【社説②】:相次ぐ通信障害 混乱防止は平時の規制強化で
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:相次ぐ通信障害 混乱防止は平時の規制強化で
携帯電話やインターネットが使えなくなる通信障害が多発している。総務省は、トラブルを未然に防ぐため、監視や規制を強化すべきだ。
KDDIが昨夏に起こした通信障害では、全面復旧に86時間を要し、3000万人以上に影響が出た。警察や消防への緊急通報がつながりにくくなり、宅配など幅広いサービスが滞った。
その際、総務省は通信各社に緊急点検を要請したが、それ以降もトラブルは続発している。
総務省によると、電気通信事業法が定める「重大な事故」に該当する障害は、KDDIの後、楽天モバイルやNTTドコモ、NTT西日本などでも相次いだ。
今月3日にも、NTT東日本と西日本で光回線によるインターネット接続や電話サービスなどが一時、利用できなくなった。
通話や電子メールのほか、様々なサービスに欠かせない通信インフラに大規模な障害が相次ぐ事態は看過できない。人為的ミスや設備の故障が原因だという。事前に作業手順の確認や保守を徹底していれば、防げた可能性もある。
総務省は従来、トラブル発生後に行政指導などを行う「事後対応」の手法を取ってきたが、障害の抑止につながっていない。このため、今後は通信大手に対し、問題が起こる前の「平時」の規制を強化する方針に転換する。
ドコモやKDDI、NTT東西など7社を対象とする。各社の経営陣らに、設備の管理ルールや障害対策にあたる人員と資金の計画などを毎年点検させ、その結果を総務省などがチェックする「外部監査」を導入するという。
障害時の復旧についての訓練や人為的ミスの防止策づくりを義務付けることも検討している。
電気やガスなどのインフラでは既に事業者の自主検査に加え、政府による定期的な監査が行われている。重要性が増す通信インフラにも、そうした監視体制を取り入れるのは当然だろう。
課題に対処する企業統治のあり方を含めて精査し、実効性のある仕組みとしてもらいたい。
通信障害が起きた際、影響を最小限に抑える備えも不可欠だ。
緊急時に、携帯電話の利用者が契約先と別の会社の通信網を使えるようにする「ローミング」や、駅や商業施設などに設けている公衆無線LANを開放する仕組みの導入などを急がねばならない。
総務省と通信各社が協力して、必要な設備改修やルール作りを進めることが求められる。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年04月08日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。