Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

朝、目覚めると、戦争が始まっていました

2018-09-20 08:31:13 | 読書
方丈社編集部 編集,方丈社 (2018/8/3).図書館本.☆☆☆☆

Amazon に引用された出版社からのコメント*****
意外なことだが、知らないうちに始まっていた太平洋戦争に、多くの国民、知識人は感動した。戦争を体験したことのない世代が、ほとんどとなりつつある現在、日本が体験した直近の戦争を振り返り、「あの日、日本人は戦争をどう感じ、何を考えたのか?」を追体験するという意図のもとに、本書は編まれた。太平洋戦争の勃発に、短編小説『十二月八日』で応えた太宰治は、こう書いている。「きょうの日記は特別に、ていねいに書いて置きましょう。昭和十六年の十二月八日には日本のまずしい家庭の主婦は、どんな一日を送ったか、ちょっと書いて置きましょう」太宰治が書き、伝えようとした言葉を、77年後の私たちは、どう受けとるのだろうか。*****

カバーは当時の新聞写真だが,一面に「米英に宣戦布告」のみだし.でもふたりは娯楽面を読んでいるような表情.

見開きの右ページに名前・肩書き・当時の年齢・出典,左ページに文章.発言者の年齢順に並べてあるようだが,女性は皆無.最後に太宰治が主婦の言葉で書いた小説があるのみだ.

例えば,54 歳の折口信夫は
「戦線のみことのりの降ったをりの感激,せめてまう十年若くて,うけたまはらなかったことの,くちをしいほど,心をどりを覚えた.」
...8 割がたがこの調子.

正反対が神山茂夫.中野重治は「瞬間,うちに帰れば,特高が来ているだろうな,と思った」.
その他,残り2割から拾ってみると.
岡本太郎 「...もう入隊はきまっている.ああ,オレは間違いなく死ぬんだ...」
野口冨士男 「...アメリカと戦闘状態に入ればアメリカ映画は見られなくなる...その日私が妻子をともなってみにいった...フィルムは「スミス都へ行く」であった」
古川ロッパ 「...ラヂオが盛んに軍歌を放送している...三時から支度して,芝居小屋のセットへ入ったら,暫くして中止となる,ナンだい全く」

政治家 (近衛文麿,松岡洋右,木戸幸一) はおおむね冷静で客観的.軍人・真崎甚三郎曰く
「最初は勿論勝利を得れども終局の見へざることが最大の癌なり」.
例外は東條英機で,「いよいよルーズベルトも失脚だね」と浮かれるのみ.

目次*****
ラジオニュース(午前七時)
吉本隆明/鶴見俊輔/黒田三郎/加藤周一/ピストン堀口/新美南吉/岡本太郎
ラジオニュース(午前十二時・東條英機首相演説)
野口冨士男/保田與重郎/竹内 好/埴谷雄高/中島敦/火野葦平/高見順
ラジオニュース(午前十二時三十分-1)
亀井勝一郎/坂口安吾/伊藤整/神山茂夫/木山捷平/阿部六郎/山本周五郎
ラジオニュース(午前十二時三十分-2)
古川ロッパ/島木健作/今日出海/中野重治/上林暁/矢部貞治/尾崎士郎
ラジオニュース(午後三時)
井伏鱒二/横光利一/金子光晴/獅子文六/河合栄治郎/近衛文麿/清沢洌
ラジオニュース(午後五時)
青野季吉/木戸幸一/室生犀星/中江丑吉/長與善郎/折口信夫/木下杢太郎
ラジオニュース(午後七時)
東條英機/秋田雨雀/高村光太郎/斎藤茂吉/松岡洋右/正宗白鳥
ラジオニュース(午後九時)
永井荷風/真崎甚三郎/徳田秋声/鶯亭金升/幸田露伴/徳富蘇峰
「十二月八日」太宰 治
略歴
解説 「始まりは,大々的には始まらない」武田砂鉄 *****
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

reading

/Users/ogataatsushi/Desktop/d291abed711d558e554bf7af66ee57d7.jpg