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高校生直木賞「宇喜多の捨て嫁」

2017-04-25 09:24:15 | 読書
木下 昌輝「宇喜多の捨て嫁」文春文庫 (2017/4).

帯に「第92回オール讀物新人賞をはじめ、高校生直木賞など五冠を達成した衝撃のデビュー作」.高校生直木賞とは,高校生が書いた小説に賞をあげるのか,xx 甲子園の類だな,面白そう...と思ったが,全くの認識不足だった.「全国の高校生たちが集まって議論を戦わせ、
直近一年間の直木賞の候補作から「今年の1作」を選ぶ試み」だそうだ.こちらが HP.

木下昌輝 (1974-) は近畿大学工学部建築学科卒業.ハウスメーカー勤務経験があるそうだ.

文庫本には解説がなく,代わりにあるのは高校生直木賞の選考過程.『宇喜多の捨て嫁』は 2015 年の受賞作だが,この年予選を勝ち抜いた最終候補作はこれ以外に,西加奈子『サラバ!』,万城目学『悟浄出立』,柚木麻子『本屋さんのダイアナ』,米澤穂信『満願』.西加奈子が大人の直木賞を受賞したが,高校生の選考会でも『サラバ!』が決選投票まで残った.黒川博行『破門』も大人の直木賞受賞作だったが,予選にも残らなかった.

「宇喜多の捨て嫁」そのものは宇喜多直家が登場する6編の連作.戦国時代の備中の武将で,聞いたことがあるかなぁという程度なので Wiki をのぞいたら,小説はほぼ史実に従っていた.タイトルの「捨て嫁」は自分の娘を政略結婚させ結局見殺しにする = 捨てる,という意味.宇喜多直家のやることは暗殺・謀殺・下克上のオンパレード.持病の「尻はす」という出血を伴う悪性の腫瘍の記述が汚らしい.
小説には家臣と共に耕作に励んだとか,自ら節食したとか,家臣を大切にしたとかいう甘味も加えてあり,高校生に気に入られることになった.高校生はあまり時代小説を読んだことがなく,そのためにこの作品が新鮮に写ったふしもある.

カバーイラスト (山本タカト) が良い.
解説がないのは不満.

☆☆★

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