《余録・12.24》:母親が宮中の厩舎の戸に…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・12.24》:母親が宮中の厩舎の戸に…
「母親が宮中の厩舎(きゅうしゃ)の戸に当たった時に生まれた」。日本書紀が記す聖徳太子(厩戸皇子(うまやどのおうじ))の誕生説話だ。明治の歴史家、久米邦武は馬小屋で生まれたキリストの降誕伝説の影響を指摘した。真偽は別に歴史のロマンを感じる話だ
▲歴史上のキリスト教伝来は16世紀。宣教師フロイスは、堺の町で行われたクリスマスの儀式で敵対する軍勢の武士たちが「互いに大いなる愛情と礼節をもって応接した」と記した。「日本にもクリスマス休戦があった」という俗説を生んだ逸話だ
▲実際のクリスマス休戦の始まりは第一次大戦。1914年12月24日のイブに自然発生的に起きたという。西部戦線で対峙(たいじ)し、疲弊していた英独兵士らが互いに聖歌を歌い「戦わない」と書いた看板を掲げた
▲それから110年。ローマ教皇は「武器が沈黙し、クリスマスキャロルが鳴り響きますように」と祈った。しかし、ミサイルやドローンが飛び交うウクライナの戦場にそんな気配はない
▲親露派とされるハンガリーのオルバン首相がクリスマス停戦を提唱しても、ウクライナにはありがた迷惑のようだ。ガザ停戦協議に期待がかかるが、信じる宗教が異なるイスラエルやパレスチナに教皇の声がどこまで届くものか
▲広島、長崎の原爆被爆者で作る日本被団協がノーベル平和賞を受賞した記念すべき年だ。街のライトアップを眺め、ディナーやケーキを楽しんだ後は、ジョン・レノンが歌う「ハッピークリスマス(戦争は終わった)」に耳を傾けてはどうだろう。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2024年12月24日 02:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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