OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

男は余裕が必要

2005-12-17 16:30:52 | Weblog

なんか雪がまたまた、酷くなってきました。明日にかけて再び大雪だとか……。雪はもう、沢山です。こっちは休みも無く仕事責めだし、こんな時は余裕の演奏ということで、本日の1枚は――

Duddy Plays The Horn / Dexter Gordon (Bethlehem)

ダディとはデクスター・ゴードンのニックネームらしいです。実際、その名のとおり、お洒落な人だったらしく、マイルス・デイビスも、そのファッション感覚に大いに憧れ、影響されたとか……。

そのダディことデクスター・ゴードンは、モダンジャズ創成期から活躍する黒人テナー・サックス奏者で、このスタイルは豪放磊落! 堂々と真っ向勝負のビバップ魂が素晴らしい演奏者です。

今日一般的には、あの名作映画「ランウド・ミッドナイト」に主演した人という認識が強いかもしれませんが、確かにその作品はデクスターの存在無くしては名作に成りえなかったと思います。全く、生き様がジャズそのものだった人なのですよ。

なにしろ若い頃は麻薬との縁が切れず、超一流の実力がありながら、モダンジャズ全盛期の1950年代はほとんど表立った活動が出来ませんでした。もちろんシャバとムショを往復していたわけです。

で、このアルバムはその1950年代に残された、数少ない録音のひとつで、もちろん内容は極上です。メンバーはデクスター・ゴードン(ts) 以下、ケニー・ドリュー(p)、ルロイ・ビネガー(b)、ローレンス・マラブル(ds) という、西海岸黒人ハードバップの名手達で、録音は1955年9月18日とされています。

まずA面冒頭のタイトル曲「Daddy Plays The Horn」は、聴けば誰もが知っているというバラエティなオトボケ・フレーズのイントロから、悠然とプルースを吹きまくるデクスターが最高です。このミディアム・テンポでの堂々とした押し出しと粘りは、余人が真似出来る域ではありません。

2曲目の「Comfirmation」はチャーリー・バーカー作曲による、ビバップの代表的なナンバーで、デクスターはここでも悠然と自己主張しますが、躍動的なリズム隊とのコンビネーションも疎かにしていないのは流石です。

そしてA面ラストはスタンダード曲の「Darn That Dream」を情感をこめて、スローに展開してくれるデクスターが最高です。ほとんど朴訥とした雰囲気ですが、実直というか、余裕たっぷりな男の自信が溢れるハードボイルドな出来になっています。

B面は、まず軽快な「Number Four」でスタート♪ グイグイとバンドを引張っていくデクスターに対し、リズム隊も鋭いツッコミを入れるという楽しさが満点です。

続く「ニューヨークの秋」はデクスター畢生の名演として有名なバージョンで、悠然とメロディを歌わせていく貫禄の演奏になっています。

そしてラストの「You Can Depend On Me」はアップテンポで演奏され、当に大団円に相応しい狂騒が楽しめます。アドリブにおけるデクスター・スタイルの特徴である有名曲からの引用も楽しく、ケニー・ドリューも本領発揮の名演になっています。

演奏された時代的に、全くコルトレーンの影響が無い演奏なので、そこには刺激が無いかもしれませんが、実はここに聴かれるスタイルこそが、ジャズの本質である即興メロディの楽しさを味わえるものだと思います。

ちなみにデクスターはこの後、またまた引退状態になり、ようやく1960年末に一線復帰するのですが、その当時のジャズ界、特にテナー・サックスはコルトレーンが大きな注目を浴びており、所謂コルトレーン流の「シーツ・オブ・サウンド」が主流になりつつありましたが、デクスターは完全に我が道を行くスタイルを貫き通しました。

そしてそれ故にアメリカで仕事が無く、欧州へ活動の場を移したりもしましたが、その実力と人気は衰えることなく、否、寧ろ高まる一方でした。

また、このアルバムで共演したケニー・ドリューも同じ頃に渡欧していますが、本格的にブレイクするのは1970年代に入ってからで、それもデクスター・ゴードンとの繋がりからのものでした。そのあたりは今回割愛させていただきますが、所謂ハードバップ・リバイバルは、このアルバムの再現を目論んで成功したという、いささか穿った聴き方も出来る、これは余裕のアルバムです。

嬉しいことに、近々、超廉価盤として再発予定なので、ジャケ写からのリンクをチェックしてみて下さい。

コメント (2)
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