『誰も守ってくれない』
小学生の姉妹が刺殺された事件の容疑者として18歳の少年(飯嶋耕大)が逮捕され、マスコミから追い回されるその家族の護衛を命ぜられた勝浦刑事(佐藤浩市)。別居中の家族との関係を立て直そうと旅行を予定していたさ中に、上司(佐野史郎)の命令でいやいや容疑者の15歳の妹(志田未来)を連れて逃げ場を求めて点々と居場所を変えていくのだが、インターネット上では匿名で報道され保護されているはずの一家の情報がどこからともなく垂れ流されていた。
『踊る大捜査線』チームが再結集した社会派エンターテインメント映画。
なのでひじょーにTVくさいです。てか最近の邦画は大抵TVくさいんだけどね。しかしここまでガンガンにTVくさいといっそのこと潔いかもしれない。
だっていちばん報われない仕事じゃないですか。主人公の仕事がさ。容疑者の家族を公権力が国民の税金をつかって保護するなんてさ。誰にも評価されないし、人によっては理不尽さも感じるかもしれない。被害者は誰にも守ってもらえなかったのに、なんで容疑者の家族が守られるのか。
誰にも理解されない報われないドラマを訴えてくんだから、極力誰が観てもわかりやすく楽しめる大衆映画として表現するのは、とるべき手段として正解なんだろうと思う。それはわかる。
TVくささで成功してるなと思ったのは、主人公勝浦とコンビを組む三島刑事(松田龍平)とのかけあい。
ミュージシャンのようなキメキメファッションにニヒルなキャラクターの三島のウィットたっぷりな台詞廻しは、ついつい固く重くなりがちな画面をうまく軽くしてくれる。笑えないシーンの連続の途中に彼が登場するとほっとした。あとTV俳優ばっかりのTV的な芝居の中に映画俳優の彼が出てくるだけで気分的にも楽なんだよね。彼の演技はやっぱりちゃんと映画の芝居だからさ。
逆にイタかったのは西伊豆のペンションでのパート。イタいよー。すべてがイタい。ここは演技がどうこうという以前に、画面がペンションから出てかないのにそこでやってるドラマがペラペラに薄くて奥行きがなくて、観てる方も間がもたなくてツライ。これは構成そのものが間違ってたんだと思うですよ。最初は主人公たちの敵はマスコミだったのが、西伊豆に移ってからはインターネットにすり変わって、その三者がまったくクロスしない単純構造にしちゃったのは失敗だったんではないかなー?新聞記者役の佐々木蔵之介なんか登場しただけでほとんど何にもしなかった。あれはもったいなかったと思う。
大体が掲示板やブログで情報を垂れ流してる人間にはマスコミ関係者もいれば捜査関係者もいる。そこがきれいに三分割されて、あっちはよくてこっちはダメ、って状況になってること自体があまりにTV的過ぎる気がしてしょうがない。
ツッコミどころはいっぱいあるし、映画としての完璧さなんてものにはちょっと距離を感じる作品ではあるけど、TV局、それもフジテレビがこういう映画をつくったってところはすごいなとは思います。『踊る』をつくって大ヒットさせたその自信がこういう題材を映画化させたのだとしたら、TV局の映画もそう悪くない。
できればこれはシリーズ化してほしいですね。刑事ドラマになかなか登場しない、こういう非公式な仕事を題材にした映画。昨日放送されたドラマ『誰も守れない』もおもしろかったらしいですが、今後もっとリアルに完成度の高いシリーズにしていければ、無自覚に情報に踊らされることにまったくなんの罪悪感も感じないマスコミやネットユーザーの意識も変えられるかもしれない。なんてのは理想論的過ぎますかね。
関連レビュー:
『BOY A』
『少年A 矯正2500日全記録』 草薙厚子著
『なぜ僕は「悪魔」と呼ばれた少年を助けようとしたのか』 今枝仁著
『僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真相』 草薙厚子著
小学生の姉妹が刺殺された事件の容疑者として18歳の少年(飯嶋耕大)が逮捕され、マスコミから追い回されるその家族の護衛を命ぜられた勝浦刑事(佐藤浩市)。別居中の家族との関係を立て直そうと旅行を予定していたさ中に、上司(佐野史郎)の命令でいやいや容疑者の15歳の妹(志田未来)を連れて逃げ場を求めて点々と居場所を変えていくのだが、インターネット上では匿名で報道され保護されているはずの一家の情報がどこからともなく垂れ流されていた。
『踊る大捜査線』チームが再結集した社会派エンターテインメント映画。
なのでひじょーにTVくさいです。てか最近の邦画は大抵TVくさいんだけどね。しかしここまでガンガンにTVくさいといっそのこと潔いかもしれない。
だっていちばん報われない仕事じゃないですか。主人公の仕事がさ。容疑者の家族を公権力が国民の税金をつかって保護するなんてさ。誰にも評価されないし、人によっては理不尽さも感じるかもしれない。被害者は誰にも守ってもらえなかったのに、なんで容疑者の家族が守られるのか。
誰にも理解されない報われないドラマを訴えてくんだから、極力誰が観てもわかりやすく楽しめる大衆映画として表現するのは、とるべき手段として正解なんだろうと思う。それはわかる。
TVくささで成功してるなと思ったのは、主人公勝浦とコンビを組む三島刑事(松田龍平)とのかけあい。
ミュージシャンのようなキメキメファッションにニヒルなキャラクターの三島のウィットたっぷりな台詞廻しは、ついつい固く重くなりがちな画面をうまく軽くしてくれる。笑えないシーンの連続の途中に彼が登場するとほっとした。あとTV俳優ばっかりのTV的な芝居の中に映画俳優の彼が出てくるだけで気分的にも楽なんだよね。彼の演技はやっぱりちゃんと映画の芝居だからさ。
逆にイタかったのは西伊豆のペンションでのパート。イタいよー。すべてがイタい。ここは演技がどうこうという以前に、画面がペンションから出てかないのにそこでやってるドラマがペラペラに薄くて奥行きがなくて、観てる方も間がもたなくてツライ。これは構成そのものが間違ってたんだと思うですよ。最初は主人公たちの敵はマスコミだったのが、西伊豆に移ってからはインターネットにすり変わって、その三者がまったくクロスしない単純構造にしちゃったのは失敗だったんではないかなー?新聞記者役の佐々木蔵之介なんか登場しただけでほとんど何にもしなかった。あれはもったいなかったと思う。
大体が掲示板やブログで情報を垂れ流してる人間にはマスコミ関係者もいれば捜査関係者もいる。そこがきれいに三分割されて、あっちはよくてこっちはダメ、って状況になってること自体があまりにTV的過ぎる気がしてしょうがない。
ツッコミどころはいっぱいあるし、映画としての完璧さなんてものにはちょっと距離を感じる作品ではあるけど、TV局、それもフジテレビがこういう映画をつくったってところはすごいなとは思います。『踊る』をつくって大ヒットさせたその自信がこういう題材を映画化させたのだとしたら、TV局の映画もそう悪くない。
できればこれはシリーズ化してほしいですね。刑事ドラマになかなか登場しない、こういう非公式な仕事を題材にした映画。昨日放送されたドラマ『誰も守れない』もおもしろかったらしいですが、今後もっとリアルに完成度の高いシリーズにしていければ、無自覚に情報に踊らされることにまったくなんの罪悪感も感じないマスコミやネットユーザーの意識も変えられるかもしれない。なんてのは理想論的過ぎますかね。
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