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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

フーリエの冒険

2017-04-20 09:03:31 | 科学
トランスナショナル・カレッジ・オブ・レックス 編,ヒッポファミリークラブ (2013/07).

これは 1988 年刊行の旧版の表紙.新版では表紙はカラー,字や数式・イラストなどがデジタル化され美しく!なっているそうだ.

ヒッポファミリークラブは,複数の言語を同時に自然習得することを目的とした国際的な会員制クラブ.トランスナショナル・カレッジ・オブ・レックスの実態はよくわからないが,この「フーリエの冒険」に続いて 1991 に「量子力学の冒険」1998 に「DNAの冒険」が出ている.これらの本はどれも主婦・会社員・OL・自営業者などの素人集団の勉強会のまとめ (のようなもの) だと思う.

内容は sin cos から始まり,微分・積分・複素数表示・オイラーの公式・不確定性におよんでいる.新版では内容にウェーブレットが加わったそうだ,

この本では,素人が手探りでフーリエ解析を理解しようとする過程が描かれている.これから学ぶ人にとっては,手とり足とりで理解を助けてもらえることになる.

理数系の学習というのは,わからなくなって立ち止まり,悩んでいるうちにとつぜん悟りをひらいて,先に進むというものだ.かって大学生がエリートだった時代は,自分で悟るのが当然とされたが,現在の学生全部にそれを望むことはできない.この冒険シリーズは各地の大学で教科書・参考書としても採用され,合わせて出版部数12万部突破という異例のベストセラーとなっているという.

例えば,ふたつの数式 f T=1, 2 pi f=omega で済むはずの周期・周波数・角周期の説明が,10 ページ.ラジアンについてさらに項を改めて6ページという具合.小学校の加減乗除の学習の,「太郎さんがリンゴをいくつ,花子さんはみかんをいくつ...」という調子で対象をフーリエ解析にした感じ.

ちゃんと読めばフーリエ解析を理解できるとは思うが,勉強する気になるかどうかは別な問題.
別な問題は,大学で使うと,懇切丁寧過ぎて,学生が自分で考えなくなるんじゃないのという心配.

厚くて高い ! (新版 B5 463ページ,3291円).
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デパ地下のあなごめし

2017-04-19 08:57:34 | エトセト等


あなご飯は瀬戸内名物で,岡山-山口あたりの駅弁だが,「うえの」という店のものがブランド.宮島口のレストランで食べられるがたいてい行列.その出店が広島三越の地下にある.

カウンターだが予約が必要で,時間に行くと炊き上がった釜飯が待っている.蓋を取ると米が見えないくらいのあなごである.食べ方が目の前に書いてあるが,最後は出汁をかけてお茶漬け風になる.山椒がみどりいろだった.米の量は1合だそうで,はじめはこんなに食べられるだろうかと思ったが,ぺろっと入ってしまった.
お茶もおいしかった.

ぼく的あなご飯のイメージでは千円台だが,メニューは一種類だけで,税込 2916 円.宮島口のふつうのあなごめしより高い.予約必要ということもあってか,空いていた.

以下は憎まれ口.
この三越地下のイートインでは,あなごめしばかりでなく,寿司屋も鰻屋も高い.高くても美味しければいいという三越マダムが対象らしい.コーヒースタンドはかって年金生活老人の溜まり場だったが,消滅した.

三越はあちこちで閉店しているが,広島から消滅しないでほしい.と言っても,お帳場カードはこのごろ滅多に使わないが...
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虚擬街頭漂流記

2017-04-18 08:39:33 | 読書
寵物先生,玉田 誠訳,文藝春秋 (2010/04).
著者の筆名の「寵物」はペットという意味,「~先生」は「~さん」程度の意味だそうだ.

第1回島田荘司推理小説賞受賞作.台湾ミステリの翻訳.図書館の中国文学の棚で発見した.

コンピュータ上のバーチャルな繁華街 (虚擬街頭) で起きるリアルな殺人事件.しかし絵空事という感じはない.「SF設定の中に構築された高度なトリックと,結末に思わず涙する感動のストーリー」という惹句はまぁ文字通り.ちょっと偶然が重なりすぎていると思う部分もなきにしもあらずだが,なかなかの傑作だ.反復輪廻的・東洋的世界観を近未来的な衣装にくるんだところが味噌.
文庫化されないのが不思議.

盲目の子供がことばを覚える過程とか,開眼したときの感動とかを一人称で描いた下りがなかなか感動的...と思ったら,これがある種の叙述トリックだった.2種類のフォントを使い分けているが,これも深慮遠謀らしい.

地図が挿入されているが活字が小さすぎる.老人まれることは想定外?
名前が覚えにくい.登場人物リストが欲しいところだが,幸い登場人物は少ない.
翻訳文が読みやすいのにくらべ,島田荘司の選評は読みづらい.

☆☆☆
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コーヒー豆のランク付け

2017-04-17 08:54:13 | エトセト等
コーヒー豆の値段はよくわからない.焙煎教室で聞いたところでは,産地は豆を等級に分けているという.高級豆ほど原則的には高価なはず.

ネットを漁った結果では

- 農園の場所の標高が高いほど高級 (一日の寒暖差が激しいほど味が良い)
- 豆が大きいほど高級
- 不良な豆 (未成熟,割れ豆,死に豆など) の数
- カップテスト

の4つが評価基準らしい.コーヒー愛飲家個人のページとおぼしき,http://coffee-labo.com/コーヒー豆の格付けについて/の記述が要領が良い.http://kiliman.net/wp/を探せば,もっと詳しい記述があるが,知りたいことを探し出すのが大変.

評価基準は国によって異なるし,まったく基準がない国もある.標高を基準にするのは山地で栽培する国である.ブラジルは微に入り細に入り基準を定めているが,標高は項目にない.

街のコーヒー焙煎店がどの程度本気で,こうした等級を意識しているか,わからない.サードウェーブコーヒーという流れが現れて以来,上記基準に関係なく,小粒の豆の評価が上がったように思う.

写真のスプレモはコロンビア豆を大きさで等級付けしたときの上から2番目だそうな.
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心拍の2つの周波数成分

2017-04-16 09:43:10 | 科学
ものの本 (今ではウェブサイト) によれば,心拍変動のパワースペクトルを,高周波成分(HF成分 0.15-4Hz 図の緑)と低周波成分(LF成分 0.05-0.15Hz 赤)に分けたとき,HF成分は副交感神経が緊張しているときにのみ心拍変動に現れる.いっぽうLF成分は、交感神経が緊張しているときも、副交感神経が緊張しているときも心拍変動に現れる.
HFが相対的に大きくなると副交感神経が優位になりリラックス状態にあると推定でき,HFが相対的に小さくなると交感神経が優位にたちストレス状態にあると推定できる.

「ジャズ演奏と心拍」の研究と称して,奏者の演奏時の心拍の時間変化を測定した.せっかくだから,このときの時間変化を HF LF を用いて分離してみた.結果がこれ...My One and Only Love を,ピアノトリオで演奏中のピアニストの,心拍の時間変化の平均値からのずれを,0.15Hz を境界に FIR ロウパスフィルタとハイパスフィルタに通した結果がそれぞれ左と右の図である.計算は Mathematica による.



左の図はフィルタをかけなかったとき,すなわち「ジャズ演奏と心拍」図4.4 の赤線とまったくと言えるくらいに同じ,中央の図は大きな挙動は左と似ている.
HF・LF がカットオフ周波数 0.15Hz ではっきり分かれるものでもないだろうし,またそのカットオフには個人差もあるだろう...というわけで,勝手にハイパスのカットオフを 0.2 Hzに上げて見た結果が右である.細かい振動だけが残った.
振幅は 1/f 的に周波数とともに減少するので,左の最大振幅を 100 とすれば,中では 20.右では 6 くらいである.

リラックスの指標となる HF 成分のほうが時間的な変動がはげしく,LF 成分すなわちストレスの変動の方が遅い.素人考えでは逆のような気がして仕方がない.
物理的 ? に HF は呼吸起源 (気体の流体力学),LF は血流起源 (液体の流体力学) と言われればそうかなとは思うのだが...

演奏に反応するのは LF 成分らしいというのが,当面の結論である.

しかし,楽器演奏のような運動中の HF・LF 分離に果たして意味があるのだろうか.
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山岳版画など

2017-04-15 09:12:35 | お絵かき
東広島市立美術館 所蔵作品展「躍る色彩」,5/21 まで.一般100(70)円、大学生70(50)円、高校生以下無料.

写真は美術館玄関のポスターより,橋本興家「山三題 白馬より後立山を望む 朝・昼・夕」.
昼の雲の描きかた ! 朝・夕は普通の版画だが,だから3枚並べる必要があるのだろう.
新コレクションだそうだ.

橋本興家 (おきいえ 1899-1993) は鳥取出身だそうで,砂丘の版画もあった.右のがネットに出ていたが (美術館にあったものではない),すでに SOLD OUT だった.

出展は,有地 好登・池田 満寿夫・井田 照一・瑛九・川上 澄生・川西 英・木下 泰嘉・草間 彌生・黒崎 彰・小林 敬生・斎藤 清・笹島 喜平・菅井 汲・永瀬 義郎・中山 正・萩原 英雄・橋本 興家・平塚 運一・平川 清蔵・日和崎 尊夫・深澤 幸雄・吹田 文明・光岡 始・百瀬 寿・森 義利・山下 清澄

版画でないのは,光岡 始の水彩画2点.この方はこの町の中学の校長だったそうだ..ネットにはこの方の絵はないようだ.
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造幣局広島支局 花のまわり道

2017-04-14 09:27:27 | エトセト等
造幣局に桜を見に行った.山陽本線五日市駅から送迎バス.

何キロの並木道とか,全山桜というのと違い,西洋風の庭園の区画に様々な品種が植えてある.61 品種 219 本.もちろん咲いてない品種もある.展示会とか品評会とかの感じ.上のパンフレットに四角い植え込みらしいものが見えるが,その広さが 60m x 70m ぐらい.

場内は飲食も喫煙も禁止.皆さんスマホで写真を撮るくらいしかすることがない.

投句所あり.
 「金鋳れば桜散るなり五日市」
... 才能なし? 造幣局のホームページには去年までの入選句が出ている.

帰りに書店をのぞいたら,新刊として

 水原紫苑「改訂 桜は本当に美しいのか」平凡社ライブラリー (2017/03).

があった.惹句は「桜を美しいと感じるのは自然の情緒なのか,そう刷り込まれただけではないのか。誰も触れえなかった問い=タブーに歌人が敢然と挑む」.サブタイトルはもっと過激で「欲望が生んだ文化装置」.図書館にあったら読んでみよう.
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闇のなかの黒い馬 その他

2017-04-13 08:58:01 | 読書
「闇のなかの赤い馬」で「闇のなかの黒い馬」が気になった.「...の黒い馬」をタイトルとする短編集は市の図書館にはなく,大学では文学部の図書室にしかない.しかし大学図書館の蔵書検索によればこの作品は

 紅野 敏郎, 紅野 謙介, 千葉 俊二, 宗像 和重, 山田 俊治 編「日本近代短篇小説選 昭和篇3」 岩波文庫(2012/10)

に入っていて,開架にあるとわかったので借り出した.この文庫本なら市立図書館にもあるのだが,所収されている短編までは検索にかからないのだ.

目次に鉛筆でチェックを入れた奴がいる !

この短編選は明治編・大正編・昭和編がそれぞれ 2・1・3 冊ずつ.これには昭和 27-44 年の作品が発表順にならんでいる.昭和編はまだ続きそう.

内容は順番に
小島信夫「小銃」,吉行淳之介「驟雨」,幸田文「黒い裾」,庄野潤三「結婚」,中野重治「萩のもんかきや」,円地文子「二世の縁 拾遺」,花田清輝「群猿図」,富士正晴「帝国軍隊に於ける学習・序」,山川方夫「夏の葬列」,島尾敏雄「出発は遂に訪れず」,埴谷雄高「闇の中の黒い馬」,深沢七郎「無妙記」,三島由紀夫「蘭陵王」.

小島,富士,島尾など戦争に関わるものがやはり読ませる.庄野は中間小説調.花田は例によって評論調.ヒッチコック・マガジンに掲載された山川作品が好み.
「...の黒い馬」はゲイジュツ的すぎて好みではなかった.強いて言えば「銀河鉄道の夜」からストーリーを抜き,小難しくしたような印象.
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画風泥棒

2017-04-12 09:39:19 | お絵かき
佐々木豊「画風泥棒 - 12人のアーティストの場合」芸術新聞社 (1999/12).

内容(「BOOK」データベースより)*****
天才画家なりとも、その画風は別の作家から“失敬”している。要は「いかに自分のものにするか」…。現代洋画界の異才・佐々木豊が、自らを含めた12人のアーティストの他から盗み、それを画風に生かしていった過程に迫る!佐々木流“泥棒のススメ”。*****

タイトルが面白いので古書で購入.前著「泥棒美術学校」芸術新聞社 (1993/12)が売れたので二匹目の泥鰌を狙ったらしい.
しかし取り上げられた 12 人はみな著者のお仲間らしい.多少からかい気味だが,全員を褒めまくっている.楽屋落ちといいたいが,知らないことがたくさん書いてあって,門外漢にはそれなりに面白い.職業画家が読んだら面白くないかも.

教わったのは中学の図工が最後で,絵というのは目の前の花瓶の花や風景を写すものと思っていた.でも J 子のやっていることを見ると,それは古いらしい.
この本のトップに登場する池田満寿夫は,高校生のとき,松本竣介から構図をとってコンクールに入選した.「ぼくは自然から授かったものはひとつもない.みんな先人の絵から」は池田の言だが,「上高地にイーゼルを立てて穂高を仰ぐ仲間たちがさぞや馬鹿に見えたことだろう」という著者=佐々木の文章が続く.
もちろん泥棒のやり方は画家によって異なり,池田は一方の旗頭というところ.

目次は.

池田満寿夫vsピカソ, 金子国義vsバルテュス,わたなべゆうvsラスコーの洞窟画,遠藤彰子vsボス,平賀敬vsデュビュッフェ,安達博文vsフンデルトワッサー, 絹谷幸二vsデ・キリコ―絹谷幸二,大沼映夫vsモンドリアン,小林裕児vsアフリカ・ニューギニア彫刻,渡辺恂三vsロマネスク絵画,開光市vs有元利夫,11人の仲間vs佐々木豊vsヴンダーリッヒ

こじつけ気味の vs もあるが,もとが雑誌連載だからだろう.第1ラウンド,第2ラウンド... などと章付けされている.泥棒と被害者を vs で並べるのはいかがなものか.もっとも絹谷ラウンドのサブタイトルには「絹谷...は天才だァ.デ・キリコを超えた」とある.

自分がこの中で名前と絵が一致するのは,池田,金子,遠藤,絹谷.最終ラウンドには著者自身も登場し,この人も画家だったのかと思った.
読んだだけで絵を見たことがないのに,わたなべゆうのファンになった,著者の文章がうまいことは確かである.

☆☆☆☆
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現代の随想 井伏鱒二集

2017-04-11 10:29:46 | 読書


現代の随想 17 井伏鱒二集 小沼 丹 編, 彌生書房 (1982/7).
刊行時,著者は 84 歳で存命だった.

どうでも良いことを,どうでも良いような口調で語るのを聞くのが,精神衛生上よろしい.話題がどんどんずれていって,そのまま終わったりする.
テーマは動物のことが 1/3 くらい.あとは,釣り,文壇の付き合い,戦争など.

意外にも著者は芥川賞作家ではなく直木賞作家であった.文春の佐々木茂索から「貰う気があるかね.芥川賞でなく直木賞だ」と聞かれ「やはり時計もくれますか」と聞き返し,「うん,やるやる」と言われて喜んで受賞することにした...というのが「時計もくれますか」の骨子.
「時計も...」では受賞作「ジョン万次郎漂流記」について「記録文学とはどんなものか知らないが...資料に頼って書いた.平野零児が資料を貸してくれるとき「ジョン万次郎漂流記」は「桃太郎」や「かちかち山」と同じように,誰が書いてもかまわない物語だと云った」と書いている.ちなみに,著者の没後「黒い雨」が誰かの日記をそのまま使ったものだと話題になったことがある.

解説によれば,「軍歌『戦友』」という作品は小説として発表されたものだという.著者の場合,小説と随想の境界は曖昧だ.旅館で宴会をやっているうちに皆の財布が盗られる話だが,「ここはお国を何百里...」は 14 番まであるから,これが始まると泥棒は安心して物色できるのだそうだ.
編者は弟子.某日,井伏さんが病院で心電図をとることになって,身体のあちこちに電極をつけられたら,井伏さんは「これは嘘発見器ですか?」と聞いた...と言う話があったりで,解説もおもしろい.

装画 丹阿弥丹波子,装丁 安野光雅.

古書で 350 円.

☆☆☆☆
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