《社説①・11.19》:日中首脳会談 信頼を築く足掛かりに
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・11.19》:日中首脳会談 信頼を築く足掛かりに
良好な外交関係に発展させる契機にしなければならない。
石破茂首相が訪問先のペルーで、中国の習近平国家主席と初会談した。東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を巡り、中国が全面停止してきた日本産水産物の輸入再開を着実に履行すると申し合わせた。
輸入再開を巡っては、日中両政府が9月、中国が国際原子力機関(IAEA)の枠組みの下で海水などの監視活動に参加し、輸入規制を段階的に緩和することで合意している。習氏が輸入再開に言及したことで、具体的な手続きが加速していく可能性がある。
会談では、日中の共通利益を拡大する「戦略的互恵関係」の推進や、建設的で安定的な関係を構築する方向性も確認。今後も会談を重ねることでも合意した。
一定の成果があった背景に、トランプ米次期大統領就任に備える思惑が中国にあったとみられる。
トランプ氏は大統領選で、米国への全輸入品に10~20%、中国からの輸入品には60%の関税を課すと主張した。国務長官には対中強硬派のマルコ・ルビオ上院議員を指名することも明らかにしている。米中対立が激化するのは必至で、国内経済の停滞が続く中国にとって影響は大きい。
中国には日本を含めた多面的な外交を展開し、トランプ次期政権の保護主義や単独主義に反対する国際的な機運を高めたい思惑があるのだろう。
会談はアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議に合わせて実施された。習氏が出席する数少ない国際会議である。毎回、日本側が習氏との会談を模索するが、今回は「中国側から打診があった」という。日本を引き寄せたいという意向は明白だ。
習氏は今回、韓国の尹錫悦大統領ともリマで2年ぶりに対面で会談し、安定した関係発展を確認した。中国は米国との連携を強める尹政権と関係が悪化していた。
バイデン米政権が展開してきた同盟国による対中包囲網を突破したい思惑も透ける。
石破政権には外交手腕をアピールする機会にしたい狙いがあるだろう。習氏と信頼を築いて、中国とトランプ次期政権の仲介役を目指すべきだ。
ただ、台湾などを巡る中国の覇権主義的な行動は激しくなる一方だ。対米戦略では石破首相が模索したトランプ氏との会談が見送られた。石破政権が米中の思惑に翻弄(ほんろう)され、役割を見いだせない事態に陥る懸念も拭えない。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月19日 09:31:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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