路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【社説①】:バス社長ら実刑 命預かる者への警鐘だ

2023-06-09 06:42:50 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【社説①】:バス社長ら実刑 命預かる者への警鐘だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:バス社長ら実刑 命預かる者への警鐘だ

 異例の実刑判決である。二〇一六年に長野県軽井沢町で大学生と運転手ら計十五人が死亡、二十六人が重軽傷を負ったスキーバス転落事故で、長野地裁は、業務上過失致死傷罪に問われた運行会社「イーエスピー」の社長に禁錮三年、元運行管理者に同四年を言い渡した。実刑は、多くの人の命に責任を持つ旅客事業者全般に発せられた警鐘とみることもできよう。

 社長らが事故を予見できたか、が裁判の最大争点だったが、判決は「二人は、運転手が大型バスの運転技量が不十分なまま夜行日帰りのスキーバスの運転をすれば、死傷事故を起こす可能性があると予見できたのに、漫然と乗務させた」と認定。さらに「二人が関係法令の義務を尽くし、運転手の技量を把握していれば、このスキーバスに乗務させなかったと認められ、本件事故は起きなかった」とまで踏み込み、管理する側の落ち度を厳しく断罪した。
 
 そもそも、交通関係で大勢の旅客らが犠牲となるような大事故であっても、経営陣が刑事罰に問われるケースは、過去にもほとんどないのではないか。〇五年に百七人が死亡したJR福知山線脱線事故でも、JR西日本の歴代三社長が無罪に。一二年に九人が犠牲になった中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故では、中日本高速道路の元社長ら八人が書類送検されたが、起訴されなかった。
 
 わが国の刑法では、過失罪の対象が個人に限られるが、今回のケースとは異なり、大きな組織で責任が多くの部署に分散しているような場合には、経営陣個人にまで予見可能性があったと証明することは困難を極める。
 
 多くの欧米諸国では、個人だけでなく、会社や行政機関など法人や組織の過失を刑事罰(多額の罰金刑)に問う「組織罰」が法制化されている。過失事故の責任を曖昧にしないためにも、そうした例を参考に、組織罰の法整備への議論も進めるべきではないか。
 
 ともあれ、コロナ禍が一段落し、旅客需要も回復に向かっている。今回の実刑判決は、旅客事業者に安全管理の再徹底を強く求めたものだ。単なるビジネスととらえ、利益のために安全を疎(おろそ)かにするような愚は厳に戒めねばならない。陸であれ、海や川であれ、空であれ、乗客は運行事業者を信頼していればこそ、その身を委ねる。その重みを忘れないでほしい。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年06月09日  06:42:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:米中対立続く 意思疎通が心もとない

2023-06-09 06:42:40 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、国家の個人等の権利を抑圧統治】

【社説②】:米中対立続く 意思疎通が心もとない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:米中対立続く 意思疎通が心もとない

 米中両国が軍事衝突すれば破滅的な事態を招く。そのことは双方がわきまえているはずなのに、対話の目詰まりは憂慮せざるを得ない状況だ。不測の事態を防ぐためにも意思疎通を図ってほしい。

 アジアや欧米の国防相、安全保障の専門家が集うアジア安全保障会議がシンガポールで開かれたのを機に、米国は中国に対し、オースティン国防長官と、三月に就任した李尚福国務委員兼国防相との国防相会談を呼び掛けた。
 
 しかし中国側は、米国政府がロシアからの兵器調達を巡って李氏を制裁対象にしていることを理由に会談を拒否した、という。
 
 米国が二月に中国の偵察気球を撃墜してから、両国関係は一段と冷え込んでいる。本格的な対話再開の機運は生じてはいるものの、ブリンケン国務長官の訪中は取りやめになったままで、バイデン大統領が期待する習近平国家主席との電話会談も実現していない。
 
 オースティン氏はアジア安全保障会議で「台湾海峡で紛争が起きれば壊滅的だ」と警鐘を鳴らし、李氏も米中が衝突すれば「世界にとって耐え難い苦痛となる」と述べた。互いに強い危機意識を持っているのなら、対立が制御不能に陥らないよう努めるべきだ。
 
 一方、日中間では防衛相会談が行われた。対話を進めることで一致し、五月に運用を開始した防衛当局間を結ぶホットラインを適切に運用する方針を確認した。
 
 誤解や誤算による軍事衝突を避けるには、対話のチャンネルを増やし、接触を絶やさないことが大切だ。米中は機能不全状態にある防衛当局間のホットラインの正常化も急がなくてはならない。
 
 安全保障会議の開催中、米中間で危うい出来事も起きた。米軍のミサイル駆逐艦が台湾海峡を通過中、中国軍艦が約百四十メートルまで接近し、前方を横切った。その八日前には南シナ海上空で、米軍機に中国軍機が急接近した。
 
 中国の挑発行動は目に余るが、米議会が対中強硬姿勢に傾斜していくことも気がかりだ。国際秩序の維持に責任を持つ行動を心掛けるよう、米中双方に求めたい。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年06月09日  06:42:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:新しい資本主義 分配政策どこへ行った

2023-06-09 06:41:50 | 【経済・産業・企業・起業・関税・IT・ベンチャー・クラウドファンティング

【社説①】:新しい資本主義 分配政策どこへ行った

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:新しい資本主義 分配政策どこへ行った

 岸田文雄首相が看板政策に掲げる「新しい資本主義」。政府が六日に提示した改定案には労働市場の改革や半導体投資の強化などが並ぶ。アベノミクスが掲げた成長戦略の踏襲にすぎず、期待された格差是正に向けた分配政策はどこへ行ったのか。

 労働市場改革は、年功序列の雇用慣行を転換し、成長産業への転職を支援することで、賃金を持続的に引き上げることが狙いだ。
 
 しかし、転職活動を円滑に行うためには、医療や住宅、教育など生活に欠かせない支出への公的補助が必要だ。こうした安全網を整えず、転職を促すだけでは、賃上げを伴う労働移動の活性化にはつながるまい。
 
 政府が転職支援に前のめりになれば、一部の人材の獲得合戦が過熱し、他の労働者を「弱者」としてふるい落とす構図さえ生みかねない。雇用支援が格差拡大の温床となるなら本末転倒だ。安易な転職促進策は容認できない。
 
 半導体への投資促進を改定案に盛り込んだことも理解に苦しむ。欧米や台湾を中心とした友好国・地域との半導体供給網の強化は、中国への対抗を念頭に置いた経済安全保障の一環で、「新しい資本主義」とは明らかに異なる。
 
 半導体生産には中国を含む多くの国が関わる。外交関係にとらわれない協力関係を構築することが供給網の強化につながり、景気への波及効果も見込める。排他的な政策は国際的な緊張を高めるだけで、日本の国益にも反する。
 
 改定案には「チャットGPT」の登場を機に普及が進む生成人工知能(AI)の推進策も盛り込まれたが、生成AIを巡っては開発が進む米国でも明確な活用法が示されていない。デジタル技術の性急な活用推進策は、マイナンバーカード同様、国民の間に無用な混乱を招きかねない。
 
 「新しい資本主義」に対しては当初、格差是正の足掛かりになるのでは、との期待があったのは確かだが、現実には、日銀による大規模な金融緩和と巨額の財政出動を前提に成長戦略を描くアベノミクスの域を出ず、分配政策は大幅に後退している。
 
 国民が望むのは、かけ声倒れの大味の経済政策ではなく、物価高騰の抑制や持続的な賃上げといった暮らしに直結した具体的な対策だ。首相には生活の実態に即した支援策を実行するよう求めたい。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年06月08日  07:43:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:ダム破壊 甚大な被害招く暴挙だ

2023-06-09 06:41:40 | 【ロシア・北方領土・シベリア開発・サハリン石油天然ガス・ウクライナ侵攻犯罪】

【社説②】:ダム破壊 甚大な被害招く暴挙だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:ダム破壊 甚大な被害招く暴挙だ 

 ウクライナ南部のドニエプル川にある巨大ダムが破壊され、決壊した。洪水に襲われた流域では住民の避難が続いている。ダムへの攻撃は戦争犯罪に当たる。許し難い暴挙だ。
 
 ウクライナ、ロシアとも相手の破壊工作だ、と非難合戦を繰り広げている。浸水は左岸のロシアの占領地域にも及ぶ。占領地域の奪還を目指すウクライナが、わざわざ自軍の進軍を困難にする行動に出るとは考えにくい。
 
 ダムは約百六十キロ上流にあるザポロジエ原発に冷却水を供給している。六基の原子炉を擁する欧州最大級の原発の冷却システムが機能不全に陥れば、福島第一原発のような炉心溶融につながる。
 
 国際原子力機関(IAEA)によると、幸い原発には代替の水源があるので、今のところは差し迫った危険はないという。
 
 戦時の民間人保護を定める国際人道法「ジュネーブ条約」は「危険な力を内蔵する工作物」であるダムや堤防、原発への攻撃を禁じている。破壊されれば極めて重大な被害を及ぼすからだ。ダム決壊による浸水も広範囲に及ぶ。人命や農作物、環境への被害、影響が気掛かりだ。
 
 ロシアは今もザポロジエ原発の占拠を続ける。ウクライナの反攻が本格化すれば原発周辺で戦闘が激化することも予想される。
 
 IAEAのグロッシ事務局長は事故防止に向け、原発攻撃の禁止や外部電源確保などの五原則を示し、ロシアとウクライナに順守を求めている。この原則は尊重されなければならない。
 
 この戦争ではロシアの非人道的な行為が目に余る。民間人虐殺、学校や病院など民間施設への無差別攻撃、さらに大勢の子どもたちの連れ去りと残酷極まりない。
 
 国際刑事裁判所(ICC)は子どもの拉致事件をめぐり戦争犯罪の疑いでプーチン大統領に逮捕状を出している。
 
 ダム決壊がロシア側の責任なら蛮行をさらに重ねたことになる。膠着(こうちゃく)状態だった戦況は再び戦火が拡大している。多くの人命が失われる。ロシアは即座に戦闘行為を停止し、撤退すべきである。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年06月08日  07:42:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:マイナカード 性急に運用拡大するな

2023-06-09 06:40:50 | 【政策・閣議決定・予算・地方創生・能動的サイバー防御・優生訴訟・公権力の暴力】

【社説①】:マイナカード 性急に運用拡大するな

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:マイナカード 性急に運用拡大するな

 健康保険証を廃止してマイナンバーカードに一本化する改正マイナンバー法など関連法が成立した後も、カードを巡るトラブルが相次いで発覚している。

 岸田文雄首相は信頼回復に向けシステムの再点検やミス防止策の徹底を河野太郎デジタル相に指示したが、問題点を徹底的に洗い出し、国民の不信が払拭されるまで運用拡大は見合わせるべきだ。
 
 マイナカードを巡ってはこれまでも、コンビニでの別人の証明書交付やマイナ保険証への他人の情報ひも付け、マイナポイントの誤った付与などのトラブルが明らかになり、改正法成立後も、希望しない人へのマイナ保険証発行や別人のカードへの公金受取口座登録などが次々と明るみに出た。
 
 国民の多くは特に、健康保険証がマイナ保険証に一本化され、現行の保険証が廃止されることへの懸念を募らせている。
 
 全国保険医団体連合会のアンケートでは、高齢者施設の九割以上が申請の代理や暗証番号を含むカードの管理はできないと答えた。独居や寝たきり高齢者のマイナ保険証管理はより困難だろう。
 
 個人情報のデジタル化には政府と国民との信頼が不可欠だが、マイナカードは前身となる住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)のカードと同様、国民側の必要性から生まれたものではない。
 
 カード取得率が低いと見るや、政府はポイント付与というなりふり構わぬ普及策を講じ、最後には「取得は任意」という前提を覆して、健康保険証廃止という事実上の強制に転じた。これではとても信頼は得られまい。
 
 これまでに発覚したトラブルの原因は、システムの不具合や人為ミスなど多岐にわたり、性急なカード普及策のしわ寄せがきていることは否めない。
 
 事業の受注企業は下請けに丸投げし、自治体の現場は混乱した。トラブルの一部は昨年発生したにもかかわらず、各担当大臣への報告は今年五月に入ってから。政府が監督責任を果たしていなかったことも混乱の一因だろう。
 
 政府は二〇二六年中にも券面に記載する情報を見直し、プライバシーに配慮した内容とする新しいカードの導入を検討しているという。それまでは性急に運用を拡大せず、制度の抜本的な見直しに充ててはどうか。少なくとも現行の健康保険証は維持すべきである。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年06月07日  08:07:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:カンヌで脚本賞 映画「怪物」からの警告

2023-06-09 06:40:40 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・暮らしに根差した民芸】

【社説②】:カンヌで脚本賞 映画「怪物」からの警告

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:カンヌで脚本賞 映画「怪物」からの警告

 フランスのカンヌ国際映画祭で役所広司さんが男優賞を受賞し、脚本賞は是枝裕和監督=写真=の「怪物」を担当した坂元裕二さんが受賞した。是枝作品の受賞は、二〇一八年の「万引き家族」での最高賞パルムドールなど五度目であり、今回ももちろん慶事だが、この作品が、痛々しい現実の反映である点にも留意したい。

 二日から公開された「怪物」のあらすじで、一つの鍵となるのは学校での「体罰」だ。作中では、それが実際にあったのかが焦点になるが、そもそもこの国の学校や家庭などに体罰が全くなければ、生まれ得なかった作品であろう。
 
 本来は自分たちを守り、育てるはずの大人の暴力で傷つき、命を失う子が多くいる。この映画は、体罰を根絶できない現状が前提であることを、まず心に留めたい。
 
 さらに本作では、体罰の告発を巡って、人々の間に起きる断絶が描かれる。人々が自分の信じたい情報だけ信じ、都合の悪い情報は排除しがちな欠点を突くのだ。
 
 そうした現代社会の傾向を助長するのが、ネットの普及だろう。人は、ものごとを判断する材料をかつてなく多く得る一方で、真偽不明の情報に踊らされてもいる。
 
 以前は「民主主義のお手本」のように見なされていた米国でも、大統領選で敗北したトランプ氏が「選挙結果は盗まれた」と主張。それをうのみにした人々が、連邦議会議事堂を襲撃した信じがたい事件は、記憶になお新しい。
 
 情報の過多と人々の断絶を巡る混迷は米国に限らず、日本でも、世界の各国でも起きている。その現実を深く憂える映画人の真剣な問いかけが映画「怪物」であり、またそれに共鳴した映画人からの応答が今回の贈賞であったろう。五輪か何かのように、「日本人の快挙!」と手放しで喜んでばかりではいられないゆえんだ。
 
 洋の東西を問わず、怪物とは、昔から人間に何かを告げる役目を果たしてきた。怪物を指す英語の「モンスター」は「警告」を意味するラテン語が語源だという。
 
 映画「怪物」が私たちに発する警告−。まずはじっくりと作品を観賞し、それを考えてみたい。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年06月07日  08:06:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【HUNTER2023.04.21】:福岡県大任町永原譲二町長「入札結果公表」の実態|隠蔽必至の不都合な真実

2023-06-09 05:25:20 | 【地方自治・都道府県市町村・地方議会・議員年金・デジタル田園構想・地方地盤沈下】

【HUNTER2023.04.21】:福岡県大任町永原譲二町長「入札結果公表」の実態|隠蔽必至の不都合な真実

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2023.04.21】:福岡県大任町永原譲二町長「入札結果公表」の実態|隠蔽必至の不都合な真実 

 入札結果非公表を国土交通省や総務省から「入札契約適正化法違反」と指摘され、改善指導を受けても方針を変えようとしなかった福岡県大任町の永原譲二町長が、先月14日に会見を開き、4月1日から公表を再開すると発表した。

 指定暴力団「太州会」の幹部が逮捕されたことで「状況が改善した」というのが方針転換の理由だというが、とんだ茶番。永原氏がどうしても隠蔽したい入札結果が公開される可能性は皆無に等しい。

 ■口先だけの「入札結果公開」

 「ヤクザが、落札業者に1,000円のそうめんを1万円で売りつけた」、「町民を守るため入札結果の非公開を続ける」などと強弁し、違法行為を正当化してきた永原氏。会見を開いて4月から入札結果を公表すると述べたが、同氏の発言内容を確認したところ、もっとも重要な、永原支配体制の下で繰り返されてきた公共工事の不正を示す情報は、依然として非開示状態になる可能性が高いことが分かった。

 大任町役場に確認した永原氏の発言内容を整理するとこうなる。

・今年4月からの入札結果を公表する。公表文書は役場玄関口にある掲示板に貼り出す。

・2021年7月から今年3月までの入札情報を公開するが、関係する16の業者に「開示・非開示」の是非を確認してからということになる。

・それ以前の入札結果については役場玄関口にあるの掲示板に貼り出していたため、違法性は問われていない。開示請求があれば検討する。

 結論から述べるが、これ口先だけの巧妙な隠蔽。永原氏が一番隠したかったダミー会社を使った業界支配の実態は表に出ない。

 永原氏が何としても隠したいのは、ハンターが同町に開示請求して不開示決定が出される以前――つまり2021年6月までに執行された町発注工事の情報だ。この事案の隠蔽に走った理由は一つしかない。

 ■「2021年7月から非公表」は真っ赤なウソ

 大任町は、町発注工事の入札結果や契約書、積算書、施工体系図など他の自治体ではあたりまえに開示される情報を「非開示」にしてきた。ほとんどの場合、非開示理由は「公にすると、人の生命、健康、生活、財産または社会的な地位の保護、犯罪の予防、犯罪の捜査その他公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施期間が認めることにつき相当の理由がある」(大任町情報公開条例 第7条第1項第3号)というもの。しかし、「1,000円のそうめんが1万円」というあやふやな話以外に具体的な事例が示されているわけではなく、法律で公開を義務付けられた入札結果や施工体系図まで非開示にする理由としては妥当性に乏しいものだった。

 町発注工事の実態のうち、露骨な隠蔽の対象となっていたのが業者の落札状況。どの自治体でも担当課の窓口に置いてある「入札結果表」を、大任町は一切公表していなかった。一昨年6月に同町の総務企画財政課に入札結果非公開の理由について確認した時、課長はこう説明していた。

 過去のことはあれなんですが、どうも、過去にそういった情報を基に、町内の業者の方に、反社会的勢力の方が、どうも圧力をかけたという事例がどうもあるみたいで、こういう法律のことをお話しいただいたのはその通りなんですが……」(同課課長)

 つまり、入札情報を非公開にしたのは、昨年6月よりはるか以前。永原氏は非公開にした時期を「2021年7月から」としてきたが、この主張自体が真っ赤なウソなのだ《*参照記事⇒福岡県大任町が違法行為|驚きの「入札結果非公開」》。組織ぐるみで公共工事の情報を隠蔽しているのは確かだろう。汚れまくっても永原町政が表に出せない情報とは、ダミー業者や町長側近を使った町発注事業の実態だ。

 ■ペーパー業者、6年間で約19億円受注

 下が、つい最近まで実際に存在した大任町発注工事の構図である。

 

 まず、町が発注する工事を町内に本社を置いた形の「ぺーパー業者」に「元請」として受注させる。昨年5月の段階でペーパー業者として確認できていたのは、8業者(既に複数が廃業)。法人登記していない業者もいて、5業者はいわゆる“一人親方”の形態だった。代表者がまったく別の業種の仕事をしており、実際の建設工事に従事していないケースもある。下が、8業者の経営実態である。

 ダミー業者が落札すると、実際の仕事は町長のコントロール下にある複数の建設業者に丸投げする。3次下請けあたりに町長の息子が代表を務める会社が入る場合もあるというが、同社は表面上は出てこない。なお、ぺーパー8業者のうち、法人1社を含む複数の業者が、大任町に関するハンターの取材・報道が始まった後に廃業したことも分かっている。

 「スコップ1本持たず、下請けに丸投げする」(町内の業界関係者)と言われてきた各業者が県に提出した工事経歴書の中から、「大任町発注」の工事分だけを抜き出したものが下の表である。

 平成27年頃から令和3年までに、ダミー8業者が計117件もの工事を独占的に受注し、受注総額は約19億円に上っていた。工事経歴書にはすべての受注実績が記載されているわけではなく、実際の受注件数や契約額は増える可能性がある。

■側近企業4社、5年間で21億円受注

 ぺーパー業者ではないが、ペーパー業者が丸投げした仕事を請負ってきた永原町長と近いとされる業者が、大任町から別に多くの工事を受注していることも分かった。下が、工事経歴書から確認できた各社の実績。平成28年から令和3年までの5年間に4社で91件、契約額で21億円を超える町発注工事を受注していた。

 

 大任町では、平成27年から令和3年にかけて、たった12の業者が208件もの工事を受注。契約額は約40億円以上に達していた。永原町長及びその周辺に従順な関係者だけが、税金を原資とする公共事業を独占している形だ。そして、永原町政が「役場の玄関口にある掲示板に貼り出していた」と主張している“2021年6月までに執行された町発注工事の入札情報”こそ、ダミー業者や町長の側近企業が公共工事の独占を行っていた時期のもの。開示したとたん、工事経歴書に記載されていなかった受注記録も明らかになるため、実態を隠したい永原氏は、この期間の情報開示については「検討する」などとあやふやな説明で逃げている。

 ところで、町側が4月から入札結果を貼り出しているという「掲示板」だが、下が先週の現場写真。重ねたままであったり、折れ曲がっていたりでいずれも何の文書か分からない。しかもガラス扉には鍵がかかっており、内容を確認することさえできない。まともな役所なら、これを「公表」とは恥ずかしくて言えないだろう。

  いずれ詳しく報じるが、福岡県警は、こうした異常な実態を知りながら永原町政にメスを入れることを避けてきた。避けるだけならまだしも、永原氏や地元国会議員の手先としての仕事をやっているフシがある。町議会も、一人を除いて、恐怖支配の追認者ばかりというのが実情だ。警察や議会が過ちを正す責任を放棄したことで、狂気の町政がいまも続いている。食い物にされているのは、町民なのだが……。(中願寺純則)

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・地方自治・福岡県・入札結果非公表を国土交通省や総務省から「入札契約適正化法違反」と指摘され、改善指導を受けても方針を変えようとしなかった福岡県大任町の永原譲二町長】  2023年04月21日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【HUNTER2023.03.15】:永原譲二大任町長陣営に事前運動の疑い

2023-06-09 05:25:10 | 【地方自治・都道府県市町村・地方議会・議員年金・デジタル田園構想・地方地盤沈下】

【HUNTER2023.03.15】:永原譲二大任町長陣営に事前運動の疑い

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2023.03.15】:永原譲二大任町長陣営に事前運動の疑い 

 町発注工事の入札結果を含む建設工事の関連文書を隠蔽するなど、独裁的手法の町政を続けている福岡県大任町の永原譲二町長の陣営に、公職選挙法が禁じる事前運動を行っていた疑いがあることが分かった。

 ■デタラメな政治資金処理

 下は、永原氏の支援団体「永原じょうじ後援会」が福岡県選挙管理委員会に提出した令和3年分の政治資金収支報告書。ハンターが注目したのは、赤いアンダーラインで示した3件の支出である。

 3月3日に、糸田町の印刷会社に対し58,000円の支払いを行っており、支出目的は「挨拶状 封筒 費」となっている。備考欄には「選挙の準備」とある。

 3月23日と24日には、やはり「選挙の準備」のために新聞広告費を、それぞれ77,000円支払っている。

 選挙に関する全ての収入と支出は、公職選挙法の規定に従って選挙運動費用収支報告書に記載することが義務づけられており、「選挙の準備」が事実なら、政治資金規正法が規定する政治資金収支報告書に記載するのは間違いだ。

 念のため、永原氏が令和3年3月に行われた大任町長選挙の際に町選管に提出した選挙運動費用収支報告書を確認したところ、新聞広告や挨拶状についての記載はなかった。この段階で、永原陣営の選挙運動費用収支報告書と政治資金収支報告書の両方に、虚偽記載の疑いが生じる。

 下の画像は、令和3年3月26日に、永原氏が読売新聞と西日本新聞の朝刊に掲載した「新聞広告」である。

 

 同年の町長選挙は、3月23日告示、28日投開票の日程で実施されており、3月26日の新聞広告にかかった費用は「選挙運動」のための支出として処理されなければならない。しかし、当該支出は永原じょうじ後援会の資金で賄われており、そうなると政治資金収支報告書も選挙運動費用収支報告書も、資金処理の実態を正確に記載していないことになる。つまりは、「違法」ということだ。

 ■告示前、「選挙準備」の挨拶状

 次に、政治資金収支報告書に記載しながら『選挙準備』として支出された「挨拶状」だが、ハンターは独自ルートで現物を入手している。

 町長選の日程を明示した上で、事務所開きや出陣式に言及。さらに、これらの行事を「後援会役員のみで執り行うことと致しました」としていることから、この文書は明らかに選挙戦の告知だ。それを、「選挙準備」として後援会の資金で印刷し、後援会の封筒に入れて郵送していた。事前運動を疑うべき状況であることは確かだろう。

 政治資金収支報告書の記載に間違いがないか確認するため報告書に記されていた連絡先に電話したところ、応対したのは永原氏の娘婿で、ファミリー企業の代表を務めている男性。政治資金収支報告書に記載された3件の「選挙準備」について“間違いではないか”と質したが、「そう書いてあるなら間違いではないでしょうが、今すぐには答えられない。帰って確認して連絡します」と話したきり、その後の連絡はなかった。

 暴力団幹部から息子が買った大分県内の別荘で、「賭け麻雀」という犯罪行為を常習的に行っていた永原氏は、自身が指定暴力団の企業舎弟であったにもかかわらず、「ヤクザが業者を脅すから、入札情報を開示しない」と屁理屈をこね、ダミー会社を使った建設業支配の実態を隠蔽してきた。

 その永原氏は14日、大任町役場で会見を開き、地元の指定暴力団「太州会」の幹部が逮捕されたことで「状況が改善した」という訳の分からない理由で、入札情報を開示すると言い出した。ただし、業者の賛同を得てからという非常識な条件を付けた上で、情報公開に応じるかどうかも「検討する」――。一体何のための会見なのか、取材した記者団から失笑が漏れていたというから、とんだ茶番と言うしかない。

 ちなみに、逮捕された太州会幹部から脅されたという建設会社の代表は、永原町長の側近ナンバーワン。大分県内にある永原ファミリーの別荘で、一緒に賭け麻雀を楽しんでいた人物である。

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・町発注工事の入札結果を含む建設工事の関連文書を隠蔽するなど、独裁的手法の町政を続けている福岡県大任町の永原譲二町長】  2023年03月15日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【HUNTER2023.03.03】:福岡県大任町・永原町政「支持率32%」の衝撃|町民からも厳しい視線

2023-06-09 05:25:00 | 【地方自治・都道府県市町村・地方議会・議員年金・デジタル田園構想・地方地盤沈下】

【HUNTER2023.03.03】:福岡県大任町・永原町政「支持率32%」の衝撃|町民からも厳しい視線

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2023.03.03】:福岡県大任町・永原町政「支持率32%」の衝撃|町民からも厳しい視線 

 国の指導に従わず、「町民を守るため」と主張して町発注工事の入札結果を隠し続けている福岡県大任町の永原譲二町長にとっては、まさに衝撃の調査結果である。

 ハンターは2月25日から26日にかけて、暴力支配が続く永原町政について、支持率を含めた意識調査を実施した。調査は無作為に抽出した大任町内の電話に架電する方式で、回答を得たものから割合をはじき出したが、その結果はハンターの予想とはかなり違っていた。

 ■町民からも厳しい視線

 永原町長については、常習化していた賭け麻雀、議長銃撃事件への関与、公共事業の関係文書隠蔽といった数々の悪行について報じてきた。議会まで牛耳り、他の自治体では当たり前のように行われている一般質問を止めてきたのも永原氏だと言われている。

 国から違法を咎められて改善指導を受けながら、「我関せず」とばかりに入札結果の非公表を続けているのは、複数のダミー会社を使った建設業界支配の実態を隠すためだ。こうした異常な永原町政を町民はどう見ているのか。ハンターは、先月25日から26日にかけて町内約1,000件の固定電話を対象にした意識調査を行った。

 盤石の支配体制を築き、周辺自治体の首長も黙らせるという実力者・永原譲二氏。一定の高さの支持があるものと見込んでいたが、結果はまるで違っていた。質問とそれぞれの答えの割合を示す。

Q1:あなたは、5期18年続いてきた永原譲二町長を支持しますか?
・「支持する」・・・32%
・「支持しない」・・・13%
・「どちらとも言えない」・・・55%

Q2:町政の現状についてお尋ねします。国は、大任町が町発注工事の入札情報などを非公表にしていることを「違法」と断定し改善指導を行っていますが、永原町長はこれに応じていません。違法な入札結果非公表は全国でも大任町だけですが、こうした事実をご存じでしたか?
・「知っている」・・・44%
・「知らなかった」・・・56%

Q3:違法な状態を続ける永原町長の姿勢についてお尋ねします。
・「改めるべき」・・・88.5%
・「改める必要はない」・・・12%

Q4:町議会では昨年まで6年間一般質問が行われていませんでした。報道を受けて一般質問が行われるようになりましたが、永原町長の新型コロナ感染や賭け麻雀といった疑惑に関する質問は議長が認めませんでした。こうした現状について、ご存じでしたか?
・「知っている」・・・30%
・「知らなかった」・・・70%

Q5:機能不全が指摘される大任町議会の姿勢について、あなたはどう思われますか?
・「改めるべき」・・・92%
・「改める必要はない」・・・8%

 ハンターの記者を驚かせたのは、永原氏への支持率の低さ。一般的に、現職首長への支持率は5割~6割が相場なのだが、永原氏への支持率はわずか32%に過ぎなかった。

 特筆すべきは、多くの関係者が永原氏の暴力支配に怯えてきた大任町で、「支持しない」と明確に答えた人が13%もいたこと。調査に応じた半数以上の人は「どちらとも言えない」だったが、積極的な永原支持は3割程度で、あとは町政に懐疑的か、あるいは「支持したくない」ということのようだ。

 次に、国が「違法」と断定し、改善指導を行ったあとも永原氏が依然として町発注工事の入札情報を非公表にしていることについては、4割以上が「知っている」と回答。「知らなかった」と答えた人も合わせ、89%が永原氏の姿勢を「改めるべき」と意思表示した。盤石と思われていた永原町政だが、町民からは厳しい視線が注がれている。

 ■議会の機能不全、新聞が報じないその原因

 昨年、町議会で6年ぶりに一般質問が行われるようになったが、永原町長の新型コロナ感染や賭け麻雀といった疑惑に関する質問を議長が認めようとしない現状については、3割の人が「知っている」、7割が「知らなかった」と答えた。機能不全状態の町議会については、「改めるべき」が9割を超えている。

 たしかに大任町議会は、一人を除いて、強大な権力を持つ永原氏にへつらう議員の集まり。二元代表制を理解していない連中ばかりがバッジをつけているというのが実態だ。3月議会で一般質問が行われないことを報じた地元紙・西日本新聞の記事を読んだが、永原氏のポチが書いた原稿らしく、一方的に議会を批判しただけの陳腐な内容だった。

 《一般質問また見送り》という見出しのあとには《福岡・大任町議会「通告ゼロ」》――。記事の最後には、「議員として恥ずかしくないのか」という町民のコメントが付いている。町議会だけを悪者扱いしているが、なぜ復活した一般質問に手を挙げる議員がいなくなったのか、という肝心なところには一切触れていない。

 質問通告しても、町長を追及する項目を議長が握りつぶして発言を封じるという信じられない状況を、この記事を書いた吉川という記者は知っているはずだ。しかし、吉川記者が現状に切り込み、いびつな町政になった原因を掘り下げたという話は聞いたことがない。

 それどころか、田川郡内にある8市町村で構成する「田川郡東部環境衛生施設組合」(組合長:永原譲二大任町長。田川市、大任町、川崎町、添田町、赤村、糸田町、福智町、香春町で構成)の市町村長らが、昨年4月に田川市内で開かれた「情報公開」に関する勉強会の内容に言いがかりをつけ、主催者側に謝罪を要求する「脅迫文書」を送り付けた際には、脅迫文書の発出を主導したとみられる永原町長の主張と脅された側の主張を同列に並べるという非常識なインタビュー記事を作成し、西日本新聞が脅迫者の立場を認めた格好となっていた(*「報道失格|西日本新聞が大任町長らの脅迫行為を追認」)。権力の暴走を止めるという、報道の重要な使命を放棄したクズ記事だった。

 権力寄りの報道ばかりになれば、政治や行政の実相は伝わらない。狂った永原町政を支えてきたのは、田川郡を担当するメディアの記者たちだったと言っても過言ではあるまい。

 分かりやすい例を挙げておく。ハンターが永原町政を追求するまでの6年間、大手メディアは一般質問が行われない町議会の実情を報じていなかった。3年目も4年目も5年目も、異常事態を報じる機会はがあったはず。しかしこの間、問題を提起する記事は、ただの一度も出ていない。大手メディアと永原町政は、共犯関係にあったということだ。

 メディアが報じるべきは、行政や議会が死に体になった原因だろう。議場での批判封じを主導してきたのが永原氏であることは衆目の一致するところであり、そこを論難しなければ現状は変わらない。今回の意識調査の結果は、歪んだ町政について情報が十分に伝わっていない現状を浮き彫りにすると同時に、メディアの報じ方次第で、住民が地方政治と正しく向き合えるようになることを物語っている。「支持率32%」は、永原氏の暴力支配に対する町民の答えなのだ。(中願寺純則)

 元稿:HUNTER 主要ニュース 政治・行政 【行政ニュース・地方自治・国の指導を無視し、町発注工事の入札情報を非開示にして「違法状態」を続けてきた永原譲二福岡県大任町長】  2023年03月03日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:BRICS拡大 途上国は中露に躍らされるな

2023-06-09 05:00:55 | 【TTP、BRICS、RCEP協定、IPEF、FTA、APEC、EPA他】

【社説①】:BRICS拡大 途上国は中露に躍らされるな

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:BRICS拡大 途上国は中露に躍らされるな

 国際秩序を踏みにじる中国やロシアのような強権国家が世界の安定した発展に貢献できるとは思えない。途上国は、中露への加担が何をもたらすのかを熟考すべきだ。 

 ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成する新興5か国(BRICS)が、南アで外相会議を開き、8月の首脳会議までに加盟国拡大の指針をまとめることを決めた。

 拡大の構想は昨年、中国が提案し、中東やアフリカなどの20か国以上が加盟に意欲を示しているという。今回の外相会議にはサウジアラビアやイラン、インドネシアなど13の非加盟国が招かれた。

 BRICSの人口の合計は、全世界の4割に達している。世界の国内総生産(GDP)の合計に占める割合も3割弱で、先進7か国(G7)の4割に迫る勢いだ。米欧日と新興国との、パワーバランスの変化を象徴している。

 BRICSでは、中国の国力が突出して大きい。加盟を希望する国は、中国の経済援助や、BRICSが主導する金融機関からの融資を期待しているのだろう。

 「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国が、国益を求めてBRICSに接近する動きを止めることはできない。

 問題は、中露がBRICSで強調する「米欧への対抗軸」や「世界の多極化」は、中露の利益が最優先される国際秩序を意味し、自由や法の支配といった普遍的価値の軽視につながることだ。

 加盟を検討している新興国・途上国は、自由で民主的な社会や国民生活の安定を守るためには、現行の国際秩序が不可欠であることを認識してもらいたい。

 BRICSを拡大する速度や規模を巡っては、前のめりな中露と慎重なインドの間で温度差があるとも指摘されている。

 「グローバル・サウス」の盟主を自任するインドは、米欧と中露のどちらにも傾斜しない中立的な外交姿勢をとる。ウクライナ侵略を巡る対露制裁は控える一方、日米豪との協力の枠組み「クアッド」には参加している。

 BRICS拡大を通じて中国が影響力を増大させ、主導権を握る事態を、インドは望むまい。拡大は一筋縄ではいかないだろう。

 岸田首相は5月のG7広島サミットにインドとブラジルの首脳も招待し、グローバル・サウスとの連携強化を確認した。日本は各国に普遍的価値の重要性を説きながら、経済や技術分野などで協力を深めることが大切だ。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年06月09日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:農政の基本方針 食の安全保障は厳しさを増す

2023-06-09 05:00:50 | 【食糧自給率・食品ロス・農業・JA・農家・化学肥料・米・牛・豚・養鶏・野菜】

【社説②】:農政の基本方針 食の安全保障は厳しさを増す

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:農政の基本方針 食の安全保障は厳しさを増す

 食料を輸入に頼る日本にとって、食料の安全保障は極めて重要な課題である。時代の変化に即して基本政策を見直し、食料の安定的な確保につなげていく必要がある。 

 農林水産省は農政の基本方針となる「食料・農業・農村基本法」の改正に向け、有識者会議の中間とりまとめを公表した。平時から食料安保の体制を整備すると掲げたのが特徴だ。来年の通常国会に改正法案を提出するという。

 1999年制定の現行法は、日本の経済力で必要な食料はいくらでも輸入できると考えてか、食料安保の問題意識が乏しかった。

 だが、近年は気候変動に伴う干ばつで不作が頻発するようになった。日本の購買力も低下した。そこに、コロナ禍とロシアのウクライナ侵略が追い打ちをかけた。

 食料の調達を巡る情勢は転換期にあると言える。平時から食料安保を重視するのは当然だろう。

 現行法は、農政の中心に「食料」自給率の向上を掲げてきた。

 しかし日本は、食料だけでなく、農業に欠かせない肥料の原料である尿素やリン酸などの大半を輸入で賄っている。ウクライナ危機で肥料が不足し、食料自給率には影響がないものの、一部の農業生産に支障が出る事態となった。

 法改正後は、肥料にも目標を設ける方向だ。下水を処理した汚泥には、肥料の原料が含まれているという。それを活用し、国産化を広げることが有効となろう。

 また、肥料の多くは、中国など特定の国への依存度が高い。調達先の多様化も図ってほしい。

 中間とりまとめは、農業の担い手確保の重要性も強調した。農家は高齢化しており、現在の年齢構成から推計すると、農業を主な仕事とする人は2022年の約120万人から、20年後に30万人程度まで減る可能性があるという。

 ITやロボットの活用で省力化を進めることが不可欠だ。国や研究機関、IT企業などが一体となり、技術革新を加速させたい。

 稼げる農業にして、働き手にとって魅力ある産業とすることも大切だ。そのためには農産物の付加価値を高めるとともに、国が輸出を支援していかねばならない。

 中間とりまとめは、紛争や凶作など有事への対処も課題とした。国が農家に穀物の増産を指示したり、売り渡しを求めたりすることを想定し、法整備を検討する。

 ただ、私権の制限につながりかねないため、丁寧に論議すべきだ。不利益を受ける人の救済策も含めて協議してもらいたい。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年06月09日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:ダム決壊 大惨事生んだ責任は露にある

2023-06-09 05:00:45 | 【ロシア・北方領土・シベリア開発・サハリン石油天然ガス・ウクライナ侵攻犯罪】

【社説①】:ダム決壊 大惨事生んだ責任は露にある

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:ダム決壊 大惨事生んだ責任は露にある

 ロシアの侵略と占領がなければ、起きえなかった大惨事である。直接の原因が何であれ、一義的な責任がロシアにあることは明白だ。

 ロシアが軍事占拠しているウクライナ南部カホフカ水力発電所のダムが決壊した。

 ドニプロ川の水量が急増し、下流域で洪水が起きた。被災者は数万人に上り、死傷者の増加が懸念されている。電力や水資源の喪失により、周辺地域が長期間、打撃を受けることも避けられない。

 こうした深刻な事態が起きるのを防ぐために、戦争犯罪を規定するジュネーブ条約は50年近く前から、ダムや原子力発電所の攻撃を「住民に重大な損失をもたらす」として禁じてきた。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアが洪水を兵器として利用するために、ダムを意図的に破壊したと非難した。主張通りなら、言語道断の戦争犯罪だ。

 ロシア側は「ウクライナによる破壊工作だ」と反論しているが、根拠を示していない。ウクライナが、自国の国民や領土への甚大な被害を顧みずに、ダムを攻撃したとは考えにくい。

 意図的な破壊ではなく、ダムの強度が損なわれて決壊した可能性も指摘されている。仮にそうであっても、ロシア軍がダムの管理や水位の調整を適切に行わず、大惨事を招いた責任は免れない。

 ロシアが、占拠した重要インフラ(社会基盤)施設の管理を軍人任せにして危険にさらしたのは、ダムから約120キロ・メートル離れたザポリージャ原発も同じだ。

 国際社会は、ダムや原発の周辺地域を非軍事化し、国際管理に委ねることを要求してきたが、ロシアは拒み続けている。

 国際刑事裁判所(ICC)や国連機関が現地に入り、原因などを徹底的に調査することが重要だ。洪水の被害者に対する人道支援の体制も整備する必要がある。

 ザポリージャ原発は全原子炉の運転を停止しているが、核燃料の冷却水はダムの貯水池から引いている。国際原子力機関(IAEA)は現時点で冷却が止まる危険はないとしている。万一に備え、代替水源の確保を急いでほしい。

 今回の事態は、ウクライナが大規模な反転攻勢の準備を進めているなかで起きた。ロシア軍をウクライナから撤収させ、領土の奪回を果たさなければ、常にこうした危機にさらされることになる。

 国際社会は結束し、ウクライナ軍の反撃が成果を収めるよう、支援を強化せねばならない。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年06月08日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:選挙演説の安全 警察と政治家の連携が重要だ

2023-06-09 05:00:40 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【社説②】:選挙演説の安全 警察と政治家の連携が重要だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:選挙演説の安全 警察と政治家の連携が重要だ

 政治家の選挙演説は、有権者に直接、主張を届ける重要な機会だ。警察と政治家が事前に十分協議し、言論の自由と安全の双方を守る体制を整える必要がある。

 和歌山市の選挙演説会場で、岸田首相に爆発物が投げ込まれた事件について、警察庁が警備体制を分析した報告書をまとめた。

 会場の漁港に集まった聴衆の確認方法に問題があったと結論づけ、演説会を主催する自民党和歌山県連側と綿密に協議しておくべきだったと総括した。

 和歌山県警は、県連から「聴衆は漁協関係者のみで、部外者が来ても顔を見て識別できる」と説明されたという。そのため、聴衆の確認を漁協スタッフに任せ、金属探知機も設置しなかった。

 主催者としては、物々しい雰囲気を避け、できるだけ近くで岸田首相の演説を聴いてほしかったのだろう。その結果、爆発物を持った男の接近を許してしまった。

 安倍晋三・元首相が銃撃された事件から1年足らずの間に、現職の首相が襲われたことは、極めて重大な事態である。警備体制の立て直しが急務だ。

 今回特に深刻なのは、安倍氏の銃撃事件を踏まえ、警察庁が県警の警護計画を事前にチェックしていたことだ。再発防止策が機能しなかったと言わざるを得ない。

 警察は今後、できるだけ屋内で演説会を開くよう政党側に要請するとしている。屋内であれば、出入り口で氏名や参加証を確認し、手荷物検査もできるからだ。

 これに対し、政治家からは「街頭でないと、無党派層に呼びかけるのは難しい」と難色を示す声が出ている。有権者と握手をしたいという人も多いはずだ。

 警察と政党は、会場の特徴や聴衆の規模などの情報を共有し、最適な警備方法を探ってほしい。首相らの場合は特に厳重な警備が必要になる。街頭では聴衆と距離を取り、防弾シールドを設置することなども検討に値しよう。

 米国では多くの選挙演説を屋内で行い、手荷物検査や入場者の管理を徹底しているという。

 最近はSNSで選挙活動の日程などが告知され、地元の有権者以外も多く会場に来るようになった。顔を見て部外者を見分けるような方法は難しくなっている。

 インターネット上には、銃や爆弾の作り方が載っている時代である。従来の選挙演説の常識にとらわれず、常に危険人物が紛れ込んでいるという前提で、会場の安全確保に努めることが大切だ。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年06月08日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【社説①】:保険証の廃止 見直しは今からでも遅くない

2023-06-09 05:00:35 | 【政策・閣議決定・予算・地方創生・能動的サイバー防御・優生訴訟・公権力の暴力】

【社説①】:保険証の廃止 見直しは今からでも遅くない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:保険証の廃止 見直しは今からでも遅くない

 身近な健康保険証を廃止し、トラブルが続出しているマイナンバーカードに一本化するのは無理があろう。廃止方針をいったん凍結し、国民の不安を 払拭ふっしょく するのが筋だ。

 2024年の秋に保険証を廃止し、マイナカードに一本化する関連法が成立した。来秋以降、患者はマイナカードを医療機関に提示し、診療を受けることになる。

 政府は行政のデジタル化を進めるため、マイナカードの普及を図っている。保険証の機能を持たせるのもその一環だ。

 だが、マイナカードを巡るトラブルは後を絶たない。コンビニで別人の住民票が交付されたり、給付金の受取口座が、別人の口座で登録されていたりした。

 とりわけ深刻なのは、マイナ保険証に関する問題だ。他人の情報がカードにひもづけられていたケースが7300件あった。

 行政文書は、あとで修正できるかもしれないが、医療に関する手違いは、国民の健康や生命に重大な影響を及ぼす恐れがある。政府は事態を軽視してはならない。

 そもそも政府は昨年6月の段階では、現行の保険証とマイナ保険証の「選択制」を打ち出していた。希望すれば、カードだけで受診を可能にするという構想だ。だが、河野デジタル相が10月、唐突に来年秋の保険証廃止を表明した。

 カードを持たない人には、健康保険組合などが「資格確認書」を発行するという。しかし、確認書の取得は本人の申請が前提だ。1年ごとに更新する必要もある。

 政府は、病気や障害を理由とした代理申請も認める方針だが、具体的な運用は検討中という。

 現在、何ら不都合なく使えている保険証を廃止し、事実上、カードの取得を強制するかのような手法が、政府の目指す「人に優しいデジタル化」なのか。

 マイナ保険証の不具合が相次いでいることを踏まえ、医療関係団体などは保険証の廃止に反対している。医療現場から懸念の声が上がるのも無理はない。

 法律が成立したからといって、制度の見直しは不可能だ、と考えるのは早計だ。

 政府は1980年、納税者番号の一種「グリーンカード制度」を導入する法律を成立させたが、政財界から批判が噴出したため、5年後に法律で廃止した。

 マイナ保険証の見直しは、今からでも遅くはない。トラブルの原因を解明し、再発防止に努めるのが先決だ。当初の予定通り、選択制に戻すのも一案だろう。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年06月07日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:裁判記録の廃棄 歴史的資料の保存を重視せよ

2023-06-09 05:00:30 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【社説②】:裁判記録の廃棄 歴史的資料の保存を重視せよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:裁判記録の廃棄 歴史的資料の保存を重視せよ

 社会に大きな影響を及ぼした事件の記録は、国民の共有財産である。裁判所は、歴史的価値のある裁判記録を後世に残すための体制づくりを急がなければならない。

 神戸市で1997年に起きた連続児童殺傷事件などの記録が廃棄されていた問題で、最高裁が調査報告書を公表した。

 廃棄の経緯を調べた87件の少年事件や民事訴訟の記録のうち、70件以上が裁判所内で保存すべきかどうかさえ検討されず、機械的に廃棄処分されていたという。

 最高裁は内規などで、少年事件の加害者が26歳になるまで記録を保存し、その中で社会の注目を集めた史料的価値の高い事件については、事実上の永久保存(特別保存)にするよう定めている。

 事件の記録は、犯罪の社会的背景を考察し、再発防止を図るのに役立つ。内容の検討さえせずに廃棄するなど、各裁判所の対応はあまりにずさんだった。なぜ家族が犠牲になったのかを知りたいと願う遺族の感情も傷つけた。

 報告書は、記録の廃棄が相次いだ原因について「裁判所は紛争解決が第一の役割で、記録は保存期間が過ぎれば原則廃棄と位置づけていた」と指摘した。

 最高裁は30年前、保存する記録の量が膨大になるのを防ぐよう各裁判所に通知した。これが保存に消極的な姿勢につながった。

 今後は歴史的、社会的な意義のある記録を「国民共有の財産」と位置づけて浸透を図るという。各裁判所の職員らは、「廃棄ありき」の意識を改めねばならない。

 年月がたてば事件の歴史的評価が曖昧になり、職員も入れ替わる。永久保存の手続きは、加害者が26歳になる際ではなく、裁判終結時に確実に行うことが重要だ。

 最高裁は今後、第三者委員会を設け、記録の適切な保存に向けた体制づくりに取り組むという。

 事件の記録が廃棄された背景には、保管場所が不足していたという事情もあった。2020年に永久保存の基準が明確化され、保存件数も増えている。

 保管場所の確保は、差し迫った課題だ。永久保存を決めた記録を国立公文書館などに移管することも検討に値するだろう。

 司法の分野はIT化が進められている。記録がデジタル化されれば、保存も容易になるはずだ。

 保存した事件記録を社会でどう生かしていくのか。関係者のプライバシーに配慮しつつ、学術研究などに活用できるような開示の仕組みも考えてほしい。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年06月07日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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