岩阪 恵子著 講談社文芸文庫 (2010/03).
200ページちょっとの薄っぺらい文庫本だが,レジで1575円といわれ,かなり後悔した.
小出楢重 (1887-1931).右の油彩「N の家族」.子供をバッファに,虚勢を張って威張っている Narashige 氏と,なんだか不機嫌な細君は,大原美術館でも印象に残った.
著者は小説家で,清岡卓行夫人だそうだが,本書は小説ではない...と思う.読んだ後は著者あるいはこの本を通り越して,小出本人の絵を観たい・文章を読みたいという気分になった.巻末には著者の年譜ではなく,小出の年譜のほうが適切ではないだろうか.
3 編からなり,最初の「画家小出楢重の肖像」は,この「N の家族」を含む 5 枚の油彩 (うち 4 枚はカラー口絵ななっている) をネタに著者が事実に沿って想像を膨らませた文章. つぎの「絵日記「断雲日録」の楽しさ」は油絵に替わって小出楢重自身の絵日記がネタになり,画家による墨のスケッチもたくさん挿入されていて,これが楽しい.
著者は小出の文章から入って,絵に進んだようだ...というわけで,ぼくも岩波文庫の小出の随筆集をアマゾンに注文した.
解説 堀江敏行.小出・岩阪・堀江の三人とも,大阪弁の湿った暖かさに言及している.こちらはもっと湿暖な広島から大阪に通っているせいか,あまりそう感じない.