今日は学生時代に知り合いだった女性と再会したものの、失礼ながら、あまりの太り方に驚愕しました。
若い頃はスマートでスタイル抜群でしたが、身体に厚みが出ていたというか、二重顎になっていましたし、肩から腕は逞しく……。
最初、声をかけられても、誰だか分からなかったですね。人間って、こんなに変わるものなのか、と……。
若い頃のスタイル良さは、皆の憧れだったんだぞっ! 自覚していたのかっ!?
ということで、何時までも変わらぬ良さが魅力のアルバムを――
■New York Scene / George Wallington (New Jazz)
モダンジャズは結局、真夜中のニューヨークの歓楽街の片隅で、ひっそりと生まれたアングラミュージックだと思います。
ですから、ニューヨークがジャズの本場という位置付けは間違っていませんし、ジャズメンはニューヨークで活躍してナンボの世界ですが、それゆえに広く大衆的な人気を得ることは容易ではありません。
それと歴史的に鑑みて、演奏の録音年月日が重んじられのは仕方ない面がありますが、セッションが完成したからといってすぐにレコードが出るわけではないので、最先端のジャズに関わろうとすれば、ますますニューヨークでのライブ活動が重要視されるのでしょう。
このアルバムは、そのあたりの事情を考慮したのか、そのものズバリになっていますが、実際に発売されたのはセッションから2年も後の事でした。その録音は1957年3月1日、メンバーはドナルド・バード(tp)、フィル・ウッズ(as)、ジョージ・ウォーリントン(p)、テディ・コティック(b)、ニック・スタビュラス(ds) というバリバリの実力者揃いです――
A-1 In Salah
非常に隠れ人気が強い名曲・名演です。作曲はジャズフォーク歌手のモーズ・アリソン(p,vo) ですが、吹込みはこのセッションの方が早いというデータがあり、実際、ここでのハードバップ・バージョンは痛快です。
それはホレス・シルバー(p) に通じるエキゾチックなメロディラインとノリが魅力です。ラテンリズムと4ビートの融合が鮮やかなアレンジと泣きのメロディが、もう最高なテーマから、まずフィル・ウッズが猛烈なドライブ感で烈しくグルーヴィン♪ 続くドナルド・バードも、お約束のフレーズを連発しながら山場を作るのです。
しかしリーダーでピアニストのジョージ・ウォーリントンが、やや物足りません。と言うのも、伴奏でのコード弾きに今ひとつリズム的な興奮が無く、これは白人的と片付けられるには寂しすぎます。
まあ、そのあたりはピアノソロのパートでも感じられるのですが、それでもこの演奏に活気があるのは、ベースとドラムスが最高だからで、ブンブン・グイグイとスイングしまくるのですから、たまりませんねっ♪
A-2 Up Tohickon Creek
これまたスピード感あふれる典型的なバードバップで、作曲はフィル・ウッズです。とにかくテーマのカッコ良さは情熱の塊ですが、アドリブ先発のジョージ・ウォーリントンのテンションが低過ぎというか、タッチが弱いというわけでもないんですが、輝きが足りないように思います。
この人も実はモダンジャズ創成期から活動している偉人で、バド・パウエル(p) と比較されてはソンをしてきたところがありますが、如何にも中途半端なスタイルながら、優れたサイドメンを得てリーダーとして活躍し、幾多の名盤を残しているので、やはり只者ではないのでしょう。逆に言うと、それゆえに気になる存在です。
肝心のここでの演奏では、ドナルド・バードが絶好調でブッ飛ばせば、フィル・ウッズはどこまでもドライブして、泣きじゃくるのです。
それとドラムスのニック・スタビュラスが、このセッションを通じて、非常に良いですね♪ ここでもアート・テイラーとフィリー・ジョーの良いとこ取りという叩きっぷりです!
A-3 Graduation Day
地味目のスタンダード曲がリズム隊だけで演奏されていきます。それはスローな展開ですが、ビートの芯がビシッと極まっているので、ダレません。
むしろ、こういう曲や展開の方がジョージ・ウォーリントンのピアノスタイルにはぴったりで、随所にキラリと光るフレーズや変奏が聞かれて、和みます。
個人的には、これも大好きなのでした。
B-1 Indean Summer
邦題は「小春日和」という有名スタンダード曲です。
テーマはドナルド・バードがリードしてフィル・ウッズが絡むという展開から、アドリブパートではフィル・ウッズが逆に先発し、テーマを巧みに変奏しながら歌心をたっぶりと披露します。
続くドナルド・バードも好演で、原曲の和みを存分に引き出していますし、ジョージ・ウォーリントンは元気の無さを逆手にとった演奏に終始しています。
そしてもちろん、ここでもリズム隊の2人が最高のグルーヴを弾き出しており、しかもテディ・コティックは最高のベースソロを聞かせてくれますよっ♪
B-2 'Dis Mornin'
ドナルド・バードが書いた真っ黒な大ファンキーブルース!
ですからアドリブ先発のジョージ・ウォーリントンには、嫌な予感が漂うのですが、失礼ながら、意外な好演♪ 「間」の活かし方が何ともファンキーなんですねぇ~♪ あぁ、こういう展開もあったのかっ! という、当に目からウロコの名演だと思います。
そして続くドナルド・バードは十八番のフレーズとノリで大爆発となって、さらに凄いのがフィル・ウッズです。思わせぶりな黒っぽさと激烈なウナリでリスナーを圧倒してくれます。
もちろんベースとドラムスのグルーヴは鉄壁ですし、ラストテーマに入る瞬間のホーンの雄叫びとピアノの合の手の息の合い方は、ハードバップ全盛期の証です。
B-3 Sol's Ollie
フィル・ウッズが書いた激情のハードバップがアップテンポで演奏されています。
アドリブの先発は当然、作者が務めてお手本を披露していますが、続くドナルド・バードも絶好調で負けていません。ただし曲調がそうなっているのか、2人とも歌心をイマイチ発揮出来ない雰囲気が……。
すると何ということでしょう! ジョージ・ウォーリントンが会心のピアノソロを聞かせてくれます♪ 流れような右手のメロディラインと左手の時に烈しいコード弾きが、バランスを失う寸前の場面が逆に刺激的です。
そしてクライマックスではニック・スタビュラスの爆発的ドラムスを要にソロの応酬が!
ということで、これはハードバップの充実盤です。
ジョージ・ウォーリントンというと、「カフェ・ボヘミア」か「キャリッジ・トレード」ばかりが持て囃されますが、個人的にはこの盤が一番好きですねっ。なにしろ曲が良いですし、テディ・コティックとニック・スタビュラスのリズム隊が最高にグルーヴィ♪ その録音も素晴らしいと思います。
ところが肝心のリーダーは、このセッションの直後から徐々に引退モードに入っていくのです。確かにハードバップという、リズムやビートに力強いものが要求される演奏形態では、自己の資質を存分に発揮出来ないウラミがあったのかもしれませんが、ここでの「Graduation Day」のような味のピアノトリオ演奏は最高の魅力なのですから、失礼ながり生き残る道もあったはずですが……。
まあ、それはそれとして、モダンジャズの魅力、ここに有りっ、です。