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阪大の HP によれば
*****このたび、本学において、平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における出題及び採点に誤りがあったことが判明いたしました。そのため、改めて採点及び合格者判定を行い、新たに30名を合格者としました。*****
とのこと,これが問題となった問題.阪大の禄を食んだことがあるので...というのは嘘で,もっぱら野次馬としてこの問題を考えてみると...
壁とマイクの距離を Y とすれば,音叉からマイクまでの音が走る距離は Y-d,音叉から出て壁で反射してからマイクに入るまで走る距離は Y+d,ふたつの距離の差が波長 λ の n 倍のとき音が強くなるから,ぼくの直感による問 4 の答えは 2d=nλ.
ところが上記 HP の「誤りの内容、発見の経緯及び経過、対応」の項目によれば
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であって,この解は追加された回答に含まれてはいるが,出題者の意図した回答ではない.
2d=(n-1)λ は 2d=nλ と同じようなものだが,2d=(n-1/2)λ はなぜ...
ここで縄跳びの縄を壁に結んでぶるんとやると,反射するときに位相が反転することを思い出した.位相反転が音波でも成り立つなら 2d=(n-1/2)λ となる.下の図は手許にあった G.Ley "Musimatics" The MIT Press(2011) : Figure 7.6 (p213) から転載した,固定端 (a) 自由端 (b) における反射である.
たぶん高校の物理では,「自由端における反射波の位相は入射波と同じだが,固定端では逆転する」と教えるのだろう.この入試問題はこの図の現象を忘れたやつらを引っ掛けることを意図していたのだろう.ただし,問 4 で (出題者の考える) 正答を仮定しないと,問 5 文中の強い音が観測された条件と矛盾すると思う.一部の賢い受験生は問 5 をヒントに軌道修正したかもしれない.
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しかし...
おなじ Ley の本の Figure 7.11 (p216) で,閉管 (a) と開菅 (b) における音波 (一般には粗密波) の反射を示している.閉管で反射する場合は音波の位相は反転しない.これを出題の図3,壁の右側はオープンスペースの場合に拡張すると 2d=(n-1/2)λ は間違いということになる!!
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説明として,石川昌司(札幌啓成高校)「音波の指導で気になっていること」日本物理教育学会北海道支部雑誌「物理教育研究Vol32 (2004.7)原稿を適宜引用させていただくと
*****気柱の閉口端は,変位波にとっては固定端であるが,密度波にとっては自由端である.
なぜなら,密度波にとっての閉口端は,空気の「密度」が,かなりの範囲で(閉口端の底が抜けない限り?)「自由」に設定できるから「自由端」なのである.
反対に,開口端は,密度波にとって,内圧と外圧をつりあわせなければならない必要から密度はほぼ大気の密度に等しく「固定」されてしまうので,「固定端」とならざるを得ない.したがって,開口端では反射波の位相はπ変化する.
高校生向けにもう少し易しく説明するときは,閉口端は,普通,実体のある固い壁だから,「密」は「密」のまま,「疎」は「疎」のまま跳ね返ると言ってしまってもいい.ボールが固い壁にぶつかって跳ね返ってくるようなものである.*****
上記阪大の HP には「問 4 には複数の解答が存在したが、採点時において特定の解答(下記「当初の正答」)のみを正解として扱ってしまった」とあるが,当初の正答は誤答ではなかったの? 物理現象としての正解はどうなの? と言いたい.HP の総長コメントは不要,代わりに出題に沿って実験してその結果を公表するとか,すくなくとも音叉を点音源と仮定した球面粗密波の計算結果をみせるとかするのが物理的に良心的というものである.
追記 入試直後に誤りを指摘された よしだよしひろ さんの丁寧な解説が dropbox https://www.dropbox.com/s/z5x1pq7k7i8daoy/osaka_u.pdf?dl=0にある.初めからこれを読めばよかった.
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