Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

コロナではなく天然痘 : 世界のはての少年

2020-07-15 09:45:27 | 読書
ジェラルディン・マコックラン, 杉田 七重 訳 「世界のはての少年」 東京創元社 (2019/9).

Amazon の「BOOK」データベースより*****
子供9人大人3人を乗せた船が、スコットランドのヒルタ島から、無人島へと出帆した。孤島で海鳥を獲る旅が、少年たちにとっては大人への通過儀礼なのだ。だが約束の3週間が経っても、迎えの船は姿を現さない。この島から出られないのではないかと不安が募り、皆の心を蝕み始める。そんななか年長の少年クイリアムは、希望を捨てることなく仲間を励まし、生きのびるために闘う。そして…。実際の事件をもとに描いた勇気と成長の物語。カーネギー賞を受賞した、感動の冒険物語。*****

カーネギー賞の対象は児童文学らしいが,この小説はこどもにはもったいない.「十五少年」や「蝿の王」と似た設定だが,大人もいて,しかもいない方がいいみたいに描かれている.ちょっと「蝿の王」の方向にぶれるが,幸い修正される.1927年という時代らしく,神話伝承もそれなりの影響力を持っている.男の子ばかりのはずが,女の子が紛れていたことが途中でわかるあたり,ストーリーの立て方がうまい! この子は男の子として育てられてきたくせに,いざという時に女性らしい手練手管を発揮する! ちなみに著者は女性.
原題 Where the World Ends.主人公に焦点を結んでいると解釈して,この邦題になったのだろう.

以下はネタばらし*****
コロナ騒ぎのなかで読んで感慨があった.実際の事件は1927年.故郷は天然痘で全滅していたから,迎えの船は来なかったのだ.「著者あとがき」によれば,ある意味でもっと悲惨だった現実を,小説ではあえて改変したという.A5版300ページ22章.無人島からやっと救出されるのは21章,9ヶ月後.エピローグ的な最終22章で語り手が「わたし」として登場する.結末が意外にロマンチックで救われる.

末山りんによるカバーイラストが好き.
図書館で借用.
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