OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

素敵な復刻盤に救われる♪

2007-11-20 16:42:28 | Weblog

中途半端な忙しさほど、始末の悪いものはありませんねっ!

アポ無し、コネ無しで勝手に暴走する者も、若気の至りと決め付けたくはありません。

ということで、本日会心の復刻CDを――

Rolf Ericson And His All American Stars (Fresh Sound)

ロルフ・エリクソンはハードバップ期に活躍したスウェーデンの名手で、シブイ味わいのレコーディングを残していますが、その中でも特に定評のある名演といえば、地元レーベルの「メトロノーム」から3枚のEPとして発売されたセッションでしょう。

そこには本場アメリカの名手達と繰り広げた一期一会のハードバップが、濃密に記録されています。そして後にはアメリカの「エマーシー」からLPに纏められて発売され、名盤扱いとなりますが、直ぐに幻化……。

それが今回、ついにCD化されたのですから、歓喜悶絶♪ リマスターされた音質も迫力があり、さらにボーナストラックも充実という嬉しさです――

1956年5月30日、6月1&4日録音

01 Forecast (1956年5月30日録音)
02 Vacker Ficka (1956年5月30日録音)
03 Visby Groove Alley (1956年6月1日録音)
04 Jordu (1956年6月1日録音)
05 Flight to Jordan (1956年6月4日録音)
06 Medley (1956年6月4日録音)
   I Cover The Waterfront - Laura - Everything Happen To Me
07 This Time The Dream's On Me (1956年6月4日録音)

 メンバーはロルフ・エリクソン(tp)、セシル・ペイン(bs)、デューク・ジョーダン(p)、ジョン・シモンズ(b)、アート・テイラー(ds)  という、真正ハードバップな面々! とにかく全篇が素晴らしすぎる快演ばかりなのは、サイケおやじが断言致します。
 まずデューク・ジョーダンが持ち味全開! ちょっと気分はロンリーなアドリブメロディと力強くて、しかも枯れたピアノタッチ、さらには素晴らしいオリジナル曲の提供と、この人無くしてセッションの成功はありえないと思ってしまいます。
 それとアート・テイラーのシンバルワーク、ハイハットの録音が素晴らしく、これはCD化のリマスターの良さもあって、最高にグッときますねぇ。
 またセシル・ペインのバリトンサックスはソフトでありながら、力むところはフルパワーですから、たまりません。
 肝心のロルフ・エリクソンは歌心優先主義者ですが、かなり黒っぽいアタックやファンキーな雰囲気も侮り難いところです。
 こういう面々が哀愁の泣きメロが魅力の「Forecast」や黒っぽい「Vacker Ficka」、そして凄い勢いの「Visby Groove Alley」で実力を発揮! そして何度聴いても味わい深い「Flight to Jordan」は、ハードバップ天国への直行便です。
 さらにバラードメドレーでは、デューク・ジョーダンとジョン・シモンズの伴奏の上手さ、アレンジの妙、メンバー各人の歌心の素晴らしさに酔い痴れてしまうのです。
 ちなみに御馴染みの「Jordu」は、デューク・ジョーダンがメインとなった短い演奏で、これだけは未LP化でしたから、嬉しい復刻となりました。
 それと最後の「This Time The Dream's On Me」が、ちょっと西海岸風で、ロルフ・エリクソンの趣味に近いのでしょうが、力強いリズム隊の存在が圧巻! 最後にはグイノリのハートバップに仕上がっています。

1956年6月21日録音

08 Forecast
09 You Go To My Head
10 Vacker Ficka
11 A Night In Tunisia

 以上4曲の演奏メンバーは前述と同じですが、「You Go To My Head」ではアーネスティン・アンダーソンがボーカルで参加しており、これが最高♪ もちろん他の3曲もリラックスしてグルーヴィなハードバップの快演を披露しています。
 ちなみに、この音源は以前にも某レーベルから出ていましたが、リマスターが段違いに良いのは、こっちのCDです。音が生々しいんですねぇ~。

1956年6月30日録音

12 Looking For A Boy
13 Lover Man
14 A Foggy Day
15 I Got It Bad
16 Love For Sale

 最後のパートはライブ音源で、メンバーはアーネスティン・アンダーソン(vo)、ロルフ・エリクソン(tp)、ラス・ガリン(bs)、フレディ・レッド(p)、トミー・ポッター(b)、ジョー・ハリス(ds) という、これまた魅惑の組合せ♪ 特にフレディ・レッドを中心としたリズム隊が最高です。歌伴が実に上手いんですねぇ。
 主役のアーネスティン・アンダーソンは黒人の女性歌手で、過不足の無い黒っぽさと洒落た節回しが素敵な人気者♪ ここでは「Lover Man」や「I Got It Bad」あたりのスローな味わいの深さ、また「Love For Sale」での思い切ったビートに対するノリの良さは絶品だと思います。
 気になるロルフ・エリクソンは、ここではイマイチ、存在感が……。
 ちなみにこの音源も、既に発表されていたものですが、ここに纏められることによって楽しみが増えたという気分です。

ということで、とにくか最初のセッションを聴かずに死ねるか! という素晴らしさは保証致します。こういう味わい深いもだんジャズこそが、現代に求められるジャズ者のオアシスではないでしょうか?

また以前ご紹介した「トミー・ポッターズ・ハードファンク」という、同系統のアルバムと共に楽しめば、喜びも倍増♪ あぁ、生きていて良かったというのは、大袈裟ではありません。

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モダンジャズも大衆音楽

2007-11-19 17:46:38 | Weblog

やっぱり雪国ですから、雪でした。風も強かったですねぇ。

当たり前の冬は、これで5年目! 早いもんです。

ということで、本日は――

The Rumproller / Lee Morgan (Blue Note)

人気盤が多いリー・モーガンの作品中、一番人気じゃなかろうか……? と、私が思っているアルバムです。

というよりも、まあ、自分が一番好きなんですけどねぇ。

それは演目の良さ、演奏の素晴らしさに加えて、一緒に封じ込められた時代の勢いを感じてしまうからです。

録音は1965年4月21日ですから、大衆音楽の世界ではビートルズを筆頭にしたブリティッシュビートが全盛でしたし、またアメリカではモータウン系の黒人R&Bが大きなブームとなっていました。

言うまでもなく、ブリティッシュビートは黒人音楽の白人ポップス的な勘違い解釈であり、モータウン産のヒット曲は黒人音楽を白人にも聞き易くしたものですから、つまりは黒人音楽のゴッタ煮状態というのが、当時の実相だったのかもしれないと、私は思っています。

で、このアルバムは、ジャケットデザインからして、サイケポップな歪んだ文字が素敵です♪ そして中身はジャズロックやラテンロック、そして正統派ハードバップが幕の内弁当の様な楽しさ!

メンバーはリー・モーガン(Tp) 以下、ジョー・ヘンダーソン(ts)、ロニー・マシューズ(p)、ビクター・スプロールズ(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) という実力者が揃いました――

A-1 The Rumproller
 日活ニューアクションのサントラのようなカッコ良いテーマ! そこに絡んでグルーヴィなロニー・マシューズのピアノがゴキゲンです♪ もちろんビクター・スプローズのベースはグイノリですし、ビリー・ヒギンズが軽快に敲く擬似ドドンパのロックビートも、たまりません。ちなみに作曲のクレジットは、なんとアンドリュー・ヒル! これにも、たまげますねぇ~~。
 肝心のアドリブパートは、まずリー・モーガンが薬籠中の展開を聞かせれば、ジョー・ヘンダーソンは幾分エキセントリックな音選びも交えての力演です。
 さらにグッと惹きつけられるのが、リズム隊の痛快なグルーヴ♪ ファンキー主義でありながら、ジャズの真髄を追求したロニー・マシューズのピアノ、そしてビンビンブリブリなビクター・スプロールズのベースが最高です。
 おまけに思わせぶりな最終パートが、これまた粋♪ なのでした。

A-2 Desert Moonlight / 月の砂漠
 これこそが、このアルバムの人気の秘密!
 なんと「月の砂漠」をハードバップ化しているんですねぇ~~~♪ ジャズ喫茶では、つい歌ってしまう酔客もいるほどの楽しさですが、もちろん店主はニコニコと黙認なのが、昭和の風景でした。
 もちろんテーマ部分のアレンジも秀逸ですし、リー・モーガンの弾けまくったトランペットを支えるのが、快適なリズム隊のグルーヴです。ビリー・ヒギンズの、なかなか繊細なドラミングも素晴らしいと思います。
 またジョー・ヘンダーソンのクネクネとうねったフレーズの積み重ねも、ここでは効果的ではないでしょうか。というのも、リズム隊が、どこまでもストレートに勝負していますからっ!
 う~ん、それにしてもリー・モーガンは、どこからネタを仕込んだんでせうか……!?

B-1 Eclipso
 これが楽しいラテンロックの名曲・名演です♪
 なにしろリズム隊のノリが最高で、気難しいジョー・ヘンダーソンまでもが、楽しいフレーズ展開に追い込まれているほどです。
 もちろんリー・モーガンは十八番の破天荒節を存分に炸裂させますら、ノー文句で楽しむのが王道かと思います。

B-2 Edda
 一転して、ちょっと厳しいムードも漂うワルツビートのハードバップです。テーマが実にカッコイイ! ちなみに作曲はウェイン・ショーター!
 ですから、ジョー・ヘンダーソンはストレートに気合が入っていますし、リー・モーガンは俺に任せろっ!
 かなり複雑なキメを入れるリズム隊の纏まりも素晴らしく、かなりのスピートの中でバラバラをやっている瞬間も感じられますが、最後にはひとつに纏まっていくバンドの勢いは、モダンジャズ黄金期の輝きでしょうか。

B-3 The Lady
 オーラスはリー・モーガンがミュートでシンミリと奏でるスローバラードの世界です。ジョー・ヘンダーソンが付けるハーモニーも絶妙ですねぇ♪ あぁ、この雰囲気の良さに酔ってしまうのが、ハードバップ王道の素直な愉しみじゃないでしょか。
 リズム隊の繊細にして豪胆なバッキングも素晴らしく、特にロニー・マシューズの歌伴のようなピアノ、ビクター・スプロールズのブンブンベースが最高です。

ということで、最高に楽しいアルバムなんですが、最初の話に戻ってみると、これは黒人ジャズにしては軽くスマートな仕上がりだと思います。つまり聞き易いというのが、本当のところでしょう。

しかし如何にも黒人らしいグルーヴィなノリや弾けるビートは、やっぱり隠しようもありません。そして、こういうアルバムを聴いていると、当時の大衆音楽の充実度に満足してしまうのでした。

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全盛期メッセンジャーズ! お宝映像♪

2007-11-18 16:59:23 | Weblog

暖かな晴天なのに、赴任地の雪国はミゾレ交じりの暴風ということで、車のタイヤを冬用に交換! あぁ、またガソリン食うなあ……。

しかし昨日のネタ仕入れは豊漁でしたから、気持ちが満足しています。

例えば、こんなDVDありました――

Art Blakey's Jazz Messengers Live In San Remo 1963 (impro-jazz)

ジャズメッセンジャーズが最強時代のライブ映像!!!

と、「!」をいくら付けても足りない興奮度が、このブツを見つけた瞬間の私を襲いました。

なにしろメンバーがフレディ・ハバード(tp)、カーティス・フラー(tb)、ウェイン・ショーター(ts)、シダー・ウォルトン(p)、レジー・ワークマン(b)、アート・ブレイキー(ds) という、豪華絢爛な強面揃い!

撮影されたのは1963年3月23日、イタリアはサンレモ音楽祭からのステージです。気になる画質は経年劣化が目立つモノクロで、「A-」というか「B+」程度ですが、出来る限りのリマスターが施してあるので、納得出来ると思います。しかも録音がモノラルながら、なかなかド迫力なんですねぇ~♪ 演目は以下のとおり――

01 Children Of The Night
02 Skylark
03 In The Wee Small Hours Of The Morning
04 That Old Feeling
05 I Don't Know What Time It Was
06 Mosaic

まず美人司会者が登場してのメンバー紹介が、如何にもという感じ♪ ひとりずつ出てくる黄金のメンバー達ですが、この頃は皆が若手というか、イマイチ場慣れしていないところにも好感が持てます。

そして初っ端からウェイン・ショーターが書いた畢生の名曲「Children Of The Night」が、物凄い勢いで演奏されるのですから、たまりません! アドリブを演じる各人の背後にはホーンのハーモニーが付いたり、またレジー・ワークマンの恐いベースやアート・ブレイキーの爆裂ドラミングが襲い掛かってきますから、油断出来ません。

う~ん、それにしても全盛期のカーティス・フラーの映像が観られるなんて、それだけで感動してしまう私です。もちろんウェイン・ショーターやフレディ・ハバードも強烈無比なアドリブを聞かせてくれるのです♪ 堅実なシダー・ウォルトンも大健闘♪

そして2~5曲目までは、メンバー各人の一人舞台的な演奏で、フレディ・ハバード、カーティス・フラー、シダー・ウォルトン、ウェイン・ショーターが順に、いずれ劣らぬ大名演を披露♪ 特にカーティス・フラーのスライドワークが観ても楽しい「In The Wee Small Hours Of The Morning」は味わい深く、またシダー・ウォルトンが演じた「Taht Old Feeling」が大ウケで、これには本人も吃驚というか、アート・ブレイキーも大喜びの笑顔が満願成就というところです。

さらにクライマックスでは「Mosaic」がイケイケの大熱演! スタジオバージョンに比べて大きくテンポアップした爆裂ビートを敲き出すアート・ブレイキーに呼応して、強烈すぎるアドリブの嵐を巻き起こすメンバーの物凄さ! おまけに一瞬も弛まないアート・ブレイキーのアフロなドラムソロ! もはや圧倒的なモダンジャズの地獄が、パックリと口を空けて開きます。あぁ、そこへ進んで堕ちるのがジャズ者の宿命でしょうねぇ……。

時期的には名盤「スリー・ブラインド・マイス(UA)」や「キャラバン(Riverside)」の頃ですから、演奏そのものはモード中心で、各人のアドリブも相等に進歩的なブッ飛びがありますから、必ずしも観客がそれを楽しんでいるとは言えない雰囲気もあるのですが、オーラスの演奏に圧倒された後、皆が納得している表情に共感します。

またメンバーが必要以上に深々とお辞儀をするあたりも印象的! これはマイルス・デイビスのバンドでは絶対に見られないところですから、当時の黒人芸能の本質とか、様々な事情が窺えて興味深いと思います。

ということで、これは必見映像です。カメラワークはシンプルですが、例えばピアノの鍵盤と指の動きをしっかりと映し出したり、ステージでのメンバーの動きも要領良く編集されていて、満足させられるはずです。

ちなみに、このDVDのリージョンは、もちろんフリー♪ 収録時間は約53分で、値段も3千円以下が相場ですから、即ゲットしましょうね。

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ブルースとバッハで朝を迎える

2007-11-17 16:18:53 | Weblog

今日は楽器屋でギターを物色♪

アコギをあれこれと選んで、楽しい一時を過ごしました。

はっきり言って、中年者の溜まり場と化していますねぇ~~♪ フィンガーピッキングの上手い人が多く、普段エレキ派の私は……。

ということで、本日は――

Blues On Bach / The Modern Jazz Quartet (Atlantic)

MJQはバンド名どおり、バリバリのモダンジャズを演奏していますが、そのバックボーンはブルースとクラシックであり、それはミルト・ジャクソンとジョン・ルイスという中心メンバーのルーツでもあろうかと思います。

そうした資質と個性はバンド結成時から、煩いほどに批判と賞賛が入り乱れていたようですが、バンド側としては、それを別に隠そうとかウリにしようとかいう思惑は強くなかったと思われます。

ただ、自然体で、それをやりたかったのでしょう。

しかし、ここで登場したアルバムは、タイトルからしてスバリと本音を吐露しています。「ブルース」と「バッハ」の美しき邂逅♪ 

録音は1973年11月26&27日、メンバーはジョン・ルイス(p,harpsichord)、ミルト・ジャクソン(vib)、パーシー・ヒース(b)、コニー・ケイ(ds)という不動の面々ですが、実はこのセッションに先立つ1972年12月、MJQは特別コンサートの企画として、このアルバム収録曲と同じプログラムを演じていたと言われています――

A-1 Regret ?
 バッハの「コラール前奏曲」を基にジョン・ルイスがアレンジした神聖なスロー曲です。
 まずジョン・ルイスの厳かなハープシコードが響き、ベースが重い存在感を示していますが、アドリブパートは特に無くとも、やはりミルト・ジャクソンのヴァイブラフォンが、一層の魅力を放っています。
 
A-2 Blues In B Flat
 シンプルなテーマ曲からグルーヴィなブルース演奏という、MJQが十八番の展開をたっぷり楽しめます。もちろんその要はミルト・ジャクソンのヴァイブラフォンですが、ベースとドラムスが仕掛けてくるキメとか、ジョン・ルイスの隙間だらけのピアノも侮れません。
 否、むしろミルト・ジャンソン抜きのパートが凄い密度だと思います。そしてそこへ乱入し、自己のベースを掴むべく奮闘するミルト・ジャクソンとバンドのノリが、全く最高なのでした。
 あぁ、こんなグルーヴィなバンドはありませんよっ!

A-3 Rise Up In The Mornig / やさしき朝の光
 元ネタはバッハの「コラール / 目を覚ませと呼ぶ声が聞こえ」ですから、ジョン・ルイスのハープシコードが目覚まし時計のコールに聞こえたりもしますが……。バロックの優雅さを失っていないアレンジは流石だと思います。
 そしてバンド全体のビートの出し方が完全にジャズになっていますから、朝の珈琲も美味いというわけです。

A-4 Blues In A Minor
 再びブルースの世界に戻っていますが、テーマがなんとなく日活アクションのサントラのようでもあり、マイナーの味わいがじっくりと楽しめます。
 あぁ、ミトル・ジャクソンのヴァイブラフォンが素晴らしい! ミディアムのグイノリを醸し出すバンドのグルーヴも、強烈なジャズ魂かと思います。
 またジョン・ルイスのシンプルなフレーズと隙間の芸術、それを埋めてグルーヴを生み出すパーシー・ヒース、さらに自分の役割に撤するコニー・ケイ! これがMJQの魅力でしょうねぇ~♪

B-1 Precious Joy
 バッハの「コラール / 主よ、人の望みの喜びよ」を元ネタにしたジョン・ルイスのオリジナル曲で、聴けば納得の有名なメロディが楽しめます。
 ミルト・ジャクソンのヴァイブラフォンは、こういうものを演じても最高♪ ジョン・ルイスのハープシコードも嫌味がありませんから、私は朝の一発目に聴いていることも♪♪~♪

B-2 Blues In C Minor
 前曲の爽やかさから、一転してマイナーな世界に陥れられる「泣き」の名曲・名演です。
 ジンワリとしたビートの中で、ミルト・ジャクソンが奏でるメロディは、ひとつの無駄も無いアドリブパートも含めて出色! 緩いファンの回転から生み出されるヴァイブラフォンの響きと余韻を読みきったジョン・ルイスの伴奏も凄いですねぇ~♪
 聴いているうちに、身も心も虜になってしまうのでした。

B-3 Don't Stop This Train
 如何にも俗っぽいタイトルですが、元ネタはバッハの「フーガ・二短調 / クラヴィーア小曲集」とされています。
 肝心の演奏はコニー・ケイの早打ちシンバルが列車の走る様を表しているようですし、他の3人がフーガ形式で演奏するテーマメロディの練熟が痛快なのでした。もちろんアドリブパートはありません。

B-4 Blues In H(B)
 そしてミトル・ジャクソンが書いたピートの強いブルースへ!
 もちろんアルバムに収録されたブルースの曲名を繋げると、「B-A-C-H」となる稚気も憎めません♪
 肝心の演奏は手慣れた中にもグルーヴィなハードバップのブルース大会ですが、その中にもジョン・ルイスのクラシックへの憧憬が滲み出ていますから、アルバムの企画意図を逸脱しない目論見がスバリと的中しているのでした。

B-5 Tears From The Children
 これもバッハのパラフレーズなんでしょうが、ちょっと元ネタがわかりません。もちろんジョン・ルイスのハープシコードが全体の色合を決定しているのですが……。

ということで、バッハとブルースが交互に出てくるプログラムは、「あざとい」中にも、深い味わいがあります。

ご存知のようにMJQは、1年後の1974年11月に解散してしまうのですが、それは数年前からメンバー間で合意していながら、巡業スケジュールに縛られていたのが実状という噂もあります。

そしてこのアルバムは、一応は最後のスタジオレコーディングということで、本音とタテマエの真情吐露だったのかもしれません。もしそうだとしたら、ミエミエの企画も憎めないのですが……。

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真説・エレキの若大将!?

2007-11-16 16:58:08 | Weblog

おやじバンドをやるようになってから、毎日、少しずつですがギターに触っています。それをやらないと、指が動かないというよりも、ギターに対する感覚がダメになってしまう気が……。

そんな私の憧れのギタリストのひとりが、このアルバムの主役――

Charlie Christian - Jazz Immortal (Esoteric)

エレキギターを最も有効に使った最初のギタリストは、チャーリー・クリスチャンだと言われています。

1937年頃から愛用していたギブソンのギターが、「チャーリー・クリスチャンのギター」として宣伝されたほどです。

そして地元のオクラホマで活動していたところを興行師のジョン・ハモンドに発見され、1939年にベニー・グッドマンのバンドに入団し、全国区になったのですが、そのギタースタイルは単音弾きのアドリブフレーズとビートに対する新しいノリの革新性でした。

実際、チャーリー・クリスチャンのギターソロは、現代でさえも全く古びておらず、聴くたびにゾクゾクさせられます。

さて、このアルバムはそうしたチャーリー・クリスチャンのギタープレイを存分に楽しめる1枚で、モダンジャズが創成されていく過程が残された歴史的な価値云々を抜きにしても、ジャズが最高! という瞬間がたっぷりと収められています。

それは1941年5月のニューヨーク、ハーレムにあったという「ミントンズ・プレイハウス」で行われたジャムセッションの記録です。参加メンバーは、店の専属リズムセクションだったセロニアス・モンク(p)、ニック・フェントン(b)、ケニー・クラーク(ds) を中心に、チャーリー・クリスチャン(g)、ジョー・ガイ(tp)、ケニー・カーシィ(p)、ドン・バイアス(ts)、タップス・ミラー(ds) ……等々が参加したとされていますが、本当のところは詳らかではありません。

というのも、もちろん正規のレコーディングではなかったのが真相で、実はジェリー・ニューマンという大学生が、改造したディスクレコーダーで録音したものです。つまりテープレコーダーが実用化されていなかった時期の録音なんですねぇ。したがって、コンプリートに残された演奏はありません。

が、これが実に迫力があって、極上の内容です。

当然、最初はSPで発売され、1954年頃にLPとして纏められ、その時に同じジャムセッション録音から、ディジー・ガレスピーを中心とした演奏も収められたようです――

A-1 Swing To Bop (Topsy)
A-2 Stompin' At The Savoy
A-3 Up On Teddy's Hill (Haneysuckle Rose)
B-1 Stardust
B-2 Kerouac
B-3 Stardust
B-4 Guy's Got To Go (I Got Rhythm)
B-5 Lip's Flips

――なんと言っても、A面の3曲が驚異的な素晴らしさ♪ 曲タイトルはレコード発売した時に後付けしたものでしょうが、有名スタンダードを素材にしたジャムセッションの中で、チャーリー・クリスチャンのギターが歌いまくりです! ひとり別世界のドライブ感も強烈! それはレスター・ヤング(ts) のアドリブフレーズをギターに移し変えたという真相があるとはいえ、ビートに対するノリは、明らかにスイングジャズの範疇から逸脱しています。

例えば「Swing To Bop」は、曲テーマは録音されておらず、ほとんどチャーリー・クリスチャンのギターソロが最初から炸裂した演奏ですが、その中には後のモダンジャズギターの原型のみならず、ベンチャーズやチャック・ベリーといったロックギターの雛形フレーズまでも聴かれるのです!

またオフビート感覚のドラミングを披露するケニー・クラークとの息の合い方も最高! あぁ、何度聴いても、興奮させられます。

そして「Stompin' At The Savoy」でのギターソロでは、いきなりレスター・ヤンズの「Lester Leaps In」が出たりしてのネタバラシが潔く、力強いピッキングやコード弾きのアウト感覚も痛快です。

さらに「Up On Teddy's Hill」では、黙々と奥深いフレーズの積み重ねと歪んだギターの音色が、エレキギターの魅力をダイレクトに伝えています。

う~ん、それにしてもネタがあるとはいえ、こんな演奏を即興でやっていたなんてっ!!! 「Guy's Got To Go」でのグイノリには、他のメンバーのグルーヴまでも変わっていく瞬間が記録されています。

ということで、レコード化された演奏には、強引な拍手もダビングされているようですが、基本的に音の悪さと別に、最高のジャズ的な音の強さが、見事に作り出されていると思います。

チャーリー・クリスチャンは残念ながら早世していますが、この録音の他にも、残された演奏は全て聴く価値があるものばかりですから、私は心底、尊敬しています。もちろんコピーしようと目論んだことは何度もありますが、結局は挫折しているのでした。

ちなみに私有盤はジャケットが外盤なのに、中身は日本コロムビアでプレスされた日本盤という、???のブツです。もろちん銀座にあった某中古レコード店でゲットしたんですが……。

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両手に花のトーキョーぶるうす

2007-11-15 16:44:20 | Weblog

ガソリンが、高いなぁ……。

しかし地方で生活していると車は必需品なので、嘆き節も諦めにしかなりませんね。

ということで、本日は――

The Tokyo Blues / Horace Silver (Blue Note)

今でこそ日常的な外タレの来日公演も、1970年代までは、ひとつの大イベントでした。特に外貨が自由にならない時期においては、大袈裟ではなく、国を挙げての歓待という趣さえあったと言われています。

ですから、ほとんどの外タレは、一様に大喜びして日本に対するイメージを良くしているようですし、帰国後には日本への感謝の意を込めて行われたレコーディングセッションも、珍しくありません。

本日の1枚は、その代表格でしょうねぇ。ジャケ写は和服姿の日本美人を両手に花という、心底笑顔のホレス・シルバーが印象的です。

録音は1962年7月13~14日、メンバーはホレス・シルバー(p) をバンマスに、ブルー・ミッチェル(tp)、ジュニア・クック(ts)、ジーン・テイラー(b)、そしてジョン・ハリス(ds) という、この年の正月に敢行された来日公演と同じグループによるものです――

A-1 Too Much Sake
 ちょっとヘヴィなテーマリフから変形ラテンビートのウネリの中を、ジュニア・クックがハードバップから一歩踏み込んだような、実に味わい深いアドリブを聞かせてくれます。背後で炸裂するホレス・シルバーのコード弾きも熱く、またジョン・ハリスのドラムスもクールに弾けていますから、全く不思議な興奮に包まれます。
 それはブルー・ミッチェルとても同じ気分だったのでしょうか、何時もながらの分かり易いフレーズの連発でありながら、リズム隊の恐い絡みがあって、ちょっと異次元に向かっているようです。
 そしてホレス・シルバーが、なかなかに粘っこいです! 得意のリズム的な興奮を煽るような展開から、ジョン・ハリスのピキパキ系のドラミングとグルになったようなグルーヴを発散させていくところは、タイトルどおりの酩酊状態!?

A-2 Sayonaro Blues
 「節」は何時ものホレス・シルバーなんですが、全体に漂う陰鬱な雰囲気は、流石に東洋的なフィーリングがあるように思います。ただし、ありがちな中華メロディではなくて、あくまでもファンキーなところが、たまりません。
 う~ん、こういうネクラにスイングしまくるブルー・ミッチェルも、なかなか良いですねぇ~♪ ジョン・ハリスはスネアとタム、ハイハット主体の珍しいドラミングで「場」を盛り上げます。
 そしてジュニア・クックの思わせぶりなフレーズ展開も、これまた珍しいわけですが、この人が独特の黒っぽい音色に途中から妙なエコーが付けられているのは、何故だっ!? しかしジョン・コルトレーンのスタイルになっていないのは、流石です♪
 肝心のホレス・シルバーはシンプルな音選びと執拗な左手のコード弾きの対称が面白く、あまりのことに辟易する瞬間もあるほどですが……。
 とにかく黒くて脂っこい演奏です。これってハードバップなのか!?
 
B-1 The Tokyo Blues
 これまた変則ラテンビートが弾ける不思議なハードバッブです。重苦しいリフが、一転して開放的になるテーマメロディが??? しかし妙な魅力があるのです。
 そしてアドリブパートでは各メンバーが、それぞれに熱演を繰り広げますが、ジョン・ハリスの激したドラミングが最高! 細かいリズムのリムショットにキメのシンバル! あぁ、こんなに煽られては……。
 ちなみにこれは我国の歌謡曲とは同名異曲ですが、クライマックスの神秘的な響きが、けっこう気に入っているのでした。

B-2 Cherry Blossom
 この曲だけがホレス・シルバーのオリジナルではなく、知る人ぞしるピアニストのロンネル・ブライトが書下ろし♪ ホーンの2人が抜けたトリオでの演奏で、温か味のあるメロディがジンワリと変奏されていきます。
 もちろん中盤では強いビートの「シルバー節」も出ますから、眠くなりません。隠れ名演じゃないでしょうか。

B-3 Ah ! So
 これまた妙な追跡調のテーマなんですが、実はこのアルバムで唯一の正統派4ビートの快演! 豪快なリズム隊の魅力も堪能出来ますし、なによりもジュニア・クックとブルー・ミッチェルがバカノリです♪ 密かに使われているモード手法も、良い感じ♪
 しかしホレス・シルバーは、そんな思惑は一切、おかまいなし! ゴンゴンと熱く迫るピアノの響きは唯一無二の豪胆さだと思います。
 ラストテーマのカッコ良さは、もはや伝説かもしれません。

ということで、変なところで重苦しい演奏ばっかりなんですが、ジョン・ハリスの細かいビートを使ったドラミングが物凄く刺激的です。バンド全体が、このドラマーに支えられ、引っ張られている感じなんですねぇ~~。

今日ではそれほど注目されていない作品かもしれませんが、時代的にもハードバップとモードのゴッタ煮のような、凄い密度の演奏が見事だと思います。

ただし、こういうフォーマットの中では、ブルー・ミッチェルもジュニア・クックも持ち前の歌心を存分に発揮出来ないのが、隠せない事実です。そして2人は、ほどなくバンドを辞めていくのですが……。

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ジャズの赤影

2007-11-14 17:23:35 | Weblog

気のせいか、あるいは本当なのか、今場所の大相撲は気合が入った勝負が多いですね。

しかし客の入りは悲惨なようで……。とてもテレビ放送権料がなければ興行が成り立たないような……。

まあ、こうした時期はどんな業界にもあるわけですし、真摯な姿勢を貫くことしか、今は無いでしょう。もちろん自戒も込めて書いています。

ということで、本日は――

Shades Of Redd / Freddie Red (Blue Note)

フレディ・レッドはピアニストとしてよりも、むしろ作曲家としてのほうが好きです。実際、マイナー系のメロディ展開に冴えを感じさせる名曲を幾つも書いていますし、仄かに暗いピアノタッチやアドリブメロディのクセが、自身の書いた曲にジャストミートしているのは、当たり前ですねぇ。

しかし、そこに強力な助っ人というか、本当に感性が似通った仲間が参加してくれれば、鬼に金棒! それがジャッキー・マクリーンという直情型のアルトサックス奏者ですから、たまりません。

そうした作品としては、有名な麻薬劇「コネクション」の劇伴演奏集が有名ですが、もう1枚、如何にもジャズ的な充実を目的として作られたのが、このアルバムです。

録音は1960年8月13日、メンバーはジャッキー・マクリーン(as)、ティナ・ブルックス(ts)、フレディ・レッド(p)、ポール・チェンバース(b)、ルイス・ヘイズ(ds) という、魅力的な面々です――

A-1 The Thespian
 陰鬱で密度の濃いマイナー調のメロディが、どんよりと2管で演奏されますから、煮詰まってしまいます……。しかし行くところまで行くと、次の瞬間、グイッとテンポが上がり、同じメロディがスピートを付けてビンビンに合奏されていく、この快感!
 アドリブパートではジャッキー・マクリーンが、あの「泣き」の音色でギリギリと吹きまくれば、続くティナ・ブルックスは、ちょっと迷い道ながらもハードバップ王道路線を堅持していきます。
 またフレディ・レッドが、これまたちょっと古めかしいというか、ビバップ丸出しで迫ってくるのが、逆に新鮮♪ そのまんまラストテーマの痛快な合奏に流れてこんでいく美しさは、不滅でしょうねぇ~♪
 ルイス・ヘイズのドラミングもビシバシにキメまくりです。

A-2 Blues - Blues - Blues
 タイトルどおり、ブルース真っ只中のファンキーなハードバップ曲です。あぁ、このグルーヴィな雰囲気が、たまりません♪
 そしてアドリブ先発は、こういうムードは俺に任せろのティナ・ブルックス♪ ふくよかな黒っぽさとでも申しましょうか、けっこうヒステリックなトーンも使いますが、本音はR&Bなのが素敵なところです。
 またジャッキー・マクリーンが、ここでも泣きます。ギスギスした音色も唯一無二の素晴らしさ♪
 さらにフレディ・レッドがテンションの高いマイナー節を全開させれば、ポール・チェンバースは終始、安定感と存在感の強さを発揮! もちろんルイス・ヘイズのドラミングも申し分ありません。
 あぁ、テーマメロディのカッコ良さ!!!

A-3 Shadows
 如何にもフレディ・レッドらしいスローなメロディ展開が、分かる人には中毒症状でしょう。陰鬱な旋律の背後で華麗な気分に浸っているピアニストが、本当に憎めないところです。
 やや不完全燃焼のジャッキー・マクリーンに比べ、ディープな歌心を披露するティナ・ブルックスは、ややジョン・コルトレーンになりかかっていますが、なかなかの名演だと思います。

B-1 Melanie
 これがゴキゲンなハードバップ曲で、つい一緒に口ずさんでしまっても全然OKでしょうねぇ♪ ちょっと複雑なようでいて、実は覚えやすくて印象的なメロディを書くのが、フレディ・レッドの良いところです。
 アドリブパートは、意表をついてポール・チェンバースが先発ですが、グッと引き締まった雰囲気を作り出すことに成功しています。
 それゆえに続くティナ・ブラックスが、これまた緊張感溢れる名演! テーマメロディを上手く変奏していくジャッキー・マクリーンも、良いですねぇ~♪ グイノリのベースを要にしたルイス・ヘイズのオカズとフレディ・レッドの伴奏も秀逸だと思います。
 短いながらもピリリと辛い、グルーヴィな名演です。

B-2 Swift
 一転してアップテンポで弾けるハードバップの名曲・名演!
 猛烈な勢いで突進するジャッキー・マクリーンには、本当に熱くさせられます。モダンジャズの基本を大切にしたリズム隊の存在感も最高♪
 ですからティナ・ブルックスも、些か垂れ流し気味ではありますが、ハードバップの真髄に迫る熱演で、一気に吹き飛ばす潔さ!
 するとフレディ・レッドも全力疾走で応えますから、ド迫力の仕上がりになっているのでした。

B-3 Just A Ballad For My Baby
 またまた陰鬱で哀愁味の強いテーマメロディが、なかなか魅力的です。それを分け合うジャッキー・マクリーンとティナ・ブルックスの協調関係も良好みたいです。
 そしてフレディ・レッドがスローなビートを大切にしたアドリブを聞かせてくれますから、気分はロンリーながら、和みます♪
 個人的には朝の一発目に聞いたりすることもある、清々と哀しい名曲・名演なのでした。

B-4 Ole
 オーラスはキャバレーモードが楽しいラテン調の哀愁曲♪
 いゃ~ぁ、恥ずかしいほどにグッときます♪
 テーマが終わる寸前からズバリと斬り込んで吹きまくるティナ・ブルックスは本領発揮の快演ですし、とくれば、ジャッキー・マクリーンはマイナー節の泣きじゃくりですよっ♪ あぁ、辛抱たまらんです♪ もちろんアドリブパートはグイノリの4ビートになっているんですねぇ♪♪~♪
 またフレディ・レッドも一番「らしい」ピアノを存分に聞かせてくれるのでした。
 う~ん、こんな歌謡曲があったような……♪

ということで、ハードバップの人気者が勢揃いしたアルバムながら、オリジナルはウルトラ級の幻盤でした。ジャズ喫茶でも置いてある店では、看板にしていたんじゃないでしょうか。

現在はCD化もされていますが、タイトルどおり、「赤」に拘ったジャケットは存在感も抜群ですから、ついアナログ盤も欲しくなるのではないでしょうか。

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難しくも新鮮

2007-11-13 16:48:06 | Weblog

実はクリスマス頃のイベントに、おやじバンドして出演することになり、練習に勤しんでいます。

と言っても、バンドメンバーは私も含めて多忙のため、なかなか勢揃いが出来ませんが……。

そんなわけで、本サイト「サイケおやじ館」の更新も滞っている事も、この場を借りて、お詫び申し上げます。

ということで、本日は――

Lush Life / John Coltrane (Prestige)

ジョン・コルトレーンが残した数多いアルバムの中でも、あまり注目されてない作品かもしれません。しかし聴くほどに深い味わいが確かにあります。

内容は3種類のセッションから構成され、まず1957年5月31日の録音はジョン・コルトレーン(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、アルバート・ヒース(ds) という、ワンホーンカルテット(グループA)です。

続くグループBはジョン・コルトレーン(ts)、アール・メイ(b)、そしてアート・テイラー(ds) という珍しいトリオ編成! 録音は1957年8月17日とされています。

そしてグループCがドナルド・バード(tp)、ジョン・コルトレーン(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、ルイス・ヘイズ(ds) というバリバリに凄いメンバーが勢揃い! 録音は1958年1月10日です。

ちなみにこれらのセッションが行われた頃のジョン・コルトレーンは、マイルス・デイビスのバンドをクビになってセロニアス・モンクのバンドに拾われながら、連日のクラブギグで伝説的な成長を遂げた時期と重なっていますから、興味深々――

A-1 Like Someone In Love (1957年8月17日録音 / グループB)
 親しみ易いメロディが魅力のスタンダードですから、モダンジャズでも人気曲♪ それをジョン・コルトレーンがピアノレスのトリオで、どのように演じているのか!? 実際、ワクワクしてきます。
 さらに、もうひとつの楽しみとして、実はこの年の3月にはソニー・ロリンズ(ts) がレイ・ブラウン(b)&シェリー・マン(ds) という名手と組んで「ウエイ・アウト・ウェスト(Contemporary)」という物凄い傑作アルバムを吹き込んでいますから、その影響は?
 しかし結論から言うと、このセッションは最初からトリオ編成を目論んでいたのではなく、予定されていたピアニストがスタジオに現れなかった事によるものだとか……。
 まあ、それはそれとして、ここでのジョン・コルトレーンは無伴奏のイントロからテーマ、そしてアドリブパートからラストのカデンツァまで、クールで熱い素晴らしい演奏を聞かせてくれます。
 落ち着いたベースワークのアール・メイも存在感が強く、さらに的確なサポートに撤するアート・テイラーとのコンビネーションも完璧だと思います。
 ジョン・コルトレーンは激烈な演奏ばかりでなく、歌物バラードにも大いなる魅力を発揮しますが、個人的には特にブレスティッジ時代の朴訥なフィーリングが好きなので、これも気に入っています。けっこうヒネリを入れたりしているんですが、憎めません。

A-2 I Love You (1957年8月17日録音 / グループB)
 ラテンビートを取り入れたイントロ部分から、相等に浮遊感が強いジョン・コルトレーンですが、続いてテーマメロディをしっかりと吹いてくれますから、グッと惹きつけられます。
 もちろんアドリブパートでは十八番の音符過多なフレーズの大洪水! 最初から最後まで、一気に吹きまくるスタイルは後年のアトランティック時代と同様の手法になっていますので、アート・テイラーの存在が、既にして「ジャイアント・ステップス」になっているのでした。Oh! モォ~レッツ!

A-3 Trane's Solw Blues (1957年8月17日録音 / グループB)
 曲そのものは、これまでにも度々演じられてきたジョン・コルトレーンのオリジナルですが、その密度は一層、濃いものになっています。
 まずアール・メイのウォーキングベースとアート・テイラーのシンバルによる落ち着いた4ビートからジョン・コルトレーンが登場すれば、あたりは完全にハードバップです。
 しかもピアノレスによる自由度の高い空間とトリオ3者の緊張感の兼ね合いが絶妙! 烈しいダブルタイムで突進するジョン・コルトレーンにも全く動じないアール・メイは、アドリブに入ってもマイペースですし、アート・テイラーは、そんな手の内は百も承知でビシバシとキメまくりです。
 最終クライマックスでストップタイムが使われるあたりのスリルも、ちょっとしたものだと思います。

B-1 I Hear A Rhapsody (1957年5月31日録音 / グループA)
 快適なテンポで演じられるスタンダード曲のハードバップ的解釈が爽快です。なによりもジョン・コルトレーンの軽い吹奏が、イイ感じ♪ 十八番のフレーズでギクシャクウネウネとアドリブしていく背後では、馴染みのリズム隊が絶妙の合の手を入れてきます。
 あぁ、こういう分かりきったスピード感とか、聞き易さこそが、モダンジャズの魅力のひとつでしょうねぇ。もちろん適度なスリルや刺激は、忘れられていません。
 う~ん、レッド・ガーランドも、良いなぁ~♪ アルバート・ヒースの軽いドラミングも最高です。

B-2 Lush Life (1958年1月10日録音 / グループC)
 ビリー・ストレイホーンが書いた畢生の名曲を、じっくりと演奏していくバンドの練熟した味わいが素晴らしいと思います。
 まず曲のヴァースからメインテーマのメロディをジンワリと丁寧に吹奏していくジョン・コルトレーンの素直な感性! 実は後年、歌手のジョニー・ハートマンの伴奏として同じ曲を演じているのですが、私的にはそこに、やや鼻につくものを感じているので、ここでの直向な姿勢には共感を覚えます。
 それは完成度の高い原曲をフェイクする難しさ、またコードバリエーションの複雑さに対する懸命の頑張りなのかもしれません。
 レッド・ガーランドにしても、スタンダード曲を自己流に解釈していく何時もの手慣れた感じがありません。それでも全体にゴージャスな雰囲気を醸し出していくところは流石でしょうか。
 そしてドナルド・バードの些かノーテンキな雰囲気が、これまた憎めません♪ 朗々と意味不明なフレーズを滑らかに吹奏していく潔さ! 実は全篇に漂う難しい雰囲気が、これで緩和されていると思うのでした。

ということで、正直なところ、完全に取っ付き難いアルバムです。人気が無いのムベなるかな……。しかし、ある日突然、急に聴きたくなるのも、また事実なんですねぇ、私だけかもしれませんが……。

そして聴く度に、なんとなく新鮮な気分にさせられるというわけです。

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B面聴かなきゃ、勿体無い!

2007-11-12 17:02:17 | Weblog

雷、局地的豪雨、さらに霰まで降ってきました。いよいよ雪国の冬が到来ですか……。

ということで、本日はジンワリと暖かい、これを――

Ray Bryant Trio (Prestige)

レイ・ブライアントは、洒落たセンスと気品、そして黒っぽさを兼ね備えたモダンジャズピアノの第一人者として、言わずもがなの実力者! 

そしてこれは、ジャズ入門のガイド本とかピアノトリオの名盤選には必ず入る人気アルバムなんですが、それゆえに、ちょいと軽く聴かれているのではないでしょうか?

その原因は演目が分かり易い、易過ぎる所為かもしれません。

しかし、やっぱり聴く度に、とても魅力的なアルバムだと思ってしまうのですねぇ~♪

録音は1957年4月5日、メンバーはレイ・ブライアント(p) 以下、アイク・アイザックス(b)、スペックス・ライト(ds) という当時のレギュラートリオで、カーメン・マクレエ(vo) の伴奏もやっていた時期の演奏ですから、纏りも最高です――

A-1 Golden Earrings
 ジプシー民謡を原曲として、サラサーテの「チゴイネルワイゼン」となったメロディを、さらにビクター・ヤングがパクッてポップスに仕立てたマイナー調の名曲ですから、どこかで聞いたことのある親しみやすさに、まず酔わされます。
 もちろんレイ・ブライアントの小粋な解釈は抜群ですからねぇ~♪ 適度な湿っぽさが黒いフィーリングに繋がって、このアルバムではキメの存在としてド頭に置かれたのでしょう。
 実際、なんだかんだと言っても、聴いていてシビレる他は無い演奏だと思います。

A-2 Angel Eyes
 今やビアノトリオ物では必須の人気曲ながら、原盤裏解説によると、今まであまり演奏されたことが無い云々……!
 う~ん、すると……。
 ちなみにここでのレイ・ブライアントは、原曲の持つ仄かに暗いムードをエレガントなピアノタッチで表現したソロピアノ♪ ほとんどテーマメロディの変奏が秀逸です。

A-3 Blues Changes
 そして前曲のイメージを受け継いだかのようなレイ・ブライアントのイントロから、グイノリのベースと引き締まったブラシが入ってくる、これも「泣き」が素敵な名曲・名演です。
 もちろんこれはレイ・ブライアントのオリジナルで、マイルス・デイビスのアルバム「マイルス・デイビス&ミルト・ジャクソン(Prestige)」でも既に演じられたわけですが、ここでは作者自身のピアノトリオのバージョンとあって、一層と進んだ解釈が気に入っています。

A-4 Splittin'
 冒頭からの3連発がジンワリと強烈な印象でしたから、ちょっと???の演奏なんですが、アップテンポでビシバシにキメた、なかなかの仕上がりだと思います。
 力強いタッチでコロコロとスイングするレイ・ブライアントには、モダンジャズの魅力がいっぱい♪ スペックス・ライトのブラシも最高だと思います。

B-1 Django
 ジョン・ルイスの作曲、そしてMJQの演奏で有名なモダンジャズのスタンダードですから、レイ・ブライアントもオリジナルのイメージを大切にした、全く素直な解釈で好感が持てます。
 もちろんアドリブパートでは、あくまでも自己の表現に拘っていますが、やはり聴き手の期待に応えようとする姿勢があり、また、それが嫌味ギリギリの上手さになっているような……。
 まあ、このあたりが名曲カバーの難しさであり、楽しさなんでしょうねぇ。 

B-2 The Thrill Is Gone
 歌物スタンダードを素材にしたスローな演奏で、多分、このアルバムの中では最高の出来栄えじゃないでしょうか!?
 まずレイ・ブライアントがソロピアノで、じっくりとメロディを熟成させ、ドラムスとベースを呼び込んでからは、珠玉のアドリブメロディが、これでもかと弾き出されていきます。
 あぁ、このエレガントな忍び泣きには、心が幾様にも震えてしまいます。
 そして私は、この演奏を聴いて、このアルバムを買った喜びに浸りました。だって、ジャズ喫茶じゃ、A面しか鳴りませんからねぇ。スバリ、素晴らしい!
 
B-3 Daahoud
 クリフォード・ブラウンが書いた心地良いハードバップ曲が、ここでもレイ・ブライアントならではの柔らかな解釈で披露されています。
 快適なビートと巧みなメロディ展開を強調するトリオ全体のグルーヴは、もう最高の極みなんですが、決して力任せでないところが、逆に凄いと思います。

B-4 Sonar
 オーラスも軽くて楽しい演奏で、レイ・ブライアントのメロディフェイクの上手さが存分に楽しめます♪
 このあたりは当時主流のハードバッパーとは、明らかに一線を隔した存在感で、もちろんゴリゴリで真っ黒なブギー系の演奏も十八番だったレイ・ブライアントではありますが、実はオスカー・ピータソンにも通じるジャズピアノの真髄が持ち味なのだと思います。

ということで、圧倒的な人気のA面が故に、これほど聞かれていないB面も無いだろうというアルバムです。

もちろん魅惑の「Golden Earrings」や、泣きの「Angel Eyes」は最高だと思います。当に日本人好みというか、今では当たり前の日本製作のピアノトリオ盤は、これをお手本にしているのか!?

という疑惑も浮上する名盤だと思います。でもジャズ喫茶でB面をリクエストすると……。とにかく「The Thrill Is Gone」が最高♪

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マイルスはカッコイイ!

2007-11-11 17:44:25 | Miles Davis

早朝から仕事の連絡とか、全然、和めない日曜日でした。ケイタイなんか発明した奴を怨みた~い!

ということで、ジャズの基本的な素晴らしさを感じる、これを――

Miles Davis In Europe (Columbia)

トランペッターはカッコイイ!

それはジャズの花形プレイヤーですから、まあ、当たり前なんでしょうが、そのスタイルのカッコ良さを知らしめてくれたのが、このマイルス・デイビスのアルバムでした。

とにかくビシッとキメたスーツ姿のマイルス・デイビスが、スポットライトを浴びながら、体を反らせてトランペットを鳴らす、そのクールなカッコ良さ!

このジャケットを見たのは、まだロクにジャズも聴いていない時期の私でしたが、当にモダンジャズのカッコ良さだと直感させられたんですねぇ~♪

内容はタイトルどおり、マイルス・デイビスが正統派4ビートの素晴らしいバンドを率いて演じたライブ盤です。

録音は1963年7月27日、フランスのアンチーヴジャズ祭での音源で、メンバーはマイルス・デイビス(tp)、ジョージ・コールマン(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウイリアムス(ds)という、言わずもがなの面々です――

A-1 Introduction
 当然ながらフランス語によるバンド紹介ですから、エルビアン・クックがピアノなんですねぇ~。思わずニンマリです。

A-2 Autumn Leaves
 皆が大好き♪ マイルス・デイビスが十八番のスタンダードですが、原曲はもちろんフランスのシャンソンですから、二重の大サービスを狙ったんでしょうか? これにもニンマリです。
 マイルス・デイビスはミュートで、思わせぶりなメロディフェイクの至芸を披露していますが、絡みつくようなロン・カーターのベースを筆頭に、暗黙の了解に満ちたリズム隊が素晴らしいですから、緊張感に満ちた展開にはゾクゾクしてきます。トニー・ウイリアムスのブラシも実に良いですねぇ~♪
 そして演奏が盛り上がったところで登場するのが、ジョージ・コールマンというわけですが、その刹那に激を飛ばすトニー・ウイリアムスのシンバル&タムが、若造の憎たらしさで最高! もちろんビートはグイノリに変化していますから、ジョージ・コールマンも全く油断出来ない雰囲気で熱いフレーズを迸らせるのです。
 またハービー・ハンコックも熱演で、分かり易いフレーズで真っ向勝負の姿勢は潔いかぎり! もちろん個性は充分に発揮しています。う~ん、トニー・ウイリアムスが小賢しいぞっ!
 するとマイルス・デイビスが抽象的なイメージでラストテーマを入れてきますから、もはや辛抱たまらんの世界なのでした。

A-3 Milestones
 猛烈なスピートで突入するテーマのカッコ良さに、ウォ~~! と反応する観客の雰囲気が最高♪ マイルス・デイビスは徹底的に突進する姿勢ですから、リズム隊も懸命です。
 またジョージ・コールマンが流れて止まらないという恐ろしさで、リズム隊を圧倒していくのも凄いところです。
 このあたりは、まだまだ発展途上だったトニー・ウイリアムスの未熟さといえばミもフタもありませんが、それでも強烈なアクセントとツッコミで反撃する場面が多々あって、熱くさせられます。
 そしてハービー・ハンコックのアドリブパートも激烈というか、やはり当時のトップバンドだった新しい勢いが見事だと思います。

A-4 Joshua
 当時のマイルス・デイビスにとっては新しい演目でしたから、緊張感が感じられるのは当然でしょうか。アドリブそのものは幾つかのキメのフレーズを中心にした単調なものですが、リズム隊のシャープな斬り込みを活かした組み立てになっているみたいですから、スリル満点です。
 ジョージ・コールマンも演奏スピードの強弱を使って新しい世界を構築していきますが、ここでもリズム隊の動きは俊敏! 共謀して圧倒的な成果を上げています。
 う~ん、はっきりとわかるテープ編集が……。

B-1 All Of You
 またまたミュートを使ってマイルス・デイビスが安らぎを作り出していきますが、背後で蠢くリズム隊に耳が行くのも、また事実です。デリケートな表現が素晴らしいマイルス・デイビスに寄添うロン・カーター、些か無神経にビシバシとキメるトニー・ウイリアムス、その両者を取持つハービー・ハンコック♪
 いゃ~、ジャズって本当に良いですねぇ~~~♪

B-2 Walkin'
 オーラスは激烈モードのブルース大会なんですが、このメンツですから全力疾走は、お約束です。特にマイルス・デイビスは例によって一本調子のフレーズ展開が、ここでは良い方向に作用して、トニー・ウイリアムスの大暴れを誘います♪
 しかしジョージ・コールマンが、些か苦しんでいます。まあ、この人の個性は、モヤモヤ展開の中にハッとするほど良い感じのフレーズを炸裂させるところですから、結果オーライなんですが……。
 またハービー・ハンコックは可もなし、不可もなし……。というよりも録音の状態がイマイチなんで、キレの良いアドリブ展開が勿体無いなぁ~。
 ちなみにこの演奏もテープ編集が施されています。

ということで、音源は元々、放送用に録られたものかと思います。所有盤はモノラル仕様なので、ステレオバージョンのミックスとかはご容赦願いたいのですが、テープ編集が施されているのがミエミエでした。

ところが近年、完全版がCDで出ているらしく、また演目が追加されたボックス物もあるというので、物欲に悩まされています。きっと音質も改善されているんだろうなぁ~。

まあ、それはそれとしてフランス国旗をイメージさせるジャケットデザインも素敵ですし、演奏の充実度というか、まだまだ発展途上にあったバンドの勢いが存分に楽しめる作品だと思います。

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