今回は、日本のサッカー界で急成長する個人、チームには必ず走りの専門家有りと、そんな時代がやってきたのかなというお話だ。
日本代表も先日の合宿で、福島大学陸上部の名だたる名コーチ、陸上部監督の先生を呼んで、その話を聞かせているが、表題の接点も清水エスパルスの杉本龍男フィジカルコーチなのである。現在世界的上り坂にある日本陸上短距離界の、元オリンピック代表選手。戦後初めて日本がリレー種目で決勝進出を成し遂げたバルセロナ五輪の、4×100mリレーのアンカーを務めた人物である。
まず、この年末年始の高校サッカー選手権大会で初出場初優勝という23年ぶりだかの快挙を成し遂げた山梨学院大附属高校のことだが、走り勝ったチームとして知られている。ただしこの走りというのを、誤解してはいけない。速く走れればよいとか、長く走れればよいとかいう事もサッカーではとても大事なことなのだが、杉本コーチのいう「サッカーの走り」は、これだけでは意味は半分だ。以下は、そういう誤解を解いて頂く事になる記事でもあると、僕は考えている。
山梨学院のコーチの話をまず聞こう。以下は週間サッカーダイジェスト1月5、12日号からの抜粋である。
【 練習の指揮を執るのは、吉永一明コーチだ。北九州市生まれの41歳。90年から三菱養和のコーチを務め、福岡の強化育成、ナショナルトレセン九州担当コーチ、清水のトップコーチ、鳥栖の育成部統括などを担当。今年から山梨学院大付で体育教員とサッカー部のコーチを務めながら、寮で部員と寝食を共にしている。
前週に期末テストが行われたこともあり、12月第2周は走り込み中心の練習メニューが組まれていたのだが、その距離や時間、本数の設定には、毎日微妙な変化がつけられていた。
「1000mを10本やった日もあれば、1500、1200、1000と距離を減らしたり、入りの100mのタイムを変えたり。これは清水で一緒だった杉本龍男フィジカルコーチ(陸上短距離の元オリンピック代表選手)のノウハウを取り入れさせてもらっているんです。ウォーミングアップのメニューも、杉本さんが作ったサーキットトレーニングをアレンジしています。おかげで筋肉系のトラブルはほとんどない。さすがは杉本龍男って感じですね(笑)」
練習の大枠は、横森監督と吉永コーチが相談した上で決定するが、細かなメニュー内容は吉永コーチに一任されている。 】
岡崎慎司のネタもサッカーダイジェスト9/1号から取った。杉本コーチと岡崎は05年清水に入った同期の間柄。その年のオフシーズンから岡崎は、杉本が監督をしていた浜松大学陸上部に通い始めたという。「走り方」の特別個人授業を受けるために。
【 「めちゃくちゃ地味な練習になるぞ」。あらかじめ、杉本コーチは釘を刺しておいた。腕の振り方はこう、足はここまで上げる、正しい姿勢はこの角度で……。いわゆる体育の授業で習うような、走りのベーシックな部分を事細かに叩き込んでいった。
1年目はこうして終わった。そして、わずかながらも出場機会を増やしたプロシーズン2シーズン目を終えると、オフシーズンは岡崎はまたひとり杉本コーチのもとへと出向いていった。
「今度は、去年こなしたメニューから少し発展させた内容のものを考えて、またコツコツやっていましたね」 】
【 昨年の北京五輪が終わったあと、2人の間にこんな会話があった。
「相手の当たりがすごかった」という岡崎に対し、杉本コーチは「そんなの筋肉だけじゃない」と返した。
筋力差があったとしても、身体を当てるタイミングをズラすことで十分勝つことはできる。裏への抜け出しでは、相手より足が遅くとも、最初の2,3歩でどう駆け引きするかで決まる。
「結局、フィジカルというのは、身体の動かし方のスキルでもあるんです。それを知っているのと知らないのとではプレーの質も違ってきます。そのスキルの向上が、今の岡崎の活躍を支えていると思うんですよ」 】
非常によく分かる。世界1クラブ・バルサの中盤チビトリオ、イニエスタ、シャビ、メッシが170センチ前後の背丈であれだけ出来るのは全て、身体の使い方、自分の重心を相手のどこへ・いつ・どう入れるか、そういう「脚捌き」などなのであろう。背が高い人間はいくら頑丈でも、最初の当たりを反らされて足元へ低く入られれば、身体が浮いてしまう。我々日本人には、相撲の立ち会いでおなじみの知識である。こういうことのためには、体幹の強さが大事になるが、これの強さと走持久力とは、岡崎は既にプロ加入時から備えていたらしい。
日本代表も先日の合宿で、福島大学陸上部の名だたる名コーチ、陸上部監督の先生を呼んで、その話を聞かせているが、表題の接点も清水エスパルスの杉本龍男フィジカルコーチなのである。現在世界的上り坂にある日本陸上短距離界の、元オリンピック代表選手。戦後初めて日本がリレー種目で決勝進出を成し遂げたバルセロナ五輪の、4×100mリレーのアンカーを務めた人物である。
まず、この年末年始の高校サッカー選手権大会で初出場初優勝という23年ぶりだかの快挙を成し遂げた山梨学院大附属高校のことだが、走り勝ったチームとして知られている。ただしこの走りというのを、誤解してはいけない。速く走れればよいとか、長く走れればよいとかいう事もサッカーではとても大事なことなのだが、杉本コーチのいう「サッカーの走り」は、これだけでは意味は半分だ。以下は、そういう誤解を解いて頂く事になる記事でもあると、僕は考えている。
山梨学院のコーチの話をまず聞こう。以下は週間サッカーダイジェスト1月5、12日号からの抜粋である。
【 練習の指揮を執るのは、吉永一明コーチだ。北九州市生まれの41歳。90年から三菱養和のコーチを務め、福岡の強化育成、ナショナルトレセン九州担当コーチ、清水のトップコーチ、鳥栖の育成部統括などを担当。今年から山梨学院大付で体育教員とサッカー部のコーチを務めながら、寮で部員と寝食を共にしている。
前週に期末テストが行われたこともあり、12月第2周は走り込み中心の練習メニューが組まれていたのだが、その距離や時間、本数の設定には、毎日微妙な変化がつけられていた。
「1000mを10本やった日もあれば、1500、1200、1000と距離を減らしたり、入りの100mのタイムを変えたり。これは清水で一緒だった杉本龍男フィジカルコーチ(陸上短距離の元オリンピック代表選手)のノウハウを取り入れさせてもらっているんです。ウォーミングアップのメニューも、杉本さんが作ったサーキットトレーニングをアレンジしています。おかげで筋肉系のトラブルはほとんどない。さすがは杉本龍男って感じですね(笑)」
練習の大枠は、横森監督と吉永コーチが相談した上で決定するが、細かなメニュー内容は吉永コーチに一任されている。 】
岡崎慎司のネタもサッカーダイジェスト9/1号から取った。杉本コーチと岡崎は05年清水に入った同期の間柄。その年のオフシーズンから岡崎は、杉本が監督をしていた浜松大学陸上部に通い始めたという。「走り方」の特別個人授業を受けるために。
【 「めちゃくちゃ地味な練習になるぞ」。あらかじめ、杉本コーチは釘を刺しておいた。腕の振り方はこう、足はここまで上げる、正しい姿勢はこの角度で……。いわゆる体育の授業で習うような、走りのベーシックな部分を事細かに叩き込んでいった。
1年目はこうして終わった。そして、わずかながらも出場機会を増やしたプロシーズン2シーズン目を終えると、オフシーズンは岡崎はまたひとり杉本コーチのもとへと出向いていった。
「今度は、去年こなしたメニューから少し発展させた内容のものを考えて、またコツコツやっていましたね」 】
【 昨年の北京五輪が終わったあと、2人の間にこんな会話があった。
「相手の当たりがすごかった」という岡崎に対し、杉本コーチは「そんなの筋肉だけじゃない」と返した。
筋力差があったとしても、身体を当てるタイミングをズラすことで十分勝つことはできる。裏への抜け出しでは、相手より足が遅くとも、最初の2,3歩でどう駆け引きするかで決まる。
「結局、フィジカルというのは、身体の動かし方のスキルでもあるんです。それを知っているのと知らないのとではプレーの質も違ってきます。そのスキルの向上が、今の岡崎の活躍を支えていると思うんですよ」 】
非常によく分かる。世界1クラブ・バルサの中盤チビトリオ、イニエスタ、シャビ、メッシが170センチ前後の背丈であれだけ出来るのは全て、身体の使い方、自分の重心を相手のどこへ・いつ・どう入れるか、そういう「脚捌き」などなのであろう。背が高い人間はいくら頑丈でも、最初の当たりを反らされて足元へ低く入られれば、身体が浮いてしまう。我々日本人には、相撲の立ち会いでおなじみの知識である。こういうことのためには、体幹の強さが大事になるが、これの強さと走持久力とは、岡崎は既にプロ加入時から備えていたらしい。