OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

最後まで寛いで

2005-12-31 16:13:30 | Weblog

大晦日だというのに、公私共にゴタゴタが重なって……。

なんだか今年は終りが良くない……。と言って、他が良かったわけではありませんが。

ここは一丁、ビシッと締め括りたいと目論むも、選んだ本日の1枚は、究極のリラックス盤でした――

A Long Drink Of The Blues / Jackie McLean (Prestige)

ジャズの魅力は寛ぎにあります。実際、他の音楽に比べて、その本質が瞬間芸であるジャズは、寛ぎが自然体で醸し出される可能性が高いのです。

例えば、本日のこのアルバムは、A面全部を使ってその実態をドキュメントしたウラ名盤です。

録音は1957年8月30日、メンバーはウェブスター・ヤング(tp)、カーティス・フラー(tb)、ジャッキー・マクリーン(as,ts)、ギル・コギンス(p)、ポール・チェンバース(b)、ルイス・ヘイズ(ds) というハードバップ野郎達で、この面々が延々とブルースを演奏するのですが……。

これが全く纏まりません。なにしろ盤の針を落とすと、いきなりリハーサルだか雑談だか分からない場面が、ワイワイガヤガヤと続きます。一応、今回のセッション・リーダーはマクリーンになっているはずですが、まるっきり現場を仕切る者がいない状態なのです。

それでもなんとか2分18秒目頃から本番演奏がスタート、テーマも無いようなブルース進行で、ギル・コギンスのピアノがペースを設定した後、カーティス・フラーがハスキーな音色で出てくる辺りが、如何にもジャズ♪ そしてそのバックに自然なリフが付けられていくところは最高です。

しかも次に登場するマクリーンがテナーサックスを吹いているのですから、二度吃驚というか、ジャズ者の気を惹く演出がニクイ限りです。

気になるその出来は、スタイル的にアルトサックスと変わりないフレーズを披露しています。ただしアルトサックスと同様の泣きを期待してはいけません。あくまでも「味」の世界に終始しているのです。

演奏はこの後、マイルス・デイビスそっくりなウェブスター・ヤングのトランペット・ソロを経て、再びフラーが登場しますが、この人が出ると、ますます寛ぎ感覚が大きくなるのは不思議なところです。

そしてお待ちかね、ついにマクリーンの激情アルトが炸裂して演奏は佳境に入りるのでした。

ということで、全体にリラックスしすぎというか、本当にタイトルどおり「二日酔いのブル~ス」だったのかもしれません。このあたりは個人的な好みが分かれるところでしょうが、私はここに溢れる寛ぎが聴くたびに忘れられず、かなり愛聴しています。

しかしB面はそれと正反対というか、寛いでいるようで、実は緊張感に満たされた演奏が収められています。

録音は1957年2月15日、メンバーはジャッキー・マクリーン(as) 以下、マル・ウォルドロン(p)、アーサー・ハーパー(b)、アート・テイラー(ds) という、所謂ワンホーン・セッションです。

まず1曲目は、同じアルトサックスの天才プレイヤーだったチャーリー・パーカーの決定的名演が残されているスタンダード曲の「Embraceable You」ですが、マクリーンは臆することなく、最初からテーマを変奏しつつ、熱いエモーション全開で吹き綴っていきます。

続く「I Cover The Waterfront」も、同じくミディアム・テンポでの吹奏になっていますが、そのテンションは落ちません。

そして最後の「These Foolish Things」は、さらにじっくりと煮つめたようなマクリーン節が堪能出来ます。この泣き、この心情吐露に侵されると、本当にマクリーン中毒に罹りそうです。

ちなみにB面のセッションのピアニストであるマル・ウォルドロンとは、後年、あまりにも有名な「レフトアローン」という名演を生み出すのですが、ここではその陰鬱な雰囲気は出ておらず、むしろ素直なハードバップ・バラードの世界に耽溺してしまう魅力があります。

ということで、ほとんど無視されているこういうアルバムこそが、実はジャズの楽しみを秘めているという、そんなことに気がついて優越感に浸るのもジャズ者の性だと思います。

来年もよろしくお願い致します。

コメント
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