熊谷達也,中公文庫(2015/12).
Amazonの内容紹介(「BOOK」データベースより)*****
交通事故で妻を亡くし、自身も大けがを負った結果、音を聴くと香りを感じるという共感覚「嗅聴」を得た鳴瀬玲司は、ピアノの調律師を生業としている。さまざまな問題を抱えたピアノ、あるいはその持ち主と日々接しつつ、いまだに妻を忘れられずにいた鳴瀬だったが、ある日、仕事で仙台に向かうことに―。*****
主人公である「私」は将来を嘱望されたピアニストだったのが,事故をきっかけに調律師に転職したという設定.亡き妻の妹が活躍し,彩りを添える.「色聴」という共感覚は広く知られており,その持ち主は音域の周波数が可視域の周波数に対応して見えるということだ.「私」が持つ「嗅聴」では,ピアノの音色がジャスミンとか,バラとか,麦わらとか,ウィスキーとか,生ゴミとかの匂いとなって感じられる.この現象については作中で一応の科学的な説明がつけられている.著者は東京電機大卒だそうだ.
初出は全て「オール読物」.
7編の連作.第1編が発表されたのは2010年8月合.土方正志氏の解説によれば,書きつないでいく途中で起こった大震災により作品の構想が変わったとのこと.6編目で「私」も仙台出張中に地震に見舞われる.著者は仙台在住で,震災への思い入れに迫力がある.それをきっかけに最後の第7編で「嗅聴」感覚を失ったことに気づく.
特殊な感覚と大震災という要素を抜きにしても,コンサート会場だけでなく,家庭,学校の体育館,ジャズバー,リゾートホテルなど,ピアノが置かれる場所は様々で,そこで調律師が活躍するのは上質なエンタメ小説になりそう.
文庫カバーの「調律師」は何というフォントだろうか?
Amazonの内容紹介(「BOOK」データベースより)*****
交通事故で妻を亡くし、自身も大けがを負った結果、音を聴くと香りを感じるという共感覚「嗅聴」を得た鳴瀬玲司は、ピアノの調律師を生業としている。さまざまな問題を抱えたピアノ、あるいはその持ち主と日々接しつつ、いまだに妻を忘れられずにいた鳴瀬だったが、ある日、仕事で仙台に向かうことに―。*****
主人公である「私」は将来を嘱望されたピアニストだったのが,事故をきっかけに調律師に転職したという設定.亡き妻の妹が活躍し,彩りを添える.「色聴」という共感覚は広く知られており,その持ち主は音域の周波数が可視域の周波数に対応して見えるということだ.「私」が持つ「嗅聴」では,ピアノの音色がジャスミンとか,バラとか,麦わらとか,ウィスキーとか,生ゴミとかの匂いとなって感じられる.この現象については作中で一応の科学的な説明がつけられている.著者は東京電機大卒だそうだ.
初出は全て「オール読物」.
7編の連作.第1編が発表されたのは2010年8月合.土方正志氏の解説によれば,書きつないでいく途中で起こった大震災により作品の構想が変わったとのこと.6編目で「私」も仙台出張中に地震に見舞われる.著者は仙台在住で,震災への思い入れに迫力がある.それをきっかけに最後の第7編で「嗅聴」感覚を失ったことに気づく.
特殊な感覚と大震災という要素を抜きにしても,コンサート会場だけでなく,家庭,学校の体育館,ジャズバー,リゾートホテルなど,ピアノが置かれる場所は様々で,そこで調律師が活躍するのは上質なエンタメ小説になりそう.
文庫カバーの「調律師」は何というフォントだろうか?