【兵庫県議会】:「告発者潰し」と言われかねない状況うかがえる…百条委員会の調査報告書要旨
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【兵庫県議会】:「告発者潰し」と言われかねない状況うかがえる…百条委員会の調査報告書要旨
兵庫県の斎藤元彦知事を巡る内部告発問題で、県議会百条委員会が4日に公表した調査報告書の要旨は次の通り。
◆【告発文書の調査結果】

〈1〉斎藤氏の命を受けた片山安孝副知事(当時)が、「ひょうご震災記念21世紀研究機構」の五百旗頭真理事長(故人)に、副理事長の解任を通告。突然の通告に五百旗頭氏は憤慨し、翌日(2024年3月6日)に急逝した。仕打ちが命を縮めたことは明白
24年2月29日、片山氏が五百旗頭氏を訪ね、副理事長職の整理などについて説明した。このことは斎藤氏も了承していた。五百旗頭氏は、立腹して眠れなかったと職員に話した。
文書は、面談日が誤っており、亡くなった要因も臆測だ。ただ、五百旗頭氏が立腹し、眠れなかったと言っていたとの証言から、大きな心理的ストレスを与えたと推察できる。文書はおおむね事実と言えるが、一部で事実誤認、臆測、疑いにとどまるものも含まれている。
〈2〉21年の知事選で、県職員4人が知人に投票依頼するなどの事前運動を行った
職員のいずれも事前運動を手伝ったことを否定しており、違法行為は認められなかった。
〈3〉斎藤氏が県幹部を随行させて各地の商工会に出向き、次の知事選に向けた投票依頼をした
斎藤氏が経済団体を訪問し、原田剛治・産業労働部長が随行していたことは確認できたが、投票依頼だったかは確認できなかった。
〈4〉斎藤氏のおねだり体質は県庁内でも有名。知事の自宅には贈答品が山のように積まれている。もらい物は全て独り占め
原田氏は、企業からコーヒーメーカーを受け取り、返却していなかったことを、昨年3月21日に斎藤氏に謝罪したと証言した。片山氏らも認めているが、斎藤氏は記憶はないと証言しており、食い違いがある。コーヒーメーカーを県庁内で保管していた状況は、外形的には斎藤氏がもらったとみられても仕方がない。斎藤氏は、贈答品の多くを自宅へ持ち帰っていたことを認めており、贈答品のPR等がなく、個人として消費していたと捉えられても仕方がない。こうした行為が「おねだり」との臆測を呼んだことは否定できない。
文書は、一部で事実誤認や臆測も含まれているが、一定の事実が記載されており、虚偽とまでは言えない。
〈5〉片山氏が商工会などに圧力をかけ、斎藤氏の政治資金パーティー券を大量購入させた
23年7月の政治資金パーティーで、斎藤氏がパーティー券販売などを片山氏へ依頼したこと、片山氏が県信用保証協会理事長らに商工会議所等へ名簿を取りに行かせたことは確認できたが、圧力でパーティー券を購入させた事実は確認できなかった。信用保証協会理事長が、その身分を示したうえで商工会議所と接触している以上、立場を利用して疑念を抱かれる行為をとっていたことは否めない。
文書は一部で事実誤認や臆測も含まれているが、一定の事実が記載され、虚偽の内容とまでは言えない。

〈6〉阪神・オリックス優勝パレードの寄付集めで、金融機関への補助金を増額し、募金としてキックバックさせた
信用金庫への補助金を募金としてキックバックさせたことは確認できなかった。
片山氏はパレード直前、信用金庫へ協賛金の協力を依頼し、2000万円の協賛金を集めた。補助金が増額された時期と符合することや、メリットもない中で協賛金への協力が1日でとりまとめられたことから不自然な点も見受けられるが、片山氏らは否定。信用金庫の理事長も否定した。
文書は一部で事実誤認や臆測も含まれているが、一定の事実が記載され、虚偽の内容とまでは言えない。背任容疑の告発状が県警に受理されており、捜査当局の対応を待ちたい。
〈7〉斎藤氏のパワハラ
斎藤氏が執務室や出張先で職員に強い叱責をしたことは事実と評価でき、文書内容はおおむね事実と言える。「パワハラを受けた」との証言はなかったが、(厚生労働省の)指針が定めるパワハラの定義の要素を全て満たすものである可能性がある。斎藤氏の非常に強い叱責や理不尽な言動によって、職員が忖度(そんたく)せざるを得ず、ルールにのっとった県民本意の職務遂行がかなわなくなっている面がある。
斎藤氏の言動は、パワハラ行為と言っても過言ではない不適切なものだった。
斎藤氏は「業務上必要な範囲の指導や注意をした」との認識を変えていない。不適切な指導が複数あったことを知事自身が認めることが重要だ。組織のトップとして、自身の言動が組織に及ぼす影響を常に意識し、多様な意見に耳を傾けることで率先して働きやすい職場づくりに努めること。
【公益通報者保護に関する調査結果】
〈1〉公益通報者保護法違反について
斎藤氏は(文書の内容に)真実相当性が認められないと説明しているが、真実相当性は(文書が)公益通報に当たるかどうかと関係ない。告発者の公用メールと公用パソコンに保存された資料に基づき、文書配布は不正な目的で、公益通報ではないと判断したという証言がある。しかし、公益通報ではないとの判断は調査後に行われるべきものであり、通報時ではない。
文書は同法の外部公益通報に当たる可能性が高い。
文書の事実確認より通報者の特定を優先した調査や、プライバシー情報の漏えいなどは、現在も違法状態の可能性がある。
〈2〉行政として取るべき対応
知事及び幹部が当事者である場合、独立性を担保するために第三者に調査を委ねるべきだった。初動対応は、県民の不信感を招く不当なものだったと考える。
斎藤氏は3月27日の記者会見で、(告発者の)処分を予告し、文書を「うそ八百」と発言した。今回の問題が大きく取り上げられることになったのは、この記者会見によることが大きい。
井ノ本知明・総務部長(当時)が(告発者の)プライバシー情報を複数の議員に見せていた。「告発者潰し」があったと言われかねない状況がうかがえる。
県の対応には看過できない問題があったと言わざるを得ない。
今後は、常に公益通報の可能性を念頭に対応することが求められ、知事を含めた幹部が法に対する理解を深める機会を定期的に設けることが不可欠。
プライバシー情報の漏えいについては、第三者による調査結果を速やかに公表し、刑事告発も含めた厳正な対応を早急に求める。
公益通報者保護法の指針にある「不利益な取り扱いが行われた場合、救済・回復など適切な措置を取る」に基づいた措置が必要だ。
【総括】
斎藤氏は記者会見で文書を「事実無根」「うそ八百」と評したが、約9か月にわたる調査で、文書に一定の事実が含まれていたことが認められた。
今回の問題を振り返ると、全体を通して、客観性、公平性を欠いており、法令の趣旨を尊重して社会に規範を示すべき行政機関の行う対応としては大きな問題があったと断ぜざるを得ない。
斎藤氏には、報告書を重く受け止め、厳正に身を処していくことを期待する。県の混乱と分断は憂うべき状態にあることを真摯(しんし)に受け止めなければならない。県民に対して過不足のない説明責任を果たすことを切に願う。
元稿:讀賣新聞社 主要ニュース 社会 【疑惑・地方自治体・兵庫県・斎藤元彦兵庫県知事の疑惑告発文書問題で、県議会調査特別委員会(百条委)】 2025年03月04日 16:24:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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