落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

三日美人

2009年01月20日 | diary
アン・ソンギ、「整形はアイデンティティを毀損する行為」

安聖基(アン・ソンギ)といえば韓国の国民的俳優だけど、ぐりの中でもいちばん好きな韓国人俳優のひとり。初めて観たのはオール・アメリカロケの『ディープ・ブルー・ナイト』という映画で、彼はグリーンカード欲しさに韓国系アメリカ人の女性と偽装結婚をする、ワイルドでセクシーなにーちゃんの役でした。今の素敵なナイスミドルぶりとは全然キャラちゃいますね。
それはさておき整形手術。実はぐりはこの話題がひっじょーーに苦手で、どっかで誰かがこの話をしていると走って逃げたくなるとゆーみょーな性癖(?違うか)がある。いやべつにぐりが整形手術の経験者とゆーわけではないのだが。疑惑をかけられたことはある。大学に入学して最初のアルバイト代でコンタクトレンズを買って着けたら、それまでぼってり分厚い奥二重だったのが急にくっきり二重まぶたになって、帰省して会った親戚に「整形したんちゃう?」なんて噂をたてられた。してませんて。ヒトのまぶたは一生変化し続けるものだから、年齢とともに二重になったり三重になったりするのはよくあることだし、コンタクトレンズはまぶたの筋肉を摩耗させるのでまぶたの形が変わることもよくある現象なんだよね。

てかぐりの親戚が何かと「整形したんちゃう?」といいたがるのはおそらく韓国人だから(差別発言です)。韓国人の容姿の美醜に対する執着と偏見は身内ながら病的なものがあるので。
以前どっかに書いたが、ぐりは物心つかないうちから親戚じゅうに「おまえは両親どちらにも似ていない(似てれば美人のはず)」「不細工だ」といわれ続けて大きくなったので、かなり後になるまで自分の容姿を「ふた目とみられないほど醜い姿」だと思いこんでいたものである。未だに写真を撮られるのが嫌いなのはそのせいです。まあこんなネタはまだ笑い話で済む。済まなかった従姉もひとりいた。
彼女は生まれつき片目の下にうっすらと青痣があった。痣といっても大した痣ではない。知らないで見ればクマのようでもあり、よくみればなんとなく薄青いという程度で、メイクをすればほとんど見えなくなるくらいのものである。もともとの顔だちは整っていて、背が高くてプロポーションも良くて健康そのもの、頭が良くて明るい性格の彼女だったが、周囲の親戚は寄ると触るとその痣のことばかり話題にした。10代のころまでは元気だった彼女は、結婚適齢期を迎えるころにはすっかり人が変ってしまった。そんな痣があったらお嫁の貰い手がない、などとみんなして責めたて続けたからである。痣があるのは彼女のせいじゃないのに。ほとんど家からも出ず友だちづきあいもしなくなり、家に遊びに行っても部屋に閉じこもりきりだった彼女。ほんとうに気の毒だった。
20代も終わりにさしかかるころ、彼女は一念発起して痣をとる手術をした。痣の部分の皮膚を剥いで胸の皮膚を移植するというもので、結果は大失敗だった。あんなに痣のことをいい立てた親戚たちは誰も手術の保証人になろうとせず、最終的には手術に大反対したぐりの父がサインをした。うまくいって彼女のコンプレックスが解消されればそれでいいと根負けしてサインしたのに、手術は失敗してしまった。

彼女は今も独身で、実家の飲食店を手伝っているという。もう若いころほど暗くもないというけど、ぐり自身は20年も会っていないのでよくわからない。
こういう醜形恐怖に近いような強迫観念はぐり家に限らず韓国人共通のものらしく、日本に住む韓国人─在日コリアン・ニューカマー含む─と話していても似たような話はよく聞く。つい笑ってしまうのは、いわゆる性格俳優・個性派などといわれるような、美形じゃない芸能人に対して「美形じゃないのが許せない」なんて本気で怒る人がいたりすること。そこまでゆーか(笑)。
ぐりは整形手術そのものを否定はしない。それをほんとうに必要としている人がいるなら、外野から非難する権利は誰にもない。整形手術をすることそのものは罪でもなければ悪事でもない。
どこをどういじろうがいじるまいが、その人のアイデンティティまで否定するのはおかしな話だ。誰に迷惑をかけるでなし、そんなものはその人の自由ではないか。
でも安聖基のいってることもわかるけどね。人工的に整え過ぎた顔には個性はなくなるし、整形手術とまでいかなくても、リフトアップやボトックスで不自然な顔になったり無表情になったりしたら俳優として本末転倒だもんね。
ってか、不細工なことや年相応に老けることだって罪でも悪事でもない。確かに美人で若々しい人が得をする世の中が現実ってことはわかるけど、損得がすべてでもないでしょう。
それがすべてだといいきりたい人もいるかもしれない。けどそれってなんか寂しいよね。貧しいと思うよ。


京都にて。