OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

和みたい、安らぎたい

2005-12-07 16:04:09 | Weblog

あぁ~、忙しい、忙しい、と言っている間も忙しい! 年末まで、この状態が続くでしょう。しかし、憩いと和みを忘れたくありませんので、本日のBGMは――

Red Garland's Piano / Red Garland (Prestige)

マイルス・デイビス(tp) のバンドで最初に人気が出たのは、コルトレーン(ts) ではなく、レッド・ガーランド(p) でした。その魅力はコロコロと玉を転がすように、しかも歌心満点でスイングするシングル・ラインのアドリブ・メロディと、山場で盛り上げで使うダイナミックなブロック・コード弾きのバランスの良さでしょう。

ですから、忽ちリーダー盤製作の契約も得て、1956年から自己名義のアルバムを発売することになり、この作品はその第2作目にあたります。

メンバーはポール・チェンバース(b) とアート・テイラー(ds) という気心の知れたトリオ♪ 録音は1956年12月&1957年3月という、ちょうどマイルスがプレスティッジとの契約を終了させ、バンドを解散させて渡欧していた時期にあたり、つまり何かと締め付けがあった親分の元を離れて、自己の活動を行っていた真っ最中の演奏ということで、ガーランドの良さが全面的に出た素晴らしいアルバムになっています。

まずA面初っ端から黒くてソフトなブルース感覚が溢れ出た、ご存知「Please Send Me Someone To Love」で、これは原曲の泣きのメロディを上手くパラフレーズさせながら盛り上げる名演になっています。全体のリズムもスロー粘りのあるビートを刻み、それにノリつつもリードしていくガーランドのタッチは最高で、何度聴いても飽きません。もちろんアドリブ・メロディも素敵なフレーズの洪水です。

そして一転して2曲目は有名スタンダードの「Stomin' At The Savoy」がアップテンポで小粋に演奏されますが、このあたりはマイルスのバンドでお馴染みの展開が存分に楽しめます。アート・テイラーの柔軟なブラシによるドラムスも快演です。

続く3曲目の「The Very Thought Of You」は夜のムードのスロー展開を聞かせてくれますが、ガーランドがよく言われる悪口のカクテル・ピアニストにはなっていません。もちろんリラックスした演奏なのですが、アドリブの組立にリアルな情感が篭っていると感じます。

そのあたりはA面ラストの「Almost Like Being Love」にも感じられ、テーマの処理は一抹の寂しさが漂う素晴らしさです。そのマイナーな情感は、アドリブ・メロディの膨らませ方や間のとり方にも顕著で、コロコロと楽しくスイングしながら、哀愁も滲ませた本当の名演になっています。

B面に入っては、まず冒頭の「If I Were A Bell」が、マイルス・バンドでの名演の再演とあって、どうしても過大な期待をしてしまいます。もちろんイントロは同じフレーズを使うというお約束は守られていますが、どうでしょう……。やはりマイルスとの共演バージョンの方が出来が良いように感じられます。しかしそれは、一期一会の超名演! ここでのリラックスして、なおかつファンキー味も漂う演奏も捨てがたい魅力があります。まあ、聴くほどに味が出るというのが結論です。

しかし次の「I Know Why」はムード満点のスローな展開を聞かせて、文句なく素晴らしい出来です。演奏内容としてはカクテル・ラウンジ色が強いのですが、ここまで来るとジャズ云々と言っても何も変わらない本質があって、それは聴いて良い雰囲気になる快感があれば、それで良いということではないでしょうか……。それが全面的に出た演奏だと思います。

その楽しさがたっぷりなのが、続く「I Can't Give You Anything But Love」です。この小粋な展開、強靭なスイング感はジャズ・ピアノ・トリオの楽しみに他なりません。ポール・チェンバースのベース・ソロも秀逸ですし、ガーランド節も全開♪

そしてオーラスの「But Not For Me」が、また、素晴らしい! この曲はマイルス・バンドの十八番でもあったので、ガーランドも完全にツボを掴んだ演奏を披露しています。もちろんポール・チェンバースのベース・ソロも完璧で、続いてマイルスのトランペットが聞こえてきそうな、空耳を呼ぶ快演です。

ということで、このアルバムは全曲が有名スタンダードで構成された、ピアノ・トリオ好きには定番中の定番です。一番の魅力は和やかなリラックス・ムードで、これこそ殺伐とした昨今の世相、忙しい師走の中の憩いの一時にピッタリの強力推薦盤です。

酒もコーヒーも美味くなる、そんな1枚なのです。例によってジャケ写は、試聴出来るネタ元に繋げてありますよ。

コメント
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