Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

古書の愉しみ 「ボートを漕ぐもう一人の婦人の肖像」

2009-07-28 08:06:11 | 読書
「ボートを...」の著者は辻征夫.
出版社は書肆山田 (1999).しょしやまだと読むのだと思う.詩集専門の出版社 らしい.

定価は 1800 円.半透明の帯に曰く:
ポケットの底で糸屑と悲痛な思いをいっしょくたにもみしだいている一見ごく普通の一人の男.そのもどかしげな唇から,ことばの星々が噴き上げられる.ふいに立ち現れる 不可思議の世界.

初版.1 ページ立ち読みして 500 円で購入.

じつは著者の名前を見たのは初めて.ウィキペディアによれば,1939浅草生まれの向島育ち.2000年1月,脊髄小脳変性症闘病中急逝とのこと.
「彼の詩作品は、ライト・バースなどと呼び慣わされていて、軽い、つまりは厚味のない作品であるかのように見なされているが、実際にその作品を注意深く読むならば、重層的時空間が混沌として現前する、特異な体験を呼び起こすものであることが多い。」と紹介されていた.

これは120ページ強に9編の,詩ではなくて,短編小説集.ほとんどが同人誌に発表されたもので,あとがきによれば,友人たちのあいだでは好評だったが,事実をそのまま書いたエッセイと思われたらしい.
けっこう深刻なことがさらりと書いてある.
「妹が私を見ているときは私はよそを見ていて,妹がどこかよそを見ているときに私は妹の顔を見た」という調子の文章である.

俳号「貨物船」だそうで

   炎天や電柱がみな曲がってら

   月ガ出タ煙突高シサノヨイヨイ

などの俳句が小説に出て来る.本気なのか,小説のために作ったのか,よくわからない.
コメント
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