Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

「ガラス絵の話」by 小出楢重

2010-04-13 07:21:34 | お絵かき
岩波文庫「小出楢重随筆集」は永らく絶版状態だったが,2009年3月に復刊ドットコムの働きかけにより復刊したとのこと.開けてみたら,最初が「裸婦漫談」次が「ガラス絵の話」.ガラス絵もどきを描いているので,まっさきに読んだ.ちなみに,「油絵新技法」という項もあるが,正面から絵画をとりあげているのは 40 項あるうち この 3-4 項程度.

この絵は
小出楢重「ソファの裸女」ガラス絵 10×19.5cm (1930) 梅田画廊

小出によればガラス絵は「早く言えば職人の仕事」である.偶然夜店の古道具屋で「どうも普通の絵とは違った,下品ではあるが何か吸い込まれるような色調が妙に気にかかった」のが契機で病み付きになったそうだ.

随筆というには本格的な文章で.「ガラス絵の種類」「ガラス絵の技法」「ガラス絵制作の順序」「画面の大きさの事」「額縁の事」と続く.絵具とメディユムの分量なども書いてある.

曰く「次へ次へと絵具を重ねる事が出来ないものですから,勢い画面が単調になります,筆触もなれれば絵具の厚みもない,ここで単調と不安が重なるものですから,どうしても不愉快が起こらざるを得ません.」

曰く「ガラス絵は小品に限ります.ちいさなガラスを透して来る宝石のような心ちのする色の輝きです.宝石なども小さいから貴く好ましいのですが,石炭のように,ごろごろ道端に転がっていれば鳥の糞とたいした変わりはないでしょう.」

曰く「食物で言えばガラス絵などは,間食のごときものでしょう,間食で生命を繋ぐ事は六つかしい,米で常に腹を養って置かなくてはなりません.」

冒頭の「裸婦漫談」はもちろん,どこから読みはじめてもこの随筆集は面白い.
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