ふくい、Tokyo、ヒロシマ、百島物語

100% pure モノクロの故郷に、百彩の花が咲いて、朝に夕に、日に月に、涼やかな雨風が吹いて、彩り豊かな光景が甦る。

広島宇品編 4 ~退院~

2010年06月13日 | 人生航海
病院での日常もそのうちに慣れて、新しく人間関係も出来てゆく。

その病院には、少し年上の兵隊で、北支からの帰国者が患者として入院していた。

その人は、退院が近いらしく、毎日のように私のところに遊びに来て、病院内の事やら看護婦さんの事をよく教えてくれた。

そして、大野町から通勤されていた看護婦の木原さんという方を紹介された。

木原さんは、親切で、面倒見も善く、患者の評判も良く、皆から好かれていた。

入院生活も一ヶ月近くなって、軍医の診察があり、「翌週中にでも手術するか?」と訊かれた。

私は、「ハイ」と答えた。

が、看護婦の木原さんが「蓄膿の手術は辛いのよ。別の病室に手術を終えた人がいるから、訊いてみたら・・」と言ってくれたのである。

早速、尋ねて様子を聞いて、私の症状を話してみると、それぐらいの状態ならば、「手術しない方がいい」と詳しく教えられた。

すぐに、木原さんに話して手術をしない事を伝えた。

そして、軍医には伝えにくいと思う私の気持ちを察してくれたのか、「軍医には、私から伝える」と木原さんが言ってくれたのである。

翌日には、軍医から呼ばれて、「手術もしないのなら入院していても仕方無いので、いつでも退院してもよい」ということになった。

私もそう思い、翌日には早速退院の手続きを終えて、宇品の運輸部に復帰したのである。