《社説②・12.23》:6カ国でサッカーW杯 肥大化の課題に目配りを
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.23》:6カ国でサッカーW杯 肥大化の課題に目配りを
大会の肥大化を印象づける決定である。2030年のサッカー・ワールドカップ(W杯)が3大陸にまたがる6カ国で開かれることになった。
欧州のスペインとポルトガル、アフリカのモロッコの3カ国が主舞台となる。W杯創設100周年を記念して、第1回開催国ウルグアイと、アルゼンチン、パラグアイの南米3カ国でも1試合ずつ実施される。
近年、世界市場の開拓を狙って国際サッカー連盟(FIFA)が進める拡大路線の一環だ。
02年大会で日本と韓国の共同開催が実現したが、再来年の26年大会は米国、カナダ、メキシコによる初の3カ国共催だ。出場チーム数は従来の32から48に、試合数も64から104に増える。
30年大会はさらに広域の開催となる。時差もある上、南半球から季節の異なる北半球へ、赤道を越えての長距離移動を余儀なくされるチームも出てくる。
移動に伴う選手の負担は大きく、「アスリートファースト」とは到底言えまい。対戦相手との不公平感も生まれるだろう。
大勢の観客も航空機で移動する。脱炭素を目指す世界的な取り組みにも逆行しかねない。
膨大な資金を要する巨大イベントの開催を一手に引き受ける国は減ってきた。そこで、存在感を増しているのがオイルマネーで潤う産油国である。
22年のカタールに続き、34年はサウジアラビアで開かれることが決まった。2度目の中東開催だ。
課題は少なくない。W杯は通常6~7月に開かれるが、暑さが厳しいサウジではカタール大会にならい、冬の開催となりそうだ。時期が重なる各国のリーグ戦は日程変更を迫られる。
多くのスタジアムも必要になる。サウジでは会場となる15競技場のうち11カ所が新設される。建設に従事する移民の長時間労働など人権問題を懸念する声もある。
W杯は世界の人々を熱狂させてきた。だが、営利優先で選手の体調やパフォーマンスをないがしろにすれば、試合の質も低下する。
選手本位の原点に立ち返るべきだ。課題への目配りを忘れず、ファンを魅了する持続可能な大会にしなければならない。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月23日 02:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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