OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

秘宝発掘♪

2006-07-13 17:53:08 | Weblog

午前中は物凄い集中豪雨でした。今でも雨は降り止まずですが、被害が出ないことを祈りつつ、本日は特選盤してこれを――

The Giants Of Jazz Live In Prague 1971 (Impro-Jazz)

久々にとてつもないDVDに曹禺しました。

その内容は、1971年に欧州巡業を敢行した大物ジャズメンから成るオールスターズ=ジャイアンツ・オブ・ジャズのライブ映像です。

なにしろメンバーが物凄く、ディジー・ガレスピー(tp)、カイ・ウィンディング(tb)、ソニー・ステット(as,ts)、セロニアス・モンク(p)、アル・マッキポン(b)、アート・ブレイキー(ds) という、モダンジャズの歴史を作り上げてきた偉人ばかり!

このツアーからは既に公式・非公式を含めて何枚かのアルバムが発表されており、その中のひとつは3月7日のプログでも取上げましたが、映像があったとは驚愕でした。恐らく映像・音源ともに初パッケージ化と思われますし、もちろん内容は見所満載♪ タイトルどおり、1971年10月30日のプラハでのステージを約68分収めており、画像は白黒ですが、カメラワーク&画質も良好♪ もちろん「リージョン・フリー」です――

01 Around Midnight
 ご存知、セロニアス・モンク畢生の大名曲に3管のフロント陣が彩りを添えるテーマ解釈から、ソニー・ステットがアルトサックスで泣きます。またカイ・ウィンディングは厚みのある音色を活かして悠々自適のブロー、それを引き継ぐセロニアス・モンクは神妙に自己分析です。
 ここは大きな指輪が印象的なセロニアス・モンクの指の動きがたっぶり映し出されますし、アル・マッキボンの的確なサポートも素晴らしいかぎり♪
 そしてディジー・ガレスピーがミュートでミステリアスなソロを聴かせますが、そのトランペットはもちろん、45度に上向きに曲がった、例のやつです。
 全体の演奏としては、やや大人しい雰囲気ですが、まあ、名刺代わりの1曲という趣でしょうか。最後にはディジー・ガレスピーのオトボケも楽しめます。

02 Tour De Force
 ド派手なビバップ曲が期待通りに演奏されます。
 アドリブ先発はカイ・ウィンディングで、この人はメンバー中、唯一の白人ですが、その闊達なプレイは本当に迫力がありますねっ♪ バックでリフをつけるディジー・ガレスピーとソニー・ステットもカッコ良いです。
 そして続くソニー・ステットは早々と上着を脱いでテナー・サックスで熱演! やや調子が出ていない雰囲気ですが、その貫禄と自然体のアクションはジャズの歴史を体現するものです。
 さらにお待ちかね、セロニアス・モンクはリズムに対して緩急自在のノリからモンク節をたっぷりと披露しています。ベースとドラムスの相性も素晴らしく、このトリオは好き勝手をやっているようで、実は緻密に互いの演奏を尊重していると思います。
 もちろん最後に登場するディジー・ガレスピーも負けずに至芸を見せつけ、特にベースとのデュオで聴かせる抑えた表現は、流石の奥深さです。またベースのアル・マッキボンは分厚く大きな手で地鳴りの如きソロを展開、ここは映像作品ならではの楽しみになっています。

03 Everything Happens To Me
 ソニー・ステットがアルトサックスで一人舞台♪ アナログ公式盤「The Giants Of Jazz」でも素晴らしい演奏が残されていたので、期待してしまいますが、結論から言うと流石の素晴らしさ♪ 先のアルバムとは別の良さがあり、指の動きがたっぷり見られるという、映像作品ならではの楽しみがありますし、背後で慎重に音を選びながら伴奏するセロニアス・モンクの姿も印象的です。
 また中盤にソニー・ステットが怖ろしいばかりの倍テンポ吹きを見せてくれますよ♪ この人は何時だって真剣勝負! その表情、観客に大きく礼をする嬉しそうな場面等々も、たっぷりご覧になれます。

04 Woody 'n You
 アート・ブレイキーのアフロなドラムスがリードする白熱のビバップ曲です。
 アドリブパートはもちろん4ビートになりますが、その熱いドラムスに煽られて、まずソニー・ステットがスピード感満点に突進すれば、カイ・ウィンディングは唯我独尊で早いフレーズを連発し、最後のキメのアクションがとてもカッコ良いんですねっ♪
 またディジー・ガレスピーはハイノートの乱れ打ちから急降下フレーズという十八番の展開を披露してくれますし、アート・ブレイキーの楽しそうな表情と黙々とピアノと格闘し、その場を異次元にワープさせるセロニアス・モンクの恐ろしさが対照的です。
 そしてここでは、アル・マッキポンが終始、セロニアス・モンクを見ながらバックをつけていますが、鍵盤で弾き出されるコードを見ているのでしょうか? なかなか緊張感のある名場面だと思います。

05 Lover Man
 これはカイ・ウィンディングのワンホーン演奏で、歌心と和みが存分に楽しめます。速攻でマイクの位置を直すあたりが見られるのも、映像作品ならではの楽しみでしょう。
 ちなみにこの人はローリング・ストーンズの初期のヒット曲「Time Is On My Side」のオリジネイターですが、ちょっと関係なかったですね……。
 それはそれとして、存分に素晴らしい演奏をお楽しみ下さいませ。クライマックスではバンド全体の咆哮とブレイクの妙技も用意されています。

06 Tin Tin Deo
 つづいてディジー・ガレスピーの見せ場となりますが、前段としてのアート・ブレイキーの司会と主人公のオトボケも流石です。なにしろ演奏そのものが、凄まじい緊張感に包まれているのですから!
 それは無伴奏のトランペット吹奏に始まり、ベースがお約束のリフを弾きながら参入すると、セロニアス・モンクも間隙を縫って危険なコードを炸裂させるのです。もちろんディジー・ガレスピーは緊張感を維持させようと、無駄を省いた表現から、一気に音符過多なスタイルに突入しては撤退を繰り返すのでした。
 う~ん、ハードボイルド! アル・マッキポンのベースの素晴らしさも特筆物で、流石のセロニアス・モンクも無条件降伏か? なんとディジー・ガレスピーがピアノで隠し芸を披露するという、恐い映像がご覧になれます♪

07 A Night In Tunisia
 大団円にはモダンジャズ永遠の名曲が用意されていますが、その主役は皆様ご推察のとおり、アート・ブレイキーです。もちろん御大は期待を裏切りません! 初っ端から猛烈な煽りでホーン陣をエキサイトさせるのです。
 それはまず、ディジー・ガレスピーが全力疾走フレーズを連発、ソニー・ステットはテナーサックスで悪戦苦闘、カイ・ウィンディングも細かいフレーズで応戦するという展開になるのですが、お約束のリフもヤケクソ気味です。
 そしてここからアート・ブレイキーのドラムソロが存分に鑑賞出来ます。あぁ、あのフレーズはこうして叩いていたのかっ! という発見とお楽しみがたっぷりで、目が離せません♪ 力演の中にも余裕と自らの魂の爆発があって、観客は大喜び!
 演奏はこの後、ラストテーマに突入するのですが、その後にまたまた、アート・ブレイキーが納まらないとばかりに再びのドラムソロ! 会場は興奮のルツボです! そして叩くだけ叩いて、スパッと演奏を止め、いきなりバックステージに入ってしまう姿が、もう最高です。

映像はこの直後に美女からの花束贈呈がありますが、肝心の彼女達が後姿ばかりで残念……。

まあ、それはそれとして、本当に見所満載の強烈な作品です。特にカイ・ウィンディングのキメのアクションとかソニー・ステットの真摯な演奏態度、また本場の超一流のメンツが見せつけるタフな部分等は、音源だけでは分からないところで、まさに映像の力を見せけられます。

ただしちょっと残念なのは、セロニアス・モンクにやや元気が無く、まあ、それはこの巡業の趣旨であるジャズの巨人達の共演という部分から、自己主張を抑えた結果かもしれません。ちなみにセロニアス・モンクはこの巡業からほどなく隠遁生活に入りますので、実質的に最後の勇姿になっています。

ということで、これは激オススメのDVDです。正直言うと、1回目に観た時はそれほどでもなかったのですが、観るほどにその凄さがジワジワと染みてきて、いまではその場面全てから、怖ろしいまでのパワーを感じています。落ち着いた中にも考え抜かれた編集&カメラワークがその秘密かもしれません。

あぁ、こんな映像が残されていたのだなぁ……。という感慨が……♪

コメント
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