ふくい、Tokyo、ヒロシマ、百島物語

100% pure モノクロの故郷に、百彩の花が咲いて、朝に夕に、日に月に、涼やかな雨風が吹いて、彩り豊かな光景が甦る。

捕虜時代(俘虜生活) 1 ~武装解除~

2010年08月17日 | 人生航海
悪夢のガス弾投棄は漸く終わったが、隊内では、武装解除問題が起きた。

血気盛んな兵隊達が大勢いて、大和魂を誇りとして、如何に終戦になったと雖も、陛下よりお預かりした兵器を敵に渡すのは偲び難いと言う。

菊のご紋章の刻印を、敵に汚されないようにと、ご紋を全部削り落としたのである。

何と言っても、敗戦は事実であり、戦争に負けた事は変わりなく、どうする事も出来ない儘に、その後も色んな情報が飛んでいた。

そのうち、連合軍の指揮下に入った事を知り、近々武装解除を行う事も決まったが、武装解除の場所は、しばらく何処になるのか、皆わからなかった。

そして、クアランプールの駅に行って汽車に乗る時であった。

その際、日本軍に対して、それまでの感情が一気に噴出したのか、現地人達が駅のホームなで押し寄せて、いろんな罵倒を浴びせられて、窓ガラス越しに唾を吐いて、小石を投げる者もいて、一時、不穏な空気が漂ったのである。

その時は、まだ武装解除前で、小銃等の武器は皆持っていたので、下士官の誰かが、腹立ち紛れに「この野郎、一発ぶっ放そうか」と銃を手にして興奮したりもした。

上官に「我慢しろ」となだめられて、その場は何とか収まり、そのうちに汽車が動き出した。

我々は、どこかの小さな駅で降ろされて、そこで武装解除が行われた。

既に、会場は準備が出来ていて、印度(インド)軍側の隊長は少佐であり、我が方の部隊長は中佐であった。

そして、敗戦国の悲しさで、我が方の部隊長が、先に敬礼する。

武装解除の儀式は、部隊長が相手の隊長に敬礼して、軍刀を渡して終わったのである。