OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

天才ポールが前を向いたら

2016-09-13 17:49:01 | Beatles
Goodnight Tonight c/w Daytime Nightime Suffering / Wings (Parlophone / 東芝)
 
殊更大衆音楽の世界においては、常に流行の最先端を作り出し、あるいはその流れに遅れないような努力を求められるのがスタアの証だとすれば、時には無理を承知の悪足掻きをやらかして醜態を……!?
 
なぁ~んてことも決して珍しくないのが、この世の厳しさでしょう。
 
しかし、流石は元ビートルズという矜持、そしてロック&ポップスの天才であるポール・マッカートニーには、そんな常識(?)は通用しないと確信されられたのが、1979年春に発売された本日掲載のシングル盤A面曲「Goodnight Tonight」でありました。
 
だって、これが当時の洋楽では主流のひとつであった所謂ダンスビートを強く意識した作りになっていたんですよねぇ~~♪
 
皆様ご存じのとおり、ポールが率いるウィングスは1976年の全米巡業をライブ活動の頂点としながら、翌年には実質的な活動停止からメンバーも愛妻リンダと子分のデニー・レインだけという布陣に戻り、それでもシングル曲「夢の旅人 / Mull Of Kintyre」のウルトラメガヒットを放ち、さらにはアルバム「ロンドン・タウン」を発表していましたから、なかなか堂々とした存在感を示していたわけですが、どうにもやっている音楽全体が湿っぽいというか、まあ、それもポールならではの美メロ主義に彩られた胸キュン路線とはいえ、サイケおやじとしては、もうちっとは派手なものを望んでいたところへ出たのが、この「Goodnight Tonight」だったんですから、その逆ベクトルの激しさには仰天して浮かれさせられましたよ♪♪~♪
 
なにしろいきなりイントロからスパニッシュ調のギターが鳴り響き、続けてディスコビートでシンコペイトするベースが出るというツカミはOK!
 
そして如何にものポール節とでも申しましょうか、シンプルにしてキャッチーな曲メロを甘めに節まわすポール&ウィングスのボーカル&コーラスが実にニクイばかりで、しかもこれまたウィングスでしかありえないギターの間奏やリフの用い方、さらにはイントロからの発展形のようなスパニッシュなフレーズやラテンのリズムも取り入れたお遊び風演奏パートの彩、そしてついにはテクノっぽい味わいまでもちょっぴり最後には滲ませてしまうという、これぞっ! サービス満点の仕上がりなんですが、実はそんな分析なんてのは無意味なのが、この「Goodnight Tonight」の本当の魅力だと思います。
 
もっと素直にビートにノッて、メロディと歌を楽しんで欲しいというのが、ポール・マッカートニーという天才の狙いでしょう。
 
実は後に知った事ではありますが、「Goodnight Tonight」には既に2年ほど前からポール・マッカートニーが単独で制作していたデモトラックが基にあったそうで、最初はさらに強力なディスコバージョンだったと言われていますが、だとすれば同曲ロングバージョンの12吋シングルが発売されたのも当然だったわけで、もしかしたらそっちが本命だった!?
 
という妄想も禁じ得ないほど、とにかく大ヒットという結果はオーライ♪♪~♪
 
しかし、続けて世に出たウィングス名義のアルバム「バック・トゥ・ジ・エッグ」が、その明快さを受け継ぎながらも、個人的には些か中途半端な内容だった事を思えば、シングルオンリーで発表された「Goodnight Tonight」の突発的な傑作性は、折しも活発に動き出していたニューウェィヴ勢に対するポール・マッカートニーからのメッセージカードだったような気さえするほどなんですが、その意味でB面に入れられた「Daytime Nightime Suffering」が、まさにポール・マッカートニーだけのメロディフレーズや十八番のリズムアレンジを繋ぎ合わせたような、そのお気楽(?)な起伏が往年の作風になっているのは嬉しい誤算なんでしょうかねぇ~~♪
 
あぁ~、これだからポール・マッカートニーは天才だと思うばかりです。
 
ちなみに久々のウィングスには新メンバーとしてローレンス・ジュバー(g) とスティーヴ・ホリー(ds)  が入り、プロデュースにもビートルズ所縁のジョージ・マーティンの弟子だったクリス・トーマスが参画しているのも要注意なんですが、クリス・トーマスについては書きたい事が沢山あるので、今日はここまでとさせていただきます。
 
ということで、これで目が覚めたとは思いたくないんですが、ついにポール・マッカートニーは翌年、自己流畢生のニューウェイブ&テクノ必殺曲「Coming Up」を出すという大暴挙も、それがサイケおやじにしても素直に嬉しくなるほど受け入れてしまった前段には、「Goodnight Tonight」という全く素敵な予行演習があったからかもしれません。
 
近年は「ビートルズ」という伝統芸能で我々を楽しませる偉大な天才に、もう一度、この頃の前向きな姿勢を望みたくなるのは偽りのない気持ちです。
コメント
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