【余禄】:今から8年前、28歳でIT企業から転じて家業の町工場に入った佐藤修哉さんは…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【余禄】:今から8年前、28歳でIT企業から転じて家業の町工場に入った佐藤修哉さんは…
今から8年前、28歳でIT企業から転じて家業の町工場に入った佐藤修哉さんは、先の見えない厳しい経営状況にあると知って驚いた。東京・目黒で祖父の代から60年以上続く金属加工会社だ
▲得意としてきたのは「銀ロウ付け」という特殊な溶接技術。医療などの精密機器に欠かせず、手作業で0・1ミリ単位の精度が求められる。だが職人の高齢化や中小企業の不振で技の継承も危うくなっていた
▲「ものづくりは男の世界」という固定観念を打ち破ることに挑んだ。15人ほどの従業員はベテラン男性ばかり。ものづくりが好きな女性は多い。やる気さえあれば性別は関係ない、と新卒女性の採用に踏み切った
▲職人たちは一斉に反発した。「何も知らないやつの面倒なんか見ないぞ」。説得しても通じず諦めかけた。だが、しばらくすると、怒鳴り声以外ほぼ会話がなかった工場の空気が一変した
▲女性たちは技術を身につけようと一生懸命聞いて回った。仏頂面だった職人もひたむきな姿を見て積極的に教えるようになった。女性は6人に増え、佐々木彩佳さん(23)は「憧れていた仕事をプロに学べて楽しい。新製品の開発にもチャレンジしたい」と意気込む
▲優れた技術で日本経済を支えてきた中小企業だが、コロナ禍や物価高に苦しんでいる。逆境でも佐藤さんの工場は女性たちの前向きな姿勢に後押しされ、新たな取引先を開拓できた。経営も立ち直り、黒字が続く。何より大切な技が若い世代に受け継がれつつあるのがうれしい。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2022年05月30日 02:02:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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