《社説①・12.23》:三菱UFJ貸金庫窃盗 信頼損ねるずさんな管理
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.23》:三菱UFJ貸金庫窃盗 信頼損ねるずさんな管理
安全なはずの貸金庫から、長年にわたって多額の金品が盗まれていた。銀行業の基盤である信頼を損ねる深刻な事態だ。
メガバンク最大手、三菱UFJ銀行の40代行員(懲戒解雇)が2020年4月から4年半にわたり、東京都内2支店の貸金庫に保管されていた顧客の金品を盗んでいた。確認できただけで、被害は約60人分、十数億円に上る。
貸金庫は、顧客が持つ鍵と、銀行側が保管する鍵の二つがそろわないと開けられない。ただ、銀行側には顧客が紛失した場合に備えた「予備鍵」があり、今回はこれが悪用された。
窃盗が繰り返された背景には、ずさんな管理体制がある。
元行員は支店で貸金庫業務を一手に担っていた。他の行員から怪しまれずに、予備鍵を使って金庫を開けられたという。
半年ごとに実施される定期点検も形骸化していた。
予備鍵は顧客ごとに封筒に入れて保管されていたが、封筒の数を点検するだけで、開封された形跡の有無まではチェックしていなかった。被害に気づいた顧客が今年10月末に問い合わせるまで、不正は発覚しなかった。
今後は予備鍵を全国3カ所の本部で一括管理するという。再発防止や被害者補償に万全を期すのは当然だが、今回の事案を一個人の不正に矮小(わいしょう)化することがあってはならない。
半沢淳一頭取が記者会見したのは、問題を把握してから約1カ月半もたった12月中旬だ。「信頼、信用という銀行ビジネスの根幹を揺るがす事案と受け止めている」と述べたが、鈍い対応からは危機意識の薄さがうかがえる。
同行を巡っては、顧客情報を無断でグループの証券会社と共有した問題も明らかになっている。経営責任を明確にしなければ、顧客の信頼回復はおぼつかない。
金融界では、証券最大手、野村証券の元社員が、顧客宅から巨額の現金を奪った疑いで、強盗殺人未遂などの罪で起訴される事件も起きている。
政府は「資産運用立国」を推進している。だが、銀行や証券会社の不祥事体質が改められなければ、国民が安心して投資できる環境は整わない。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月23日 02:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます