Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

路地裏の怪人

2020-07-01 08:23:23 | 読書
見るからに怪しい本.表紙は片岡千恵蔵扮する多羅尾伴内こと藤村大造.ピンクレディーのウォンテッド(1977)に「あるとき謎の運転手 あるときアラブの大富豪 あるときニヒルな渡り鳥 あいつはあいつは大変装」と謳われた人である.最近も林家木久扇の落語に登場している.

 弾丸 (たま) つきぬ銃持つことも<七つの顔>の不思議たりしよ,さらば千恵蔵!

この本は
 小川太郎「歌集 路地裏の怪人」月光の会発行,弥生書房発売(1989/10).
古書店で発見.著者のお名前は初めて.「一首鑑賞 日々のクオリア」によれば,1942-2001(自裁).

終戦後の焼け跡,B級映画などパラパラ見した歌に共感した.父を知らず,母も老いてしまう...

 テレビ見つつ老母 (はは) 眠りしか消しに来て画面の今亡き役者と出会う

しかし情けないことに...

 妻の目を盗みて出がけに老母から小銭を借りる<中年怪人>

この歌には深く共感...まぁほかの人生の可能性があったのは,お互い様だが

 わが妻とならざるほかの人生もありしと思えばいとしき汝よ

安保闘争をテーマとした大上段に振りかぶった歌もあるが,僕的にはしょぼくれたのが好み.

 修学旅行のバスの少年黄昏に人待つわれを見つめていたり
 路肩に落ちいし他人の名刺またぐとき<主任>の文字が目に入りたり
 「平凡」の通販広告見て買いし背伸ばし機 裕次郎絶頂の頃
 ビギン・ザ・ビギン聞けば浮べり二幸前のたそがれに立ちいし娼婦の横顔

二幸は新宿アルタの場所にあった食料品専門デパート.
歌は俵万智以来.


 
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