■水中花 / 井上忠夫 (キングレコード)

流行歌というジャンルがすっかり曖昧になってしまった現在だからでしょうか、最近は所謂「暗い歌」ってのが流行らなくなった気がしています。
それは例えば飲み屋の有線で流れてくれば、ジャストミートの感傷増幅剤となり、思わず盃を重ねるという行動に結びつく、所謂「パブロフの犬」みたいなものかもしれませんが、暗い世相には暗い歌があり、また景気の良い時期だって、その根底にある諸々の歪みは拭い去れるものではありませんでしたから、必然的に暗い歌を求めてしまうのが人間という生き物の特性なのでしょう……。
本日掲載のシングル盤A面曲「水中花」は、元ブルー・コメッツの井上忠夫が昭和51(1976)年に阿久悠の作詞を得て自作自演した、これが実に物悲しい名曲名唱で、本来はネクラな歌に対し、幾何かの拒絶反応を感じるサイケおやじにしても、某居酒屋の有線で聴いた瞬間、ギュ~~っと心を鷲掴みにされたほどですから、今日までにカバーバージョンが数種類作られ、様々な歌手の持ちネタになっているのも当然が必然かと思うばかりです。
なにしろ、これまで度々書いてきたとおり、サイケおやじは体質的に酒に酔わないもんですから、酒を飲むという行為そのものには積極的になれないんですが、この歌を聴いていると、思わず酒に溺れてみたい心境にさせられるんですねぇ……。
これは皆様にも実際に聴いていただきたいところですが、暗~い歌詞に刹那のメロディもさることながら、井上忠夫の悲痛な絶望を滲ませる節回しの上手さは、まさに作者としての強みを存分に活かしたものでしょう。
前述したカバーバージョンの中では、個人的に木の実ナナのシングルバージョンも好きなんですが、やっぱり井上忠夫のこれを聴いてしまえば、言葉もなく、悄然と感傷に酔ってしまいます。
そうです、酒なんかに酔わなくったって、雰囲気に浸れるのが、歌や音楽を聴く大切な喜びなんでしょうねぇ~~♪
ということで、実は社会人になって5年目の初秋、上司からの特命(?)で別の部署の面々と音楽サークルをやる事になり、もちろん集められた者は歌が上手いとか、喋りが得意とか、サイケおやじのように学生時代にバンドをやっていたのがバレた奴とかだったんですが、そこに集められた我々に演じる事を要求されたのは、所謂軟弱な歌謡フォークばっかりで、サイケおやじは直ぐに嫌気がモロに表出していたと自覚しつつも、ターヘなアコギを弾いていたんですが、同期のリードボーカルが、この「水中花」を歌いたがっていたので、ちょっぴり救われた記憶があります。
うむ、良い歌って、自然に伝播していくんですよねぇ~~~。
そして、この音楽サークルのあれやこれやは、別の機会に書き残しておきたいと思います。