物理の教科書によれば,フルートは開管すなわち両端が開いていて,クラリネットは閉管 すなわち片方が閉じた管と言うことになっている.閉じていては息が入らないのだが,リードで音波に対しては閉じていると説明される.そして閉管では偶数倍(原文は奇数倍 2015/6/28訂正)の高調波が出ない.演奏家は基本波を出すのと同じ指の位置で,技術によって高調波を出せるらしいが,この動画にあるように,クラリネットから出る高調波はひとつおきである.スペクトルは下・左の図 (http://www.phy.mtu.edu/~suits/clarinet.html) に類似のものになる (と,教科書には書いてある).

しかし自分でクラリネットのスペクトルを計ってみたら...と言っても,バディ・デ・フランコの CD が音源だが,けっこう偶数倍波も出ている.
なぜこうなるの ?
と思ったら,
P. Dickens et al., "Clarinet Acoustics: Introducing a Compendium of Impedance and Sound Spectra" Acoustics Australlia 35 (2007) 17.
という論文があった.クラリネットをフルートと比較して論じていて,右側の図はその Figure 1 として載っているスペクトラ.「どっちの周波数スペクトルがフルートでどっちがクラリネットか分からないでしょう.本文を読んで下さい」という趣旨のキャプションがついている.ふつうに計ればこんなものなんだろう.
ちなみに,YouTube でクラリネットとフルートを吹いているオジサンは大学のスタッフでこの論文の共著者のひとりらしい.
論文にはインピーダンスの測定結果もあって,そちらではクラリネットとフルートの違いは一目瞭然であった.
しかしラプラス変換で,インピーダンス Z=R+sL+1/sC と刷り込まれているので,音響イピーダンスはどうも苦手である.
図右の上下では下がクラリネットだそうです.