Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

公園へ行かないか? 火曜日に

2018-09-26 08:32:29 | 読書
柴崎 友香,新潮社 (2018/7/31).

Amazon の内容(「BOOK」データベースより)*****
世界各国から作家や詩人たちが集まる、IWP(インターナショナル・ライティング・プログラム)に参加した著者が、不得手な英語で話し合い、街を歩き、アメリカ大統領選挙を目撃した三か月を描く小説集。*****

全11編.小説集とあるが,記録のように思えた.


自分が初めてアメリカに留学したときのことを,思い出したくないことも含めて思い出してしまった.
1ドル360円の時代.あちらと日本とで電話で話したことは一度もなかった.この本にしょっちゅう登場する iPhone なんて,上出来の SF だ.

著者は IWP に参加した33か国・37人の中で「どうやら自分だけが極端に英語の出来が悪い」と自覚する.50 年前の自分の場合は,最初のうちは英語が通じればもうけもの思っていた.

著者は滞在初期には,英語を日本語 (それも大阪弁) にして理解していたという.自分の場合,何年か後にアメリカ人が言ったことを思い出すとき,その人が喋った日本語として記憶していたのに気づいたことがある...今となっては,具体例は何も思い出さないけれど.

帰国の途上の描写:「搭乗口に近づくと、日本語が聞こえた。...(中略)...わたしは、日本語を聞きたくなかった。聞いてしまった、と思った。特別な時間はもう終わったのだと、わかった」.比較的短期の海外旅行で実感すること.自分の場合,2年近くほとんど日本人と話すことなく帰ったら,周囲で日本人が日本語を喋っていることが,映画を見ているように感じられ,まるで実感がなかった.日本語で話しかけられて英語で応答したりした.


でも著者の置かれた状況は,その後自分が中年を過ぎて,海外の学会に参加したときのそれに近い.
滞在中には大統領にトランプが当選し,ボブ・ディランがノーベル賞をもらう.
よく知っている地名が出てきた.ニューオーリンズの第二次世界大戦博物館 (はじめて存在を認識した) の記述が,亡父の思い出にシフトするあたりがよかった.

ある種の思い入れがあって読めば☆☆☆☆以上だが,そうでなかったらつまらないかもしれない.
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