日)11:00、16:00頃

           

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