《社説②・11.20》:ロ領へ攻撃容認 停戦の見通し描けるのか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・11.20》:ロ領へ攻撃容認 停戦の見通し描けるのか
米バイデン政権がウクライナに対し、米国製長射程兵器を使ったロシア領内への攻撃を容認した。
ロシアを過度に刺激することを警戒し、ウクライナが繰り返し求めても応じてこなかった。北朝鮮がロシア軍側で参戦したことから、方針を転換した。
これを受けてウクライナ軍が、米国供与の地対地ミサイル「エイタクムス」でロシア西部の軍事拠点を攻撃したと報じられた。
ロシアのプーチン大統領は、攻撃容認は「北大西洋条約機構(NATO)諸国がロシアと戦うことを意味し、紛争の本質を変える」とけん制し、核攻撃の可能性もちらつかせてきた。
緊張が一層高まり、歯止めなく戦争が拡大しかねない。ロシアが暴走する事態は食い止めなければならない。
ウクライナはこれまで、前線から遠いロシア領内の軍用飛行場や補給拠点を攻撃する長射程兵器が不可欠だと欧米に訴えてきた。
米国が慎重姿勢を崩さない中で、越境攻撃したロシア西部クルスク州でも、制圧地の半分程度をロシアに奪還されたもようだ。ウクライナは長射程兵器によって劣勢挽回を図るとみられる。
同州には1万人以上の北朝鮮兵が派遣されているとの分析がある。北朝鮮の参戦は戦火を広げるばかりか、見返りの軍事支援によって北東アジアの緊張も高める。米国が容認に転じたのは警告の意図もあるとされる。
来年1月に米大統領に返り咲くトランプ氏は、ウクライナへの軍事支援に消極的だ。戦争の早期終結に動く考えも示す。
占領された領土の割譲をウクライナに強いるとの見方が広がる。全領土の奪還を目指すウクライナの立場と相いれず、ロシアの侵略を是認することにもなる。
バイデン政権が長射程兵器の使用を認めたのは、残る任期で戦況を好転させ、ウクライナが優位な立場で停戦交渉に臨む状況をつくる狙いがあるとみられる。
ウクライナは「必要な場面で必要な兵器が届かない」とし、バイデン政権に不満を募らせてきた。再三の求めに応じたとはいえ、局面の転換につながるかは見通せない。外交面でも、トランプ氏が返り咲き、対ロ制裁を強めてきた先進7カ国(G7)の結束が揺らぐ可能性がある。
ロシアの侵攻開始から千日を迎えた。終結の見通しを描くどころか、負の連鎖が止まらない極めて危うい事態に陥っている。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月20日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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