昨晩のNHKスペシャル「緊急報告・社会保障が危ない」というテレビ番組・・。
日本全国でどれぐらいの方が観たのであろう。
身の周りを見渡すだけでも「貧困と孤独」の影が、じわじわと覆い忍び寄る日本の近い将来である。
二年前から、アルバイト気分、趣味の要素もなくもないが・・病院で肉体労働に励んでいる。
要介護5レベルまでの、とりわけ老人介護に従事する3Kとも呼ぶべき介護パートとしての肉体労働である。
老人花盛りの時代・・その行く末は、どうなるのだろうという気持ちで向き合っている。
その日常報告は、個人情報等の秘匿の義務もあり、明らかにできないが海外にコラムという形で書き送っては残しておきたいと考えている。
もう20年以上昔、まだ若い時にロンドン郊外にある高級老人ホームで、三ヶ月間、住み込みでボランティア体験したこともある。
そこでの下の排泄処理など・・俗に汚い仕事に従事する者は、ほとんど黒人が行っていた。
要介護の方々の入浴は、何故か夜間にされているのだが、その現場は、酷いものだった。
黒人が、老いた痴呆白人に対しての暴言、暴力行為が、頻繁に行われるのである。
・・その現状をホーム側に報告すると、人手不足の労働実態なのかどうかしらないが、正直に報告した小生の方が、職員のなかで孤立した・・。
そこを出る時、ホームに暮らす老人達が、口々に「おまえは正し過ぎた。悪くない」と言ってくれたのが救いだった。
とりわけ、小生の英語をよく注意して個人的にも多々教えてくれた元バレリーナのマドンナでコラムニストだったKさんが、杖で小生のお尻を叩いて「この国は、レディファーストの国なんだよ。私より先にエレベータに乗るな。それがジェントルマンの基本だよ」
「この世の命は、いろんな差別のうえに生まれてくる。憎悪も良心もある。喜びも悲しみもある。ただ、あの世に逝くことだけは、人間も動物も生き物も皆平等なんだよ」
・・小生の忘れられない言葉である。
5年ほど前、父の身体が弱くなり介護が必要になった頃から、いやずっと前から日常の会社員稼業に疑問が生じてきた。
組織に属して40代を過ぎて50代が近づくと、誰だって組織の中の自分の未来ポジションを予測できるはずである。
人生一度のはずなのに・・ほとんどの者が、一定収入の安全、家族生活維持の安心が欲しいだけで、しがみつく仕事稼業に息苦しさ覚えるはずである。
今でも、時々、悪夢を見ることがある。
決まってドイツ人の上司が現れて、彼から毎日のようにドイツ訛りの英語で強烈に罵倒されて書類を床にばら撒かれるシーンである。
それを拾い集める惨めな自分の姿である・・嗚呼、嫌だ、嫌だ。(笑)
でも、あのドイツ人は、感情論を抜きにすれば、部下である小生に正論をストレートに主張していたのかもしれない。
感情を押し殺して、人を見て風見鶏のように対応する日本人と・・どっちが陰険だったのだろう?
辞めて・・清々することも、懐かしく思うこともあるのである。
話を戻すと、今の日本の介護や医療の現場は、人手不足である。
とりわけ、介護の仕事は、3Kの低賃金で、家族があれば、生活は大変である。
これからの30年間・・ボランティア有志や医療や介護の職員だけに頼るだけでは、増え続ける日本の老人問題は、解決もしないし幸福にはなれない。
一日で、介護の職員の月給分(10万円代)を稼ぐことも可能な社会層に居るレベルの人間から「どうして、そんな仕事に興味を持つのか」と問われる。
理解できないかもしれないが、誰かが、しなければならないのが実態なのである。
来年から日本の裁判員制度に国民が参加する義務を伴うが、日本の社会福祉制度にも国民が参加する義務を伴うものが制定できればよいと思う。
小生、少しの時間でしたが、自分の父親の介護を自らの手で出来て幸せでした。
老人になるまえに、老人の現状実態を知るのが、人生を幸福にする覚悟の一つの手段となるかもしれません。
「汝の敵を知れ」とは、老いゆく自分自身のことなのでしょう。