OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

シングルバージョンが最高

2008-03-21 18:06:08 | Weblog

今日はヌカ喜びの連続……。褌とアテは向うから外れるというやつです。

そんなことに期待していた自分も哀しいですね。

ということで、本日は――

Roundabout / Yes (Atlantic)

大衆音楽の中でも飛びぬけて技巧に優れた集団が、所謂プログレパンドのイエスでしょう。

その音楽性はクラシックも現代音楽もジャズもロックもゴッタ煮でありながら、極めて明快な曲想と澄み切った演奏が人気の秘密でしょうか。

当然、製作されるアルバムは大作志向であり、反面、シングルヒットも狙えるキャッチーなメロディやリフと仕掛けの大サービス♪ それを超絶のテクニックで聞かせるのですから、レコードもライブもほとんど同等のレベルで楽しめるという恐さがあります。

さて、このシングル曲はイエスが人気を決定的にした名作アルバム「こわれもの:Fragile」の冒頭に収められていた名曲の編集バージョンで、オリジナル演奏の良いところばかりを凝縮・再構成した美味しい1曲♪

イントロの生ギターが爽やかに響いた次の瞬間、眩暈がしそうなエレキベースの猛烈なリフと重くてシャープなドラムスが入って、透明感に満ちたボーカルが♪ という展開は極めてメロディアスで、しかもロックの迫力が表出しています。

あぁ、初めてこれを聴いたのは高校生の時、ラジオの深夜放送から流れてきた途端にシビレたのが、昨日の出来事のようです。

そしてその時の印象は、ザ・フーとキング・クリムゾンのミックスと思えたのですが、それよりもずっと洗練されたカッコ良さを感じましたですね。実際、ビル・ブラッフォードのドラミングなんか計算されたヤケッパチみたいなところもありますし、スティーヴ・ハウのギターは正確無比、さらにリック・ウェイクマンのキーボードはクラシックとジャズの奇妙な融合とはいえ、全体の纏まりは完璧!

で、早速、このシングル盤を買ったわけですが、つまりアルバムはお金が無くて買えなかったというのが、結果オーライとなるのです。

それは後にアルバムバージョンを聴いた時の冗漫な雰囲気に??? という気持ちが抑えきれず、それゆえにイエスをイマイチ好きになれないと……。

はっはっはっ、まあ、そういう事です。シングル盤、万歳!

ところで、このバージョンってCD化されているんでしょうか? ベスト盤なんかでも、アルバムバージョンが優先されているみたいですが……。

イエスを聞くなら、まず、このシングルバージョンだと思いますよ。

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ゴルソンハーモニー対ジョンルイス

2008-03-20 16:18:53 | Weblog

映画「2001年宇宙の旅」の原作者として有名なSF作家のクラークが亡くなりました。合掌。

現在、2008年の世界では、宇宙ステーション建設の真っ最中ということで、やや現実は遅れていますが、映画の中のテレビ電話も実用化されましたし、ブーメランは無重力でも戻ってくるし♪

あとは美味しい宇宙食と謎の物体の出現を待つばかりでしょうか。

ということで、本日は――

The Jazztet And John Lewis (Argo)


アート・ファーマーとベニー・ゴルソンが組んでいたジャズテットといえば、ベニー・ゴルソンのアレンジによる所謂ゴルソンハーモニーがウリのソフトファンキーなバンドでしたが、このアルバムは全篇がMJQのジョン・ルイスが作編曲した異色作!

いったいどういう心境で製作されのかは知りませんが、結論から言うと、ジャズテットにしてはちょいと煮え切らないのが第一印象です。しかし聴くほどにジンワリとしたジャズフィーリングが染み込んでくるという隠れ名盤として、私は愛聴しています。

もちろん、特有のソフトファンキーは健在♪

録音は1960年12月21~22日と1961年1月9日で、メンバーはアート・ファーマー(tp)、ベニー・ゴルソン(ts)、トム・マッキントッシュ(tb)、シダー・ウォルトン(p)、トーマス・ウィリアムス(b)、アルバート・ヒース(ds)、そしてジョン・ルイスが作編曲を提供しています――

A-1 Bel
 いきなり不協和音が全面に出てきて不安感がいっぱいに広がるんですが、キメは見事なジャズテット節で、アドリブに入った瞬間、アート・ファーマーが奇跡の名フレーズを聞かせてくれます♪ もちろんそれからは独特のソフトファンキーな世界が展開され、ベニー・ゴルソンのモリモリ節やビシッと引き締まったリズム隊の好サポートも見事!
 このアルバムの中では一番ストレートな演奏で、トム・マッキントッシュのトロンボーンは楽しさの塊ですし、ミョウチキリンなアンサンブルを経て登場するシダー・ウォルトンがトミー・フラナガンっぽいのには、思わずニンマリですよ。

A-2 Milano
 MJQは名盤「ジャンゴ(Prestige)」で演じていた印象深い名曲が、ここではなかなか力強く解釈されています。
 まず最初はシダー・ウォルトンのピアノが当然ながらジョン・ルイスっぽく、バンドアンサンブルは些か硬いものの、アート・ファーマーとベニー・ゴルソンの吹奏からは哀愁のハードバップがモロ出し♪ トム・マッキントッシュのホンワカしたトロンボーンも実に良い味わいです。

A-3 Django
 ジョン・ルイスとMJQにとっては代表的な名曲ですから、このジャズテットのバージョンはアップテンポのツッコミ鋭いアレンジが、最初は馴染めない雰囲気です。
 しかしアドリブパートの強引さは圧巻で、ブリブリ突進するベニー・ゴルソン、そこに絡みながら自分を曲げないアート・ファーマー、大ハッスルのシダー・ウォルトン、爆裂のトム・マッキントッシュと好演が続出します。
 ただしこれなんか、別にジャズテットが演奏する意義をあまり感じないという弱点が……。

A-4 New Youk 19
 如何にもジョン・ルイスらしい、心に染入る名曲です。
 MJQの演奏は、このセッションの後に作られた名盤「ロンリーウーマン(Atlantic)」に入っていますので、聞き比べも楽しいところですが、こちらはベニー・ゴルソンが畢生の名演を聞かせてくれますよ。

B-1 2 Degrees East, 3 Degrees West
 ジョン・ルイスがジム・ホール(g) やビル・パーキンス(ts) という西海岸派の名手と吹き込んだウルトラ名盤「グランド・エンカウンター(Paciffic Jazz)」に収録されていた静謐なブルースが、ここでは似て非なる無機質なハードボイルド感覚で演奏されます。
 テーマメロディをリードするアート・ファーマー&ベニー・ゴルソンの2管の響きが良い感じ♪ 続くトーマス・ウィリアムスのベースソロも秀逸ですし、シダー・ウォルトンがジョン・ルイスを演じてしまうのはご愛嬌♪♪~♪ ただしバックのアンサンブルが些かミスマッチと感じます。
 それでもアート・ファーマーの抑制されたファンキーフィーリングは最高ですし、演奏が進むにつれて力強いグルーヴを打ち出していくリズム隊が、なかなかたまりません。
 一方、ベニー・ゴルソンはサブトーンというか、あのモゴモゴした音色でエキセントリックなフレーズも交えたブルースマーチ節で健闘しています。またトム・マッキントッシュなんか調子が出ないのを逆手にとったオトボケを通すのでした。

B-2 Odds Against Tomorrow
 これは映画「拳銃の報酬」のサントラとして有名で、MJQのバージョンも味わい深い名演でしたが、この演奏も暗い情念を哀愁で煮〆たような絶妙の展開になっています。特にテーマメロディのアンサンブルがシブイですねぇ~。
 しかしアドリブパートに入ると一転して普通のハードバップになってしまうんですよ……。もちろんアート・ファーマーは見事な歌心を披露し、ベニー・ゴルソンは熱血のグイノリ、トム・マッキントッシュはノーテンキ、ビシバシのリズム隊も気持ち良いのですが……。
 正直、これもジャズテットとしての意義が不足していると思うのでした。

ということで、明らかな異色作です。ジャズテットに期待するファンキーで暖かい演奏が、些か不足しているかもしれません。

しかし不思議な味わいが確かにあるんですよ。

例えばホヤ貝とか高野豆腐とか、クセがあるのに好きな人にはたまらないという感じでしょうか。ちなみに私はホヤ貝が大好き♪ だからこのアルパムも好きとは言いませんが……。

ある日、何かのきっかけで、突然に聞きたくなる1枚です。

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芳醇ピアノトリオ

2008-03-19 18:11:46 | Weblog

あまり怒りたくはないけれど、つまらんミスを連発する若い者の弛みが気になった1日でした。

まあ、気合だけで仕事が上手くいくとは限りませんが、それでも、ねぇ……。

ということで、本日は――

The Ralph Sharon Trio (Bethlehem)

名盤が多いピアノトリオ物の中にあって、ハイセンスでリラックスした味わいが極みつきの1枚です。

主役のラルフ・シャロンはロンドン生まれのイギリス人で、もちろん母国でもバリバリのジャズピアニストとして活躍し、リーダー録音も残していますが、やはり有名になったのは渡米してからでしょう。特にトニー・ベネットの伴奏者としては大いに名をあげています。

このアルバムは、そういう注目度が高まっていた1956年のセッションですから、悪いわけがありません。メンバーはラルフ・シャロン(p)、ジェイ・ケイヴ(b)、クリスティ・フェッボ(ds) という、些か地味な人選ながら、これが非常にセンスの良い演奏ばかり――

A-1 Don't Be That Way
A-2 Give Me The Simple Life
A-3 I Didn't Know What Time It Was
A-4 I'm Glad There Is You
A-5 I'm Beginning To See The Light
B-1 They Can't Take That Away From Me
B-2 Steeple-Chase
B-3 Angel Eyes
B-4 You Stepped Out Of A Dream
B-5 Bluz For Suz

――という演目は有名曲をメインに滋味豊か♪ こういうところにもラルフ・シャロンの洒落たセンスが滲み出ていると思います。もちろん演奏は極上! クールで熱いジャズ魂と和みのフィーリングが満喫出来ます。

まずド頭の「Don't Be That Way」が自然体の快演で味わい深く、続く「Give Me The Simple Life」では溌剌とした歌心とシャープなピアノタッチにシビレます♪

スロー物では、あまりにもベタな「Angel Eyes」が逆に憎めませんし、「I'm Glad There Is You」でのシンプルな歌心は絶品だと思います。う~ん、そこはかとない……。

そしてスローからダイナミックに盛り上げて、非常に上手い展開を聞かせるのが「I Didn't Know What Time It Was」です。膨らみがあって力強いピアノタッチ、素敵なコード選び、トリオの一体感が見事の一言で、実にグルーヴィな味わいまでも楽しめるのです。

また早いテンポの「You Stepped Out Of A Dream」は爽快にして、刺激的! ビバップを上品に解釈していながらファンキーな味わいを聞かせる「Steeple-Chase」も名演だと思います。自作の「Bluz For Suz」も良い感じ♪

ということで、一時は幻化していたアルバムでしたが、内容の良さから我国では頻々に再発されていますので、入手は容易でしょう。それだけ売れているというわけです。

しかしこのアルバムはラルフ・シャロンの氷山の一角! 近年では作曲家別のソングブックっぽいアルバムを何枚も出していますし、モダンジャズ全盛期にはテディ・チャールズ(vib) やチャールズ・ミンガス(b) 周辺の硬派なメンツと厳しいセッションも残しています。

そしてトニー・ベネットとの共演作品では歌伴の真髄が堪能出来ます。もちろん他の歌手のバックも務めた録音も残されていて、全てが聞き逃せないものばかり♪

ただし、そのあたりに拘ると素晴らしきジャズ地獄に堕ちる恐さか……。

ゆえにこのアルバムを骨までしゃぶりつくすのが、まずは王道だと思います。聴くほどに、実に素敵なアルバムなんですよっ♪

地味ながら名手の本領を発揮するドラムス&ベースも凄いです。

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ベンソン料理帳

2008-03-18 15:57:16 | Weblog

連日のポカポカ陽気で、今日の昼飯には早々と冷やし中華を食べてしまったです。

いや、なにより驚愕したのは、こんな時期にメニューに入れている店の根性! 美しいですね。

ということで――

The George Benson Cookbook (Columbia)

1976年に出した「ブリージン」のメガヒットで、一躍トップスタアとなったジョージ・ベンソンが、その10年前に出していたリーダー盤です。もちろん、この頃はジャズギタリストとしての持ち味が強く出た作風ながら、ウェス・モンゴメリーの再来としての位置付けというか、かなりポップなソウルジャズとかボーカリストとしての才能も聞かせる内容になっています。

なによりもメジャーなコロムビアと契約していたところが、スタア性の証でしょうか。

録音は1966年8~10月、メンバーはジョージ・ベンソン(g,vo)、ロニー・スミス(org)、マリオン・ブッカー(b)、ジミー・ラブレス(ds)、ロニー・キュー(bs)、そしてベニー・グリーン(tb) という、なかなか興味津々の顔ぶれです――

A-1 The Cooker
 いきなりテンションの高いリフがギターとバリトンサックスのユニゾンで演じられますが、このテーマが高速4ビートでジョージ・ベンソンのアドリブフレーズに直結する物凄さです。いやはや、全く奔放、ワイルドにして緻密なギターソロは圧巻! ウェス・モンゴメリーに加えてグラント・グリーンの影響がモロ出しなのも嬉しいですねぇ♪
 演奏は中間部で緊張感の強いブレイクやバリトンサックスとのユニゾンリフいう仕掛けもあり、ジミー・ラブレスのドラミングも白熱化して悶絶の連続です。
 ちなみにロニー・キューバのバリトンサックスは、スピード感とアタックの強さを両立させた優れもの♪ 白人らしいスマートさもありながら、新時代のジャズを強く感じさせてくれます。

A-2 Benny's Back
 前曲の続篇のようなジョージ・ベンソンのオリジナル曲で、仕掛けの多いユニゾンリフをすりぬけて吹きまくるベニー・グリーンのオトボケトロンボーン、そしてシャープなロニー・キューバのバリトンサックスが大暴れします。
 またロニー・スミスのオルガンも待ってましたの出番で荒れ狂い、もちろんジョージ・ベンソンのグイノリのギターソロには唖然とさせられます。基本に忠実な伴奏のコード弾きも味わい深いですよ。
 う~ん、それにしても猛烈なスピード♪ 小川ローザの世界ですね。

A-3 Bossa Rocka
 タイトルどおり、真性ボサロックという和みの演奏です。
 ジョージ・ベンソンのギターはウェス・モンゴメリーに比べると、些かの硬さがありますが、自身が作曲した魅惑のテーマメロディを上手く展開させていくのは流石♪ ロニー・スミスのオルガンも涼やかですし、ジミー・ラブレスのドラミングがイナタイ味わいで、たまりません。
 正体不明のタンブリンも良いアクセントになっていますね。

A-4 All Of Me
 有名スタンダードを遠慮なく、ノーテンキに歌うジョージ・ベンソン!
 強いアクセントが付いたアップテンポの4ビートは抜群のノリで、ロニー・キューバの豪快なバリトンサックス、心地良いギターのコードワーク、さらに自分が一番楽しんでいるジョージ・ベンソンのボーカルは、本当に憎めませんね。

A-5 Farm Boy
 これまたノーテンキなソウルジャズ♪ ミニスカお姉ちゃん達のゴーゴーダンスが目に浮かんでくるような楽しさです。
 ジョージ・ベンソンのアドリブはちょっと過激なフレーズも弾いていますが、むしろ伴奏でのコードワークが最高♪ キューバ&スミスのダブルロニーも浮かれた調子ですし、ジミー・ラブレスのイモ寸前ドラミングが強烈な存在感!
 まさに1960年代後半というか、昭和40年代前半の雰囲気がムンムンして、私のような者には何時までも聴いていたい演奏です。

B-1 Benson's Rider
 これもボサロックでファンキーを演じたようなアクの強い名演です。
 ただし演奏全体が、些かねじれたようなノリですから、好き嫌いがあるかもしれません。はっきり言えば、バラバラ寸前のところさえあります。
 しかしジョージ・ベンソンのギターソロは硬派ですし、手抜きはいっさい無し! さらにロニー・スミスのオルガンがイナタイ味わいで、けっこう泣けてきます。ジョージ・ベンソンのギターが上手い合の手と絡みで、これも飽きませんね。
 う~ん、ちょいとゾクゾクしてきました。

B-2 Bayou
 またまた高速4ビートの正統派ジャズ路線という猛烈な演奏です。
 痛快なテーマアンサンブルに続いて飛び出すロニー・キューバのバリトンサックスがツッコミ鋭く、どうにもとまらないという山本リンダ現象! するとジョージ・ベンソンも指が勝手に動いてしまったようなアブナイ雰囲気で、凄まじいフレーズの嵐を聞かせてくれます。ピッキングも神業だと思います。
 しかし、正直、疲れます……。

B-3 The Borgia Stick
 ちょっとジャズクルセダーズが演じそうなソウル色が強い新主流派のテーマが新鮮なところですから、ジョージ・ベンソンのアドリブも極めて真っ当な世界を追求しています。
 それが物足りなくもあり、逆に凄いところなのかもしれませんが……。
 重苦しいアレンジが裏目に出たような……。

B-4 Return Of The Podigal Son
 これは私の大好きな演奏で、曲はフレディ・ハバードもやっている日活モードのジャズロック♪ このテーマメロディとグルーヴは、モロに昭和40年代前半の味わいですよ♪ あぁ、何度聴いても、グッとシビレます。思わず、ピーコック・ベイビィ~♪ と歌ってしまいそうですね。
 ジョージ・ベンソンのアドリブも感情的な部分と歌うメロディのバランスが素晴らしく、リズム隊のドC調な雰囲気がズバリ、素晴らしい名演の秘密ですねっ♪ わずか2分半ほどのトラックですが、それが逆に最高だと思います。

B-5 Jumpin' With Symphony Sid
 オーラスはビバップ時代から演奏されている隠れ名曲♪ 高名な司会者にして興行師でもあったシンフォニー・シッドに捧げてレスター・ヤングが書いた楽しいリフ曲ですから、快適なリズム隊にノセられて、まずはベニー・グリーンがホンワカしたトロンボーンを存分に聞かせてくれます。
 そしてジョージ・ベンソンが4ビートの楽しさを追求すれば、ロニー・キューバはビバッブ丸出しの潔さ! ロニー・スミスもそれに追従すれば、今度はホーン陣がバックからは味わい深いリフを被せてくるという王道路線が楽しいところです。

ということで、楽しい演奏がぎっしりなんですが、些かプロデュースがとっ散らかった按配で、アルバム全体に統一感が不足している感じです。しかしそれだけバラエティ……。

個人的には「Farm Boy」とか「Return Of The Podigal Son」のような演奏をメインにして欲しかったですねぇ。

とはいえ、やっぱりジョージ・ベンソンは凄いです。アドリブソロも強烈ですが、バッキングの楽しさ、エグサ、そして上手さには感動を覚えます。

そして車の中でも聴きたいので、CDが欲しい1枚ですね。

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ホレス・パーランと兄弟仁義

2008-03-17 17:56:06 | Weblog

実に暖かな日が続いていますね。

しかし世の中は、お金の話、政治の話題、悪法の噂が蔓延して……。

こういう時には、スカッとこれを――

On The Spur Of The Moment / Horace Parlan (Blue Note)

ホレス・パーランの代表盤といえば「アス・スリー(Blue Note)」と決まっているけれど、この2管クインテット盤も正統派ハードバップの傑作として私は愛聴しています。

録音は1961年3月18日、メンバーはトミー・タレンタイン(tp)、スタンリー・タレンタイン(ts)、ホレス・パーラン(p)、ジョージ・タッカー(b)、アル・ヘアウッド(ds) というアクの強い5人組! 時期的にはハードバップから一歩進んだモード手法も取り入れていますが、しかし根底にあるドロドロとした黒い情念を爽快なアドリブの応酬に転化させた名曲・名演ばかりです――

A-1 On The Spur Of The Moment
 ホレス・パーランが書いた調子の良いブルースで、独特のスピード感とグルーヴィな味わいを醸し出すリズム隊に煽られ、フロントのタレンタイン兄弟が快演を披露します。
 まずトミー・タレンタインが人見知りするような最初の音出し、続いて流麗なフレーズを連ねていくところにゾクゾクさせられます。また全く独自のノリが楽しいホレス・パーランのピアノからは黒い魂が発散され、続くスタンリー・タレンタインの豪快なテナーサックスに繋がるあたりは、完全にハードバップ愛好者のツボでしょう。
 あぁ、何度聞いても自然に体が揺れてきます。
 ジョージ・タッカーのベースソロも、実にエグイ!

A-2 Skoo Chee
 モードを使った痛快なハードバップ曲で、モードにハードバップというのは!? と、お叱りは覚悟の断言! これが実にハードバップなんです! まずはアドリブ先発のスタンリー・タレンタインが真っ黒いフィーリングで完全にKOされますよ。これがジョン・コルトレーンだったら、熱くなって終りですからねぇ。暴言ご容赦願います。
 そしてトミー・タレンタインが陰影の滲み出る、これまた名演♪ 背後からキメのリフをぶっつけてくるリズム隊と強調しつつも、決して妥協していません。
 するとホレス・パーラン以下のリズム隊が魂の逆襲! おぉ、完全に「アス・スリー」ですよ♪ アル・ヘアウッドのシンバル&スネアの快感が存分に楽しめますし、最後の掛声は歓喜悶絶のお楽しみ♪ 最高です。

A-3 And That I Am So In Love
 ベニー・グリーン(tb) も十八番にしている楽しい隠れ名曲が、このメンツで演奏されるという嬉しいプレゼント♪ スタンリー・タレンタインの野太いテナーサックスでテーマメロディが吹奏された瞬間、本音で浮かれてしまいます。
 もちろんアドリブも黒っぽさがモロ出しとなってウキウキさせられますし、トミー・タレンタインもテーマメロディを上手く変奏し、またホレス・パーランのファンキー節も、本当にたまりませんねっ♪ 
 終始、弾みが効いたリズム隊も良い感じなのでした。

B-1 Al's Tune
 これがまた、実にスカッとするテーマ演奏♪ そして神妙にして思わせぶりなアドリブが冴えた名曲・名演の決定版です。
 アドリブ先発のトミー・タレンタインはマイルス・デイビスを意識したような感じですが、これは使われているモードの所為でしょう。むしろブルー・ミッチェルっぽいところが魅力的です。
 またスタンリー・タレンタインが、ここでも深みのあるブロースタイルで押し通し、その黒さ満点の歌心に驚嘆させられます。これが嫌いな人って、いるのかなぁ~。
 そしてさらにグッとくるのがリズム隊のパートで、キメのリフ、ホレス・パーランのアドリブともにシャープでアクが強く、ファンキーの進化形として夢中にさせられます。
 ラストテーマの吹奏も鮮やかですよ。

B-2 Ray C
 これぞファンキーという名曲♪ 押しの強いリズム隊、そして陰影を滲み出すタレンタイン兄弟のテーマ合奏! これがハードバップの最大魅力かもしれません。
 アドリブパートも王道を外さない豪快さで、全員の真っ黒な魂が遺憾な無く発揮されています。特にトミー・タレンタインが良いですねぇ~♪
 肝心のホレス・パーランも執拗なブロックコード弾きが開放的に展開する得意技を聞かせ、またジョージ・タッカーのベースソロがビンビンに響きわたるという、このバンドならではの“お約束”が潔いと思います。
 ラストテーマの合奏も一筋縄ではいきません。

B-3 Pyramid
 オーラスはラテンビートを使った、ちょっと哀愁モードの胸キュン曲♪ しかしサビからは微熱っぽい4ビートとなり、う~ん、これはホレス・シルバー!? なんて思いますが。
 しかしアドリブパートでの脂っこい雰囲気は、間違いなくホレス・パーランの世界です。豪快にドライブするスタンリー・タレンタインのテナーサックスが唯一無二なら、トミー・タレンタインは明快なフレーズを連ねてリラックスムード♪
 そしてホレス・パーランがドラムス&ベースと渾然一体となったグループで突進! けっして派手さはありませんが、ジワジワと熱くなってからのブロックコード弾きと重なって吹奏されるラストテーマが、本当に快感ですよ。

ということで、なかなか分かり易い演奏ばかりの楽しいアルバムだと思います。なにしろタレンタイン兄弟が自然体で好印象♪ 特にトミー・タレンタインは何時も以上に好調です。

そして主役のホレス・パーランは良く知られているように、右手に障害があって指が2本しか動かないとか言われていますが、普通に聴いているぶんには全く気になりませんし、それゆえの個性とか努力の跡を殊更に強調しなくとも、非常に真っ黒なフィーリングが好ましいスタイルです。

モダンジャズには、こういうアクの強さが必要なんでしょうね。これも隠れ人気盤の1枚ではないでしょうか。

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Jeannine さえあれば♪

2008-03-16 16:44:14 | Weblog

4月から自賠責が値下がりするらしいけれど、ちょうどタイミング悪く、更新しなければならないとは……。

ついてない時って、こんな感じですね。

ということで、本日は――

Donald Byrd At The Half Note Cafe Vol.2 (Blue Note)

ブルーノートのライブ盤はワンセッションでLP2枚を作るのが通例らしく、もちろん後には発掘という企画で未発表作品集も出るには出ますが、リアルタイムの傑作集として、ジャケットデザインも似せた双子盤はやっぱり魅力です。

それはどっちの出来が良いか? あるいは好きか? なんていう結論の出ない論争を引起こしたりするジャズ者の楽しみでもあり、当然ながら全部を聴き通して感動するのも、また良いものです。

さて、このアルバムはドナルド・バードが当時の盟友だったペッパー・アダムスと組んでいたレギュラーバンドによるライブ盤の第2集です。

録音は1960年11月11日、ジャズでは様々な名演が残されている名店ハーフノートにおけるセッションで、メンバーはドナルド・バード(tp)、ペッパー・アダムス(bs)、デューク・ピアソン(p)、レイモン・ジャクソン(b)、レックス・ハンフリーズ(ds) という滋味豊かな面々です――

A-1 Jeannine
 デューク・ピアソンが書いた代表的なオリジナル曲で、モードを使っていながら調子の良いリズムパターンを活かしたテーマの楽しさは格別です。それは既にキャノボール・アダレイがスタジオレコーディングとして名盤「ゼム・ダーティ・ブルース(Riverside)」に入れているほどの人気♪ そしてここでの演奏は作者自らが加わっていることもあって、実に爽快でコアな雰囲気が表出しています。
 まず指パッチンからグルーヴィな4ビートのリズム隊が心地良く、トランペットとバリトンサックスで思わせぶりなアンサンブル、そして快調なテーマ提示と、ここまでで歓喜悶絶♪
 さらにアドリブパートに入ると、深遠に快楽主義を貫き通すドナルド・バードの歌心が潔く、またブリブリと放埓にうねるペッパー・アダムスという黄金コンビのノリの良さが存分に楽しめます。
 またリズム隊の軽やかなノリが実に素晴らしく、デューク・ピアソンが中心となったトリオのパートなんか、新感覚も感じられるほど♪ 本当に何時までも聴いていたいですね。

A-2 Pure D. Funk
 第1集ではバンドテーマに使われていた曲で、タイトルどおりピュアハートなファンキーフィーリングがたまりません。3連ビートの熱い使いも上手く、アドリブパートでの粘っこいグルーヴなんか、わかっちゃいるけどやめられない♪
 特にペッパー・アダムスの鬱陶しいアドリブに対し、真っ黒な中にも洗練された“粋”を感じさせるデューク・ピアソンが素敵ですよ。

B-1 Kimyas
 重厚なベースとピアノ、それに対して逆に軽やかなラテンピートを敲きまくるレックス・ハンフリーズのドラミングで、ツカミは完璧♪ 続く楽しいノリのテーマメロディは、作者のドナルド・バードが十八番のフレーズから抽出してものでしょう。
 アドリブパートではグイノリでお約束のフレーズを連発するペッパー・アダムスが最高! デューク・ピアソンの合の手ピアノも調子が良すぎて止まりません。自然に体が揺れてくるほどなんですよっ♪
 続くドナルド・バードも快調至極で、覚え易いフレーズ中心のアドリブは、ハードバップのひとつの真髄が潜んでいるようです。
 そして軽快なデューク・ピアソンの背後ではレックス・ハンフリーズのブラシが実にシブイ♪ もちろん途中からスティックに持ち帰るお約束も痛快ですから、このトリオのパートが聞きたくて、このアルバムを取り出すのが私の本音なのでした。

B-2 When Sunny Gets Blue
 比較的新しいスタンダード曲ですが、些か落ち着きのないアレンジが勿体無い……。サーカスの音楽のようなワルツのパートが、ねぇ……。
 しかしアドリブパートではデューク・ピアソンが本領発揮のネクラ節♪ というか、ジェントルな雰囲気と内向的な真情吐露が実に上手くミックスされた名演だと思います。ちょっと歌伴っぽいフィーリングにグッときますねぇ~~♪

ということで、デューク・ピアソン目当てで入手したアルバムというわけです。

気になる第1集との比較では、甲乙つけがたいのは当然ながら、デューク・ピアソンの活躍内容から、私は第2集、つまりこちらを愛聴しています。私の偏愛曲「Jeannine」が入っているだけで高得点!

もちろんペッパー・アダムス、そしてドナルド・バードも熱演ですから、後は目的意識の問題でしょうか。ちなみに私のレコード棚では、デューク・ピアソンの場所に入っているほどです。

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今日は神妙

2008-03-15 17:41:34 | Weblog

親戚の法事に出席しました。

以前にクダラナイ遺産争いに巻き込まれて、いやな感じでしたが、様々に故人の思い出話を聞くうちに、なんかシンミリと……。

あぁ、いつもは鬼のようなことをしている私にも、まだこんな気持ちが残っていたのか……。

なんて、恥ずかしながら神妙な気分になりました。

よって、本日は歌舞音曲を自粛させていただきます。

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奇跡のよみがえり

2008-03-14 17:49:36 | Weblog

いろいろとあって昼飯食う時間も無く、空腹も覚えなかったという、なんかソンしたような1日でした。

もちろん今頃になって強烈に腹へったぁ~。

ということで、本日は――

She Was Too Good To Me / Chet Baker (CTI)

まさに天才というしかないジャズフィーリングを持ちながら、何時の間にか悪いクスリと酒に溺れて人生を苦悶したのがチェット・ベイカーという白人トランペッターです。

しかも映画スタアっぽいルックス、中性的なボーカルでの歌唱、ちょっと退廃的な雰囲気が演奏に滲み出た全盛期のカッコ良さは、単なるジャズトランペッターを超越したアルドル的な人気も最高でした。

それが1960年代に入ると行き過ぎた悪癖で心身ともにボロボロとなり、演奏そのものも精彩を欠くことが多くなって……。おまけに作られるレコードの企画もイノセントなジャズファンには???というシロモノが多く……。

1970年頃には無一文のドラッグジャンキーとして、とうとう演奏もままならない状態だったと言われています。もちろん当局からは厳しい監視があったそうですし、クスリの売人からも狙われて……。

さて、このアルバムはそんな地獄を通り抜けた1974年に吹き込まれた会心の人気盤♪ 製作レーベルのCTIは名プロデューサーのクリード・テイラーが陣頭指揮でフュージョン色の極めて濃い演奏を送り出していた当時の最先端ですから、ここに潜在的な人気が高いチェット・ベイカーのリーダー盤を出してくるのも納得出来ますが、その中身の素晴らしさは聴いて仰天でした。

録音は1974年11月、メンバーはチェット・ベイカー(tp,vo)、ポール・デスモンド(as)、ボブ・ジェームス(key)、ロン・カーター(b)、スティーヴ・ガッド(ds)、ジャック・ディジョネット(ds)、ヒューバート・ロウズ(fl)、デイヴ・フリードマン(vib)、その他にストリングスとホーンの伴奏か付いていて、アレンジはドン・セベスキーという豪華版です――

A-1 Autumn Leaves
 もう、これしかないの1曲目♪ 柔らかな歌心を優先させるチェット・ベイカーのテーマ吹奏から爽快なアドリブは、全てが口ずさめるという出来すぎたものです。しかしこれはチェット・ベイカーが天才の証明でしょう。
 それをサポートするリズム隊では、なんと言ってもスティーヴ・ガッドが奇跡の4ビート! 今では天才の名をほしいままにしているこのドラマーも、当時はロックビートは上手いけれど、4ビートはスイングしないと定評があったんですよっ。それがここではスネア&タムをメインに、シンバルをサブにしたポリリズムっぽい敲き方が本当に素晴らしく、目からウロコの新感覚でした。
 またボブ・ジェームスのシンプルなエレピ、ブ~ンというキメを多用するロン・カーターも心地良く、さらにストリングスやフルート等のアレンジもソフト&メロウですから、本当にたまりません。
 そして特別ゲスト扱いのポール・デスモンドがフワフワと夢見心地の名アドリブ♪ 快適で力強いリズム隊のグルーヴと渾然一体となった演奏は、まさに桃源郷の仕上がりで、「枯葉」のモダンジャズバージョンとしては快楽ナンバーワンじゃないでしょうか。
 スティーヴ・ガッド、カッコイイ!

A-2 She Was Too Good To Me
 こんどはスローなテンポでチェット・ベイカーのボーカルが楽しめる、なかなか甘い演奏です。クラシック調のアレンジで煌くストリングをバックに、気だるい雰囲気で美メロが歌われる世界は、ジャズというよりも、今日ではソフトロックという感じです。
 しかし当時は「オカマノウタ」とか、忌み嫌っていたジャズ者も多かったんですよ。これは賛否両論でしょうね。
 私はドン・セベスキーの華麗なアレンジに酔い、素直なハスキートランペットにシビレて聴いているのですが……。

A-3 Funk In Deep Freeze
 おぉ、今度は一転してファンキーハードバップのCTI的な展開というか、原曲はハンク・モブレーが1950年代に書いた黒い感覚が横溢するメロディです。それをここでは脱色してソフトに仕上げる試みが潔い結果となりました。
 まずチェット・ベイカーが絶妙のタメで、実に見事なアドリブを聞かせてくれます。またここでもシンプルな「間」に撤するボブ・ジェームスのエレピが素敵ですねぇ~♪ 本音でジャズモードを追求するヒューバート・ロウズのフルートも良い感じ♪
 ただしハンク・モブレーのオリジナル演奏を知っていれば、完全に物足りないでしょう。特にスティーヴ・ガッドのドラミングは???

B-1 Tangerine
 爽快で柔らかなメロディが魅力の名曲をチェット・ベイカーが吹いてくれる、ただそれだけで満足させられる名演です。そしてバックのアレンジとサポートメンバーの堅実な助演も素晴らしいですね。特に正統派4ビートのブラシを披露するスティーヴ・ガッドがステックに持ち替えていくところなんか、不思議なほどにジャズどっぷり♪
 もちろんチェット・ベイカーのアドリブは美メロの宝庫で、なんでこんなに歌えるのか、夜も眠れないほどです。またポール・デスモンドも実に甘美な世界を作り出して快適にスイングしまくれば、リズム隊は意外なほとにアグレッシブ! ボブ・ジェームスが演じるアドリブソロのバックで暴れるスティーヴ・ガッドが痛快なのでした。

B-2 With A Song In My Heart
 これも和みの歌物スタンダードで、チェット・ベイカーが十八番のボーカル&トランペットを聞かせてくれますが、ここからはドラマーがジャック・ディジョネットに交代している所為でしょうか、ちょいと全体のスイング感がハードエッジ♪
 ボブ・ジェームスのエレピソロに絡んでテーマに戻していくチェット・ベイカーには手慣れた感じがします。

B-3 What'll I Do
 これもスタンダードですが、かなりシブイ選曲だと思います。
 甘いストリングスがメインのアレンジで、チェット・ベイカーは虚無的なトランペットと暖かいボーカルを聞かせるという、コントラストの妙技がニクイばかり!
 フェードアウトして短く終わるのが残念なほどです。

B-4 It's You Or No One
 オーラスは、これぞチェット・ペイカーという爽やかフィーリングのハードバップが存分に楽しめます。スリルがあって和んでしまうアレンジが秀逸ですし、溌剌としたリズム隊も正統派の力量を発揮しています。
 アドリブパートではボブ・ジェームスがビル・エバンスとアーマッド・ジャマルのミックスを聞かせてくれますから、ニンマリです。

ということで、これはチェット・ベイカー「よみがえり」の名作♪ 発売された1975年はフュージョンの大ブームへ突入していた頃ですが、日頃それを嫌っていたジャズ喫茶でさえも、このアルバムだけは鳴らす店が多かったと記憶しています。

実際、これがリアルタイムのチェット・ベイカー初体験というジャズ者も大勢いらっしゃるのでは? 実は私もそうなんです。

ちなみにチェット・ベイカーは、この後も好不調の波が烈しく、事なかれ4ビートや凝りすぎフュージョン等々、なにか煮え切らない活動で生涯を終えたのは、やはり悪いクスリの所為だったのでしょうか……。

あとスティーヴ・ガッドが一般的に大ブレイクするのは、このセッションよりも1~2年後なんですが、その際、常に話題となるのが、このアルバムでの4ビートドラミングなのでした。

最後に一言、何が写っているのか意味不明のジャケットは、開いてみるとお楽しみがありますよ。ぜひともアナログ盤の現物を確認して下さいませ。

コメント (3)
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マッコイ和みのライブ

2008-03-13 16:58:37 | Weblog

いよいよ雪国も暖かくなって、バイクの季節♪

と思っていたら自賠は切れているし、肝心のキーを紛失したか……。

う~ん、そういえば実家の机の引出しに入れていたような……。

ということで、煮え切らない不安はこのアルバムで解消です――

McCoy Tyner Live At Newport (impulse!)

マッコイ・タイナーといえば、説明不要の豪腕ピアニストとして1960~70年代には絶対的な存在感がありました。特にジョン・コルトレーンのバンドレギュラーとしてブレイクした頃の勢いには、何時聴いても血沸き肉踊るものがあります。

このアルバムは1963年のニューポートジャズ祭におけるライブセッションで、録音されたのは7月5日! つまりジョン・コルトレーンの、あの名演盤「セルフレスネス(impulse!)」の2日前なのですから、暑苦しいまでの熱気はお約束です。

しかもメンバーがクラーク・テリー(tp)、チャーリー・マリアーノ(as)、マッコイ・タイナー(p)、ポブ・クランショウ(b)、ミッキー・ロッカー(ds) という明らかに臨時編成というミスマッチ感覚も興味深いところです――

A-1 Newport Romp
 マッコイ・タイナーのオリジナルというブルースですが、イントロから躍動的にアドリブしていくマッコイ・タイナー以下のリズム隊が雰囲気を作り出す常套的な仕掛けで、特に決まったテーマメロディはありません。しかしこれが非常に魅力的なのは、ジャズならではの楽しみでしょう。
 続くクラーク・テリーは何時もの駆け足スタイルを全面に出していますが、やや不安的……。これはかなり前にラジオで油井正一氏が語ったところによると、なんとクラーク・テリーは当日に自分の楽器を忘れてきて、借り物を吹いていたというお粗末のようです。
 しかしチャーリー・マリアーノは絶好調で、白人ながらチャーリー・バーカー直系のビバップフレーズとアグレッシブな感性で大熱演! バックで煽るリズム隊とのコンビネーションも五分五分というところです。
 演奏はこの後、ボブ・クランショウとミッキー・ロッカーの4ビートスイング合戦から簡単なリフがあって終了しますが、如何にもモダンジャズというノリは不滅だと思います。

A-2 My Funny Valentine
 前曲からの拍手喝采の中、マッコイ・タイナーが上手いイントロを弾き、この人気曲のメロディがチャーリー・マリアーノによって思わせぶりに吹奏されていきます。密やかにからんでくるクラーク・テリーのトランペットもベテランの味わいで感度良好♪ もちろんテーマ後半は俺に任せろです。
 そしてマッコイ・タイナーは意外なほどに神妙な歌心に撤し、実はビル・エバンスがルーツであることを告白するのです。あぁ、こういう歌心優先のマッコイ・タイナーが私は大好きですから、何度聞いても飽きません。
 さらにアドリブからラストテーマに繋げていくチャーリー・マリアーノのネクラな真情吐露も素晴らしいですねっ♪ 数多ある同曲のジャズバージョンでも、味と情熱の世界が上手くミックスされた名演だと思います。

A-3 All Of You
 コール・ポーターの名曲で、モダンジャズではマイルス・デイビスのバージョンが耳タコになるほどに有名ですから、ここでもそのイメージが先入するのですが、マッコイ・タイナーはリズム隊だけの軽妙で躍動的な演奏に専心しています。これが実に正解!
 ボブ・クランショウとミッキー・ロッカーのコンビネーションは堅実ですし、マッコイ・タイナーは動きすぎる指で独自の歌心を表現し、絶対にコルトレーンもマイルスも出てくる気配すら感じさせないのは見事です。
 そしてボブ・クランショウのベースソロも最高!

B-1 Monk's Blues
 セロニアス・モンクではなく、あくまでもマッコイ・タイナーのオリジナルというセロニアスでモンクなブルースです。
 そしてこれもリズム隊だけの演奏とあって、暗くて饒舌なマッコイ節が大爆発! あぁ、これがジャズだっ! と熱血して感動するのが私のような世代のジャズ者ではないでしょうか。ほとんどパブロフの犬のようなモードとコードの合わせ技です。
 またボブ・クランショウが素晴らしいベースソロを披露♪ ミッキー・ロッカーのドラムスが些か軽い感じですが、それを言ったらお終いという雰囲気は、ジョン・コルトレーンが出てこないので、これも正解だと思います。

B-2 Woody'n You
 クライマックスは再びホーン陣が入っての熱血ハードバップ大会! もちろんマッコイ・タイナーはモード優先主義のスタイルを崩していませんが、クラーク・テリーは我関せずのマイペースで楽しさを追求していますから、ついついボリュームを上げてしまいます。
 快調にアップテンポのグルーヴを作り出すミッキー・ロッカーとボブ・クランショウに煽られて、チャーリー・マリアーノが新しいことをやろうとして苦闘するあたりにも、思わずニンマリ♪
 そしてマッコイ・タイナーが猛烈な全力疾走! う~ん、なんでコルトレーンが出ないんだぁ~~~! これは言ってはいけないのですが……。

ということで、今日ではあまり注目されることもないアルバムでしょうが、私はけっこう愛聴しています。というか、思い出した頃に聴くと、なかなかジャズの楽しさを再認識させられる1枚かと思うのです。

既に述べたとおり、当時のマッコイ・タイナーはジョン・コルトレーンのバンドで巡業に明け暮れていた熱い日々でしたが、そこで聞かせていたドロドロしたマグマのような演奏とは、明らかに別次元のノリが楽しめるのは貴重で嬉しいプレゼント♪

しかしジャズ喫茶の人気盤にもなっていないのは、他に秀作が多いマッコイ・タイナーとしては当然ということでしょうか……。聴かず嫌いは勿体無いアルバムです。

コメント (4)
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惑わないデクスター

2008-03-12 18:11:50 | Weblog

すっかり暖かい陽気になりましたね。

連日のシビアな仕事で、些かゲンナリしている私は、こんなアルバムを聴いてみました――

Doin' Allright / Dexter Gordon (Blue Note)

私がジャズ喫茶に通い始めた頃はジョン・コルトレーンが神様でしたから、同じテナーサックス奏者でも、例えばそういう演奏が出来ないハンク・モブレーとかハロルド・ランドあたりは、些かバカにされた存在でした。

しかし唯1人、ジョン・コルトレーンを超えたところで強烈な存在感を誇示していたのがデクスター・ゴードンという黒人テナーサックス奏者です。

そのキャリアはモダンジャズ創成期から第一線で活躍しながら、ハードバップ全盛期ど真ん中の1950年代後半には悪いクスリでリタイアしていたのが、今となってはなんとも残念なところです。しかし1960年代初頭に娑婆へ戻ったカムバック期に残されたレコーディングの強烈さは圧巻でした。

そしてこのアルバムはその時期の代表的な1枚で、ブルーノート契約の初作品! 録音は1961年5月6日、メンバーはデクスター・ゴードン(ts) 以下、フレディ・ハバード(tp)、ホレス・パーラン(p)、ジョージ・タッカー(b)、アル・ヘアウッド(ds) というイキの良い共演者達です。特にリズム隊は所謂“Us Tree Trio”ですからねぇ~♪ もう聴く前からワクワクしてきます――

A-1 I Was Doin' Allright
 あまり有名でない映画音楽ですが、デクスター・ゴードンの悠々自適なテーマ吹奏からマイペースのアドリブまで、モードもコルトレーン関係無い佇まいが流石だと思います。もちろん緩やかなテンポの中に急速フレーズを用いたり、あるいは意図的なはぐらかしというキメも自然体で使われますから、時代遅れどころか、時代を超越した存在感♪
 これには若手バリバリのフレディ・ハバードも、ちょいと飲まれたような感じで、些か萎縮気味でしょうか……。またリズム隊も何時ものドス黒いグルーヴが出せずに苦闘している感じです。
 しかし演奏全体の和やかな雰囲気、リラックスしたノリの良さは、間違いなく一級品で、アルバム全体の流れを見事に作っているようです。

A-2 You've Changed
 後々までデクスター・ゴードンが十八番として愛奏する歌物バラードです。大らかなノリを作り出すリズム隊も素晴らしいですから、デクスター・ゴードンは存分に心情吐露の大名演!
 ハードボイルドな歌心、温かくてハードなテナーサックスの音色♪ もはや私などには何も言えない世界です。
 おそらく同曲のインストバージョンとしては最高峰かもしれません。

A-3 For Regulars Only
 デクスター・ゴードンが書いたハードバップなオリジナル曲で、まずトランペット&テナーサックスによる2管の響きが心地良いテーマ合奏からして、グッと惹きつけられます。
 そしてアドリブパートでは、先発のデクスター・ゴードンがゴキゲンなフレーズとノリを完全披露♪ 得意技の有名曲引用もツボを押えた上手さですし、続くフレディ・ハバードが若さを露呈するのとは対照的なベテランの味わいが深いところです。
 またリズム隊が粘っこいグルーヴで本領発揮♪ ホレス・パーランの変態ブロックコード弾きやサポートでもビシバシと遠慮の無いアル・ヘアウッドがニクイですよ。

B-1 Society Red
 これもデクスター・ゴードンのオリジナル曲ですが、ブルースでありながら、1961年を意識した新感覚のファンキーなメロディが最高です。
 もちろん演奏もグルーヴィ♪ 引き締まったアドリブを聞かせるフレディ・ハバード、シビアな粘っこさを発揮するリズム隊も素晴らしいと思います。アドリブの受渡しに使われるリフも良い感じですねぇ♪
 そしてデクスター・ゴードンのグイグイに黒っぽいノリは唯一無二の凄みがあって、聴くほどにモダンジャズ天国へ直行です。ひとつひとつの音選び、フレーズの意味合い云々という前に、全体のハードなスイング感が物凄いと思います♪
 またホレス・パーランがお待ちかねのストーカーっぽい陰湿さで繰り広げるファンキーな世界も圧巻で、聴いているうちに自然と体が揺れてくる感覚がたまりません。
 どっしり構えたベースのジョージ・タッカー、さらにシャープで重いビートを敲き出すアル・ヘアウッドも最高です。

B-2 It's You Or No One
 オーラスはモダンジャズでは定番という歌物スタンダードで、定石どおりアップテンポで演じられますが、イントロにちょっとしたアレンジがあったりして、楽しさが倍化しています。
 デクスター・ゴードンはアドリブでも絶好調で、豪快で愉快なフレーズと大らかなノリの良さが痛快至極♪ 続くフレディ・ハバードも水を得た魚のようにイキイキとトランペットを鳴らしまくりですから、これがジャズだっ! 本当にそう思います。
 そしてホレス・パーラン以下のリズム隊が、これまた快演です。アル・ヘアウッドのハイハットが実に良い雰囲気ながら、ジョージ・タッカーの4ビートウォーキングも、たまりませんねっ♪

ということで、A面はちょいと肩透かし気味なところもありますが、B面は如何にもブルーノートいう圧倒的な勢いのハードバップが堪能出来ます。

そしてある日、なんとなくA面を鳴らしてみると、これが実に味わい深いという、素直な感動に包まれまれるんですねぇ。まさに奇跡のようなプログラムです。

まあ、当時はA面ド頭に一番良い演奏を置くのがLPの常道なわけですから、今更何をという感想かもしれませんが、若い頃の私は黒い熱気に満ちたB面ばかりを聴いていましたから、我ながら苦笑です。

そしてB面を聞き終えて、レコード盤をひっくり返し、A面に針を落とすという儀式こそが、このアルバムへの礼儀かもしれないと思っています。

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