《社説②》:大相撲で相次ぐ暴力 角界挙げて悪弊絶たねば
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:大相撲で相次ぐ暴力 角界挙げて悪弊絶たねば
大相撲は暴力と決別したはずではなかったか。今の体質を抜本的に改めなければ、角界は社会から取り残されてしまうだろう。
宮城野部屋の幕内・北青鵬が後輩力士に暴行を重ね、22歳で角界を去った。日本相撲協会は引退勧告処分が相当との判断を示した。
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2022年夏から、同じ部屋に所属する2人の力士の顔面や背中を殴打したり、ほうきの柄で尻をたたいたりしていたという。殺虫剤スプレーに点火した炎を体に近づける危険行為もあったとされる。なぜ見過ごされてきたのか。
![引退に追い込まれ、記者会見で頭を下げる当時の日馬富士(手前)と伊勢ケ浜親方=福岡県太宰府市で2017年11月29日午後2時39分、矢頭智剛撮影](https://cdn.mainichi.jp/vol1/2024/03/01/20240301ddm005070073000p/9.jpg?2)
元横綱・白鵬の宮城野親方は事態を把握しながら、協会へ速やかに報告していなかった。監督責任を問われ、「委員」から「年寄」への2階級降格処分を受けた。師匠として認識が甘かったと言わざるを得ない。
07年には時津風部屋で新弟子の暴行死事件が起きた。17年には当時横綱の日馬富士が同じモンゴル出身の後輩力士に酒席でケガをさせ、引退に追い込まれた。
そのような状況を重く見た協会は、18年に「暴力決別宣言」を発表し、禁止規定も設けた。しかし、それ以降も力士や親方の暴行が次々と明るみに出ている。
番付が全てという角界には「強い者こそ正義」との風潮がある。後輩力士や付け人への理不尽な行為も「かわいがり」という言葉で許容されてきた面は否めない。
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暴力問題の再発防止についての研修会で日本相撲協会の八角理事長の講話を聞く当時の横綱・白鵬(前列中央)ら=東京・両国国技館で2017年12月21日午後1時34分、長谷川直亮撮影
競争の中から強い力士が育ってくるのは確かだ。だが、その陰で悪質な振る舞いが横行するようでは、大相撲の世界を目指す子どもたちは減っていくだろう。
今年の初場所で番付表に載った力士数は599人で45年ぶりに600人を下回った。少子化の影響などから新弟子不足は深刻で、親方衆は危機感を募らせている。
暴力根絶への対応は、力士に研修を行う程度では不十分といえる。協会はまず相撲部屋の環境を点検し、古くからの習慣を改めるべきだ。
その上で内部通報制度を周知徹底させるなど、暴力を未然に防ぐ仕組みを整える責任がある。
暴行に及んだ力士を辞めさせ、親方に処分を下しただけでは、体質改善は難しい。角界全体の意識を変え、悪弊を絶つ覚悟が今度こそ求められている。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年03月01日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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