うざね博士のブログ

緑の仕事を営むかたわら、赤裸々、かつ言いたい放題のうざね博士の日記。ユニークなH・Pも開設。

イチョウの樹勢回復ー大田区内マンション

2016年07月16日 04時58分00秒 | 樹木医の日々片々

≪樹木調査治療事例≫
イチョウ H:15.0 C:2.30 W:10.0
昭和62年12月⇒平成元年10月
Sマンション: 東京都大田区内
事例名あるいは研究課題 :大田区保護樹木ーイチョウの樹勢回復
症状・診断所見等: 集合住宅の建て替え計画があり建築工事着手前に移植工事を行ったが、その後枝葉がしなだれ全体が衰弱し生育不良に陥った。原因はイチョウに近接する作業通路の通行者による踏圧と現場発生の盛土による土壌の圧密沈下にもとずく植栽地内の根系部の悪化とみられる。
具体的処置・方法等:イチョウ植栽地内の盛土の除去と、地表t= 500部分の現況土に有機質系土壌改良剤(バーク堆肥)を混入して耕耘し客土層の改善を行う。次に根鉢廻りをw600、d1400の形状に掘削しパーライトを入 れ敷きならし後に塩ビ管(150Φ)を5か所立上げて同材料を封入し、前記改良客土で立上り管を除き植穴全面を埋め戻した。
処置後の結果あるいは研究成果:萌芽、枝葉の伸長量が目立ち樹木の勢いが良くなった。
・・・・・・・・・・・・
 上記の記述は樹木医試験申込書内のイチョウの調査治療事例の一部ですが、先日思い立って7月7日、このマンション(14F建て)にかれこれ28年ぶりに現地へ行ってきた。これは当時の日本住宅公団(現在のUR都市再生機構)から民間開発業者が買い取り建て替えた物件。ゼネコンは竹中工務店で、わたしは造園会社で植栽を設計施工で請け負った時の担当者である。以下に植栽後の経年変化の画像をアップする。その頃はまだ、樹木医制度が発足する以前の話で、何とかしなければという思いで資料を参考に独力で樹勢回復工事を行った。











 そこで現在の全体の状況は、メイン通りの復元した桜(ソメイヨシノ)並木が鬱蒼と茂り、高木はケヤキ、ユリノキ、フウ類、カキノキ、マンション住棟裏側にはモウソウチクほか、またザイフリボク、ブルーベリー、ミツマタなどは初めてプランニングしたがそれらの中木は消滅し、低木の花色違いのツツジ類、アベリア、地被類はカロライナジャスミン、ビグノニア、ツタ、擁壁にかかるヘデラ・カナリエンシスなどが残っている。
 わたしは設計した者としては驚きと忸怩たる思いである。わたしの場合は、業務的に公共の植栽計画よりも民間主体に片寄っており植栽密度が過密傾向にあったのは否めない。都心から少々ずれたこの住宅地の緑化について、植栽の配植コンセプトは妙な言い方だが文部省唱歌 ≪里の秋≫ をイメージしたもの。
 管理状態について口を挟む立場ではないが、経年的な樹木の生長や自然淘汰とかの現象のほかに、わたしは普通の意味での今までの来し方を思う。当時のわたしは38歳、これからという時であったのか。その後の仕事環境や生活、家庭、世間の様々な変化を思う。
 外観的に、問題のイチョウの現況は萌芽状態は良くて、当時の C:2.30 がそのままで肥大生長せず高さは6,7mで芯止め(寸胴切り?)状態である。ただ、根元には踏圧の影響はないがルートカラーが見えず地下部が非常に気になる。剪定は過剰剪定気味で、なぜ衰弱に至っていないのかが不思議である。
コメント
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