Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

難民文学「さようなら、オレンジ」

2015-09-25 08:45:21 | 読書
岩城けい「さようなら、オレンジ」 ちくま文庫 (2015/9).

出版社からのコメント
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異郷で言葉が伝わること―
それは生きる術を獲得すること。
人間としての尊厳を取り戻すこと。

オーストラリアの田舎町に流れてきたアフリカ難民サリマは、夫に逃げられ、精肉作業場で働きつつ二人の子どもを育てている。
母語の読み書きすらままならない彼女は、職業訓練学校で英語を学びはじめる。
そこには、自分の夢をなかばあきらめ夫について渡豪した日本人女性「ハリネズミ」との出会いが待っていた。
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大江健三郎賞受賞...つまらないかな (大江文学を面白てと思ったことがない),でも太宰治賞受賞なら面白いかも,と思って,上記カバーの惹句も読まずに読んだら,面白かった.ちょっとミステリ的で,舞台がオーストラリアというのがなかなか分からない.「ハリネズミ」が日本人だというのもすぐには分からない.最後の手紙に,サリマは物語の中でハリネズミが与えた名前だと書いてあったりする.
出だしは純文学的だが,朝ドラ的にストーリーが展開する.
女性の間の友情を垣間見る感じで,素直に読めば素直に感動できる.

カバー折り返しのプロフィールによれば,著者は在豪 20 年だそうだ.ハリネズミは著者の分身だったと納得.
テーマは「異郷で言葉が伝わること」らしく,母語 (母国語という言葉はここでは使われていない) が日本語であるハリネズミの場合はうまく描かれているが,アフリカに母語を持つサリマの場合はイマイチかもしれない.

日本で難民を受け入れるといっても,やはり言葉の壁が厚くて高いだろう.
コメント
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