Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

LA・ジャズ・ノワール---失われたジャズ史の真実

2015-09-14 09:05:56 | ジャズ
中山廉樹 河出書房新社 (2012/2).
装幀永松大剛,タイトルのロゴが良かったので図書館で借用.失礼ながら,この著者は同じような本をたくさん書いておられるという先入観を持っていたのだが,この本は面白くて 230 ページを一日で読んでしまった.

「BOOK」データベースより*****ジャズ正史からは消された街、ロサンゼルスこそ、もうひとつの「ジャズ誕生の地」ではないだろうか。「明るくさわやか」なウエスト・コースト・ジャズの血塗られ姿に、「異形の才能を生み出した原点」を見出す圧倒の新史。*****

16 トン的にウエスト・コースト・ジャズを認識したのは.映画「真夏の夜のジャズ」のジェリー・マリガンで,以来「造られた白いジャズ」のイメージにとらわれていたかもしれない.しかし同じ映画のチコ・ハミルトンの「ブルー・サンズ」の印象 (エリック・ドルフィー,ナサニェル・ガーシュマンなど) も強烈だった.この本にはマリガンもハミルトンも登場するが,いっぽうスタン・ゲッツ,シェリー・マンなどウエストのスタープレイヤーたちの扱いは,オーネット・コールマンやポール・プレイなどの「異形の」ジャズに比べるといかにも軽い.

強烈なのは麻薬の悲惨さである.ワーデル・グレイの屍体は砂漠で発見され,チェット・ベイカーはビルから転落死.フランク・ロソリーノはふたりの息子に発砲し自身も頭部を撃ち抜いて自殺する (ただしロソリーノの場合,麻薬との関連はこの本では明らかでない).

ローリンド・アルメイダとバド・シャンクが始めた新しい音楽の LP がブラジルに空輸され,ボサノヴァとなって逆輸入されたというのは,なるほどと思わせる.
終盤では困窮していたデヴィッド・アクセルロッドが銀行口座への「何かの間違いじゃないか」と思うほどの高額な振り込みに驚く.彼のアルバム「ソング・オブ・イノセンス」中の一曲がサンプリングに使用された結果であった.著者はヒップホップがウェストコーストの一般的なイメージの虚構性を暴いたと説く.

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