百島百話 メルヘンと禅 百会倶楽部 百々物語

100% pure モノクロの故郷に、百彩の花が咲いて、朝に夕に、日に月に、涼やかな雨風が吹いて、彩り豊かな光景が甦る。

毛毬和尚。

2019年11月08日 | 百伝。

僕が知る良寛さんは、陽気で能天気な和尚さんというイメージでした。

筍が床下から生えてきたら、床に穴を空けて、伸ばしたという逸話。

雨降り日には、お地蔵さんに自分の編み笠をかけてやる逸話。

子供たちと、毛毬を興じて遊ぶ良寛さん。

食べ物がなくなると、良寛さんは、山をおりて托鉢をします。

懷には、必ず毛毬とおはじきを持っています。

その日も新しく作ったばかりの毛毬を持っていました。

いつものように毬つきをしながら、子供たちと夢中になって遊んでいると、離れた場所で、娘が独り草笛を吹いていました。

良寛さんは、訊ねます。

「どうして、あの娘は一緒に遊ばないんだ?」」

「あの子には母親がいないから毛毬がないから、一緒に遊ばないんだ」

「毛毬がなくても一緒に遊べば」と良寛さんは、言います。

「でも、あの娘は毬がないんだもの」と子供たちは言います。

良寛さんは、思うのです。

「この子達は、母親がいない毬がない娘を憐れまねばならないのに軽蔑している」と。

良寛さんは、その娘に手招きをしました。

何度も手招きをして言いました。

「その草笛いいね。私の毛毬と交換しよう」と言いました。

良寛さんは、自分の懷から新しい毛毬を取り出し手渡しました。

「遠慮なくお取り。さて、その草笛で上手く吹けるかな?」と言いながら、良寛さんが下手な草笛を吹くと、子供たち皆が、どっと笑い出したのです。

人は、こういう風にして、いたわり合わなければならないと、良寛さんがした事が正しいと覚えるのです。

良寛さんは、子供たちの相談事にも、読み書きも教えていたようです。

そして、何よりも哀しいことを、良寛さんは知っているのです。

この読み書きもできない貧しい子供たちの未来を。

いづれ、この子達が、どこかで働かされて、身売りされる子もいるのです。

良寛さんは、この世の不条理を嘆くのです。

どうして、力のある者は、力のない者を思ってやらないのか?

お金のある者は、お金のない者の気持ちを察してやらないのか?

不合理やら不正が、世の中には実にたくさんあることを、良寛さんは知っているのです。


天上大風。

2019年11月08日 | 千伝。

 昨日の新潟県は、快晴。

田中角栄さんの故郷、西山IC で降りて、海沿いの隣町、良寛和尚の生まれ故郷、出雲碕へ。

にいがた景勝百選第一の当選地に立って観ました。

真下に見える祠(良寛堂)が、良寛和尚の生誕地です。

海の向こうに良寛和尚の母の故郷、佐渡島の島影がうっすらと見えます。

それにしても、新潟県は、広いなぁ。

新潟県の面積は、北陸3県(福井、石川、富山)を合わせたよりも大きいのです❗

だから、行き帰りは、「富山で休もう。」となります。

さて、最近、テレビのCM を観ていると、気のせいかなぁ?

やたらに、ミツカンのテレビCM 番組が多いような気もします。

その度に思い出すのが、海里のミツカンと同じく在郷を故郷(山里)とする新美南吉です。

今年の夏、愛知県半田市に行ったのが、インパクトが強かったのです。

29歳の生涯で終えた新美南吉。

彼は、良寛さんの故郷越後に行きたかっただろうなぁ。

新美南吉は、ほとんど資料が残っていない良寛さんの幼年子供時代を想像の中で書き残しています。

新美南吉が生きた時代、越後の人々の偉人と言えば、上杉謙信と良寛和尚だったとのこと。

そして、新美南吉は、驚くべきことに、80年昔に、世界の片隅で生きる意味も、誰にも備わる悲しみ(でんでんむしのかなしみ)を、良寛さんの生涯、生きる姿に投影しています。

多分、多分ですが、良寛さんの子供時代は、あの温暖化反対を掲げるスウェーデンの16歳の少女グレタさんと似ていたかもしれません。

(トランプ米大統領のパリ協定離脱声明、彼女、怒り沸騰しているのかな?)

その後、良寛さんは、岡山県玉島の曹洞宗円通寺で12年にも及ぶ修行に入ります。

大愚良寛禅師の誕生です。

今回、良寛さんの生誕地、山の中で暮らした五合庵、草庵、終の住処となった終焉地、浄土真宗のお寺に眠る良寛さんの墓地、その住職さんのお話も伺う事もできました。

74歳で生涯を終えた良寛和尚。

終の住処に地に石碑が立っています。

浄土真宗の念仏の寺に、禅師として眠っています。

人徳、天晴れです。

托鉢の日々、こじき和尚とも呼ばれ、子供から石も投げられ、虐められた事も多々あったでしょう。

読み書きができた良寛和尚、膨大な量の和歌、詩歌、文を書き残しています。

その成果が、晩年の良寛和尚の名声を、良寛上人として、その名を広く大きく高くします。

天上大風。

良寛和尚さんの事、また追々と。